天然仕様



何故だか、部室に置かれているカレンダー
まだ、くそ暑い夏だというのに12月のカレンダーを眺める部長。
一種、異様な光景に、恐怖を感じた一般部員はそそくさと帰路につき、興味深々なレギュラー陣は手塚の様子を眺めている。

「年末は、部活も休みだな」
「手塚…、その前に俺たちは引退してると思うけど…」

年末の日付を指で辿りながら、呟く手塚に、大石の気を使ったつっこみが入る。

「夢があるんだが…」

が、既に自分の世界に入ってる手塚に大石の声が聞こえるはずもなく、視線をカレンダーから外さずに呟く。

「夢って?」

菊丸の素朴な疑問に、心の中でバカと罵った人物が一名。
これ以上、手塚の言葉を聞いたらひどい目に合わされそうと、身を持って知ってる人物に、その人物の心情に気付いて、面白そうに見物してるもの一名。

「…除夜の鐘…」
「え?」
「除夜の鐘がつきたい」

握りこぶしを作って、力説する部長に、凍りつくレギュラーたち。

「というわけで、乾」
「嫌だ」

視線をカレンダーから乾に移す手塚に、乾は最後まで聞く前に答える。

「まだ、何も言ってないんだが」
「言わなくてもいい、聞きたくもない」

その答えに不満そうな顔をする手塚に、それ以上に嫌そうな顔を乾。

「聞いてくれたって、バチはあたらないだろう」
「バチはあたらなくても、俺の苦労が増える」
「何故だ、お前と一緒に除夜の鐘をつきたいという、俺のささやかな夢のどこに、お前の苦労が増えるというんだ?」
「だから、聞きたくないと言っただろうが」
「いいじゃない乾。一緒に行ってあげたら」

手塚と乾の言い合いに、不二が割り込む。

「お前、他人事だと思って」
「だって、人のことだもん」

乾の言葉に、微笑で返す不二。

「行くときは、是非、場所教えてよ。僕も後ろからこっそり見に行くから」
「それならば、不二も一緒に来ればいい」
「何言ってるの手塚。それじゃ面白くともなんともないじゃない」
「そうか」
「おい不二、人の不幸を面白がるな。…手塚、納得するな」
「ふむ…では、レギュラー全員で除夜の鐘をつきにいく」
「「「「「「ええ〜!」」」」」」

突然の手塚の提案に、遠巻きに見学していた残りのメンバーが叫ぶ。

「…海堂が一緒なら、行ってもいいか」
「また、違う意味で面白い年越しになりそうだね。僕もいいよ」

お互い、適当なとこでばっくれようと考えてる乾と不二は、あっさりとその提案を呑む。

「大石と二人で過ごす予定にゃのに〜」
「また、俺の知らない間に決めて…」
「うち、寺っす…」
「越前と初日の出…」
「仕方ないか」
「乾先輩vv」

不平を漏らすのは、大石、菊丸コンビニ越前・桃城の四人。
間違いなく、不二に予定を入れられてる河村は諦めたように乾いた笑みをもらし、海堂は乾の言葉に頬を染めて浸っていた。

「これは、部長命令だ。今年の大晦日は全員空けておくこと」

だが、最強の部長は最恐の二人を味方につけ、高々と宣言した。


結果、どうなるかはその日が近づかなければわからないが、レギュラーたちは一応…その日の予定を空けておいたそうな…

Fin