「今日の勝負は何すんじゃ?」
「何でもかまいませんよ」
「それじゃ、俺が決めてもええんかのぅ?」
「どうぞ」
挑戦的は笑みを浮かべる仁王。
対して、余裕のある笑顔を貼り付ける柳生。
どこか緊張感漂う二人が何をしようとしているかというと、今日の女役をどちらかするかを決める勝負内容を決めているのだ。
二人して相手を愛したいタイプだけに、両想いになっても、問題が出てる。
それで毎回、言い合いをするのもどうかなと思った二人は、毎度、勝負してどちらがどっちをするかを決定するのだ。
「じゃあのぅ、にらめっこなんかどうぜよ?」
「にらめっこ…ですか?」
「おう、それとも、勝つ自信ないんじゃかとね?」
余裕を見せて勝負内容の選択権を仁王に譲った柳生。
それを待ってましたとばかりに、仁王がまた何ともいえない勝負方法を持ち出す。
言われた内容に眉を顰める柳生に、仁王はニヤリと低俗的な笑みを浮かべる。
「ふ…そんなこといって、仁王君が情けない姿曝け出しても知りませんよ?」
「ふん、俺はこういったのは得意ぜよ」
「どうだか」
仁王も柳生も常勝立海のレギュラーだけあって、負けず嫌いだ。
その上、お互いできうる限り女役はゴメン被りたいと思っているので、恋人同士の欠片なんか少しもなく、今の二人にはお互いへのライバル心で一杯だった。
「ほんじゃ、にらめっこは文句なかと?」
「構いませんよ」
床に座り、テーブルの上に肘をつく仁王の向かいに柳生が座る。
お互い、さっきまでの作り笑いをはなりを潜めて、今はお互いに真剣な表情。
その表情で今から始めることがとてもギャップがありすぎるとは思うのだが、二人は微塵もそんなこと気にせずに真剣勝負の心積もりでいる。
「にらめっこしましょ。笑うと負けよ…」
真剣な表情そのままに、仁王が歌う。
そのギャップに何とも言えない表情をしていた柳生だったが、笑うことはせずに、そのままにらめっこは開始された。
「しぶといのぉ、柳生」
「仁王君こそ、中々頑張ってるじゃないですか」
「お前と違って、俺はちゃんと笑わそうとしとるしのぅ」
にらめっこいうんは、相手を笑わせてなんぼじゃぞ?
相手を笑わせようと色んな表情を作る仁王と、少しも表情を変えない柳生。
笑わないというのは大前提かもしれないけども、相手を笑わせるというのも勝つためには大事なことだというのに、少しもそれをしない柳生に仁王は呆れたような声を出す。
「笑わそうとしても、結局、相手がわらわなければ同じでしょう」
「そりゃそうかもしれんがのぅ」
「仁王君の百面相なんかみても笑いませんよ」
「ほぉ、言ってくれんのぉ」
そんな仁王をあざ笑うかのような柳生の言葉に、仁王の負けん気が強く刺激される。
このままですますかと意気込む仁王が、勝つために秘策を出してくる。
「柳生」
「どう…っ!?」
「ふん、どうじゃ?」
「な、何するんですか!!」
「何って、キス」
相手を呼び、少し身を乗り出して、柳生の唇に軽く触れ合わせるだけの口吻をする。
突然の仁王の行動に吃驚して、真っ赤になる。
「今日は俺の勝ちじゃな」
「何言ってんですか、こんなことして…」
「これも作戦じゃ」
「第一、これは笑ったほうが負けじゃないんですか」
「そうじゃの」
「それなら、さっきから笑っているのは仁王君のほうですから、仁王君の負けでしょう」
ヘラっと笑って、グッと握りこぶしを作ってガッツポーズをする仁王。
勿論、柳生にそれをあっさりと認める気はなく、笑ってるのは仁王のほうだから彼の負けだと抗議する。
その抗議にも仁王はただ笑うばかりで…
「何じゃ柳生、自分のことのくせに気づいちょらんのか?」
「何のことですか?」
「お前、さっきからずっと笑っとるぜよ」
「えっ/////」
「じゃから、俺の勝ちじゃ」
憤ってるくせに、口元の笑みが締まることのない柳生に、仁王が理由を教えてやる。
実は、キスされてから、自分では気付かず笑顔でいた柳生は、それを見てから笑った仁王よりも確実に先に笑っていたのだ。
教わった事実に、余計に顔を真っ赤にさせてしまう柳生。
頬に手をやって、頬の筋肉が緩んでいるのか真剣に確かめだした柳生に、仁王が今度こそ勝者の笑みを向けた。
「とっとと、諦めて俺に抱かれんしゃい、柳生」
「嫌ですよ」
「勝負事で紳士が詐欺師に勝てるわけが、ないじゃろ」
「そんなことはやってみないとわかりませんよ」
「お前のそうとこ、好きじゃけどな」
「今日は負けましたが、次は負けませんよ」
「次も鮮やかに勝ってみせちゃろうやないか」
今日の勝者の言葉に、敗者が悔しそうに反抗する。
やはり自分よりは一枚うわてな詐欺師に事実を言われても、負けず嫌いな紳士があっさりとそれを認める気にはなれずに、今日の負けを認めても強気な姿勢を崩さない。
そういう所も好きな仁王としては、そんな柳生の姿にすら楽しそうに笑って見せて、次の勝利宣言とともに、本日の賞品に口吻をした。
二人の恋の駆け引きは、まだ終わりそうにない。
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