Water pistol



たまには無邪気に、童心に返って遊ぶことも必要だとは思いませんか?
君と二人、こんな日も悪くないと思うんだ。

「やーぎゅう」
「え?…わっ!」

部活の後、二人でしている自主練も終えて水道で顔を洗う恋人の隙をついて、持ってきていた水鉄砲にこっそりと水をいれる。
顔を洗い終わって、タオルで拭いて眼鏡をかけたとこまで見てから、彼を呼び、水鉄砲をその顔目掛けて打ち込んだ。

「いきなりなにするんですか、謝りたまえ」
「水遊びじゃ」
「何が水遊びですか!人に迷惑をかけるようなことをしてはいけないと教わらなかったのですか!」
「可愛い悪戯じゃろ?」

本気で怒るそいつに、俺は笑って適当にはぐらしていく。
ついでに、まだ水は入っているから、顔だけじゃなく服にも目掛けてかけてみる。

「仁王君!」
「おお、ええ光景じゃのぅ」
「何がですか?」
「それじゃ、それ。何か卑猥じゃの」
「卑猥…?」
「胸すけちょぅぞ」
「っ!」

シャツが水に張り付いてるうえに、透けて、中が見える。
そんなことも気にならずに、俺に説教しようとしている奴に、愉しそうにそれを指差して教えてやると、あいつは真っ赤な顔で、慌てて自分の服の前に手をやった。

「なぁ、柳生」
「…何ですか?」
「たまには外ですんのもええと思わん?」
「……何を?」
「何ってそりゃあ、セ…」

セックスとまでは言わせてもらえなかった。
言う前に思いっきり口を塞がれてしまったんだから仕方ない。
真っ赤な顔で怒りか羞恥かどっちかはわからないが、ブルブルと体を震わせている柳生に、俺の悪戯心はどんどんと刺激されていって…

「っ、何をするんですか」
「何って、手を舐めただけじゃろ」
「手なんか舐めないでください」

口を塞ぐ手をペロリと舐める。
ビクリと一瞬、震えた体を見逃すほど、俺は甘くなく、文句を言ってくる柳生を適当にいなして、離れて行こうとした手を捕まえて、唇を寄せる。

「やっ…やめ…」
「いやじゃ」
「なっ…仁王君!」

手の甲に唇をくっつけて、強く痕がつくように吸い上げる。
一瞬訪れただろうチリっとした痛みに、軽く眉を顰めたのを見て、その場所にそっと舌を這わせる。
そのまま、舌を指と指の間に持っていき、一本・一本丁寧に舐めあげる。
チラリと相手を見れば、ハァと熱い息を吐き出している姿に、悪戯心は欲望を持つものへと進化を始めてる。

「柳生」
「うわぁっ」

唇を離し、手を自分のほうに向けて引っ張る。
倒れこんできた自分より少し背の高い恋人の体を抱きしめて、熱く潤んでいるであろう瞳を隠す眼鏡をはぎとって、その熱い吐息を漏らす唇を自分のそれで塞ぐ。

「ふわ…っ…ぁ…」

無理やり口を割らせて、口内に舌を忍び込ませる。
逃げようとする恋人の舌を捕まえて、絡め吸う。
息すら継げなくなるほど、濃厚に貪る。

「はっ…はぁ…」

息苦しさに、恋人の腕が俺の背中を何度も叩く。
それを合図に唇を離して、自分の胸に顔をつけて息を整えるこいつの髪を梳いて、唇を寄せた。

「柳生」
「……仁王君」
「ん、何じゃ?」
「少し、目を瞑って頂けませんか?」
「…こうか?」
「ええ、僕がいいですよというまで待ってくださいね」

そっと俺から離れて、俯いたまま恋人がか細い声を出す。
言われるままに目を瞑れば、そのまま少し彼が離れていくのがわかった。
それでもすぐに戻ってきて、ガサゴソと何かをしている音に、気になって目を開こうとしたけど、うっかりそれがばれたら間違いなく嫌われる。
そう思うと目を開くことが出来ずに、そのまま待っていると……

「もういいですよ」
「一体……ぶわぁっ……」

声をかけられ、目を開くとニッコリと怖い笑顔でホース片手に立っていた。
何を…と思う暇もなく、キュッとまわされた蛇口。
勢い良くホースから飛び出してきた水が、俺に直撃した。

「水でも被って、頭を冷やしたまえ!」
「や、柳生…うぶっ…」

謝ることも、言い訳することも許してはくれずに、俺は、恋人の怒りがとけるまで、頭から水を浴びせられ続けた。

何事も、程ほどにという言葉の思いを知った、ある夏の日。

Fin