膝枕



「…乾、重いんだがな」

朝練中、腕を組んで練習を見ていた手塚が後ろで人の背中に頭を乗せて体重をかけてくる、乾に声をかける。

「10分、遅刻だ」
「…眠いんだよ」

結局、徹夜してさ…
手塚に抱きつきながら、肩に顔をのせて目を瞑っている乾が呟く。

「それがどうした?離れないか」

練習の邪魔だ。

「手塚の肩って、頭を置くのに丁度いいんだよ」

身長差も丁度いい感じだし。
立ち寝ようの枕にはもってこい。

「勝手に、お前の枕にされても困るんだが」

口ではなんやかんやといいながら、乾を引き剥がそうとしないところが、この二人の仲の良さを物語っている。
第一、これが他の部員なら、遅刻した時点で校庭10周はかたくないうえに、こんなことをしようものなら、プラス50周は確実だろう。

「眠いのなら、保健室にいって寝て来い」

なのに、親友という立場なだけで、乾は許されてしまうのだから、羨ましい限りだと、他の部員たちは思っていた。

「でも、あっこの枕は寝心地悪いんだよ」

この枕のほうが好きなんだけどな。

「そういう問題ではないだろうが」

やれやれと溜息をついて前を見ると、物凄い勢いで走ってくる後輩の姿が飛び込んでくる。

「おい、お前専属の枕がきたぞ」
「へ?」

手塚に声をかけられ、顔をあげようとしたところで、腕を引っ張られる。

「うわっ」
「部長、俺と乾先輩、朝練サボらせて頂きます」
「…海堂?」

手塚に一礼して、海堂が乾を連れてコートを出る。
出ていった二人が向かった先は、保健室。

「人に迷惑かけんなって言ってんだろ」

保健室のベッドにおいてある、ペッチャンコの枕を隣のベッドに放り投げて、枕のあったところに海堂が座る。

「ラッキー」

それの意図するとこがわかった乾がそそくさとベッドに寝転がり、海堂の膝に顔を埋める。

「やっぱ、海堂の膝が一番気持ちいい」
「当たり前だっての」

乾の髪に指を絡ませながら、ムスっとした声で呟く。

「わかってんなら、最初から俺んとこ来いよな」

Fin