大掃除 <年末年始に10のお題 03>



「年末に大掃除なんて、一体、何処の誰が決めたんだろうね」

思わず遠い目を呟いてしまったのは、現在、人の住めない状態の部屋の中央に佇んでいる乾。
年末なので、大掃除をと思い立った結果だ。
元々、物がというか紙やらFDやらとデーター収集の集大成が大量に散乱している所に、何かを見つけてはそれを見て、集中して気が付けば1時間経過などとが続いている。
結果、既にかなりの時間が過ぎてるというのに、まだ少しも掃除が進まずに、やる気も失せてしまっていたのだった。

「年が変わったって、何も変わらないし、このままでもいいか…」

既にかなり投げやりになっている。
それでも、掃除を止めるわけにいかないことは乾自身、誰よりも痛感していた。
綺麗好きな恋人が、来るのだ。
正月、やってきてこの部屋を見たら、そのまま方向転換して帰られるのは想像に難くない。
下手すれば、姫初めもさせてもらえずに延々と説教だ。
どれも、最悪の事態には違いないので、出来れば避けたい。

「あー、海堂。今日は来てくれないよなー」

もう、こうなると一人では片付かない。
この部屋を片付けれる存在なんて、一人しか知らないわけで…
今日は家の大掃除を手伝うと言っていたので来れるわけはないだろうが…
それに考えてみれば、その話を聞いたから自分も部屋の掃除をしようと思ったんだし……

「もう、誰でもいいから変わりにしてくれ…」
「へー誰でもいいんっすね?」
「え!?海堂!!」

半ば泣きそうになりながら、乾が呟く。
それに返ってくるはずのない返事が返ってきて、驚いた乾が振り向くと不機嫌そうに扉の前に立っている海堂がいた。

「誰でもいいなら、部長でも不二先輩でも呼んだらどうですか?」
「え?海堂がいいよ。海堂は今日は来れないだろうと思ってたから、そう言っただけで」
「うちの掃除は全部終わったっす」
「早いな…」
「あんたが遅すぎるんっす」
「ごもっともで…」

呆れたように溜息を吐かれて、乾も苦笑してしまう。
この部屋の惨状を見れば、何を言われても仕方ない。

「はぁ…チャッチャとやりますよ」
「有難う、海堂」
「別に、汚い部屋で新しい年を過ごしたくないだけっす」

コートを脱いで、ハンガーにかけた海堂が腕まくりしながら部屋の中央へとやってくる。
苦笑する乾を立ち上がらせ、部屋から避難させて、海堂は掃除を始めた。

「お疲れ様」
「っす」

それから数時間後。
ほぼ一人で乾の部屋を片付けた海堂に乾が温かいココアを持ってくる。

「流石に綺麗になったなー」
「当たり前です」
「いや、本当に海堂が来てくれてよかったよ」

乾のベッドの上に二人して並んで座って、綺麗になった部屋を眺める。

「にしても、掃除すんなら言えば来るっていったのに」
「うん。でも、今日は家の大掃除だっただろ」
「それなら、他の日に先輩がすれば」
「そうなんだけどさ、海堂にその話しを聞いたら、俺もしようかなと思い立って…」
「それであの有様ですか…」
「はは、ついね集中しちゃうんだよね」

海堂の言葉に苦笑を漏らす乾。
どうしようもないのは海堂も知っていたので、諦めたように溜息を漏らすだけで留めておいた。

「やっぱり、掃除の時は海堂がいなきゃダメだね」
「誰でもいいとか言ってたくせに」
「あれは、切羽詰ってたからだって」

どうやら、まだ根に持ってる海堂。
乾は困ったように眉を寄せる。

「今度からはすぐに海堂に連絡いれるよ」
「その前に、掃除するって決めた時点で連絡ください」
「うん」
「もっと言えば、頻繁に大掃除しなくてもいいように綺麗にしててください」
「無理」

海堂の言葉に即答する乾。

「はやすぎっす」
「と言われてもねー、絶対に無理だし」
「だからって」
「だから、海堂傍にいてよ」
「は?」
「こんな男、放っておけないだろ?」

反論する海堂に乾が答えた言葉に、海堂が一瞬固まる。
けれど、すぐに正気に戻って…

「目を離すのも危険っすからね」
「それはお互い様」
「いいじゃねーっすか」
「お似合いだしね」

二人して笑って、そっと唇を重ねる。
ダメなところと得意のところが正反対。
お互いがお互いを補える、理想的な関係。
そんな二人だから、離れようなんて思わない。

Fin