「じゃんけん……」
菊丸の元気な声が響き渡る。
ここは、いつものコートでも、学校でもなく遊園地。
いるのは、お馴染みの面子のレギュラー+1
「うわっ…」
「げっ…」
じゃんけんの結果、響き渡るのは不満そうな声がほとんどで、歓喜の声は若干2名のみだった。
一体、何故じゃんけんをしてるかと言うと、遊園地の中でも恋人と来たら最後のメインイベント扱いされがちな観覧車に乗る組み合わせを決めていたからだ。
メンバ-は9人。
カップル(微妙なのもいれて)4組+1なために、カップルで乗ることも出来ずに、こうして3人1組で乗ることに決まり、公平を期すためにじゃんけんで組み合わせを決めることになった。
「先輩…俺、俺…」
「仕方ないよ」
「タカさん…」
「不二、我慢して」
「やったね、大石」
「……イタタタタ…」
「マムシがいるのは不満だが、越前と一緒だなんてついてるじゃねーか」
「ついてない」
結果は、こう。
まず、一番最初に乗る組に、菊丸・大石・河村。
次に、桃城・越前・海堂
そして、最後に乾・手塚・不二
になっていた。
「にゃ、じゃあ行ってくるにゃ」
「イタタタタタ……」
「タカさん、死なないでね」
「俺、何とか頑張って見るよ」
「河村先輩って、高所恐怖症とかっすか?」
「ああ、違うよ。面子がね…」
「お前たちの番だぞ」
最初に菊丸たちが乗り込んで、順番に全員、乗り込んでいく。
「大石、大丈夫かな?」
「既に青ざめていたからな」
最後に観覧車に乗り込んだ、乾たち。
ゆったりと観覧車の椅子に座って、これから起ることに溜息を吐く。
「そろそろだな」
「そうだね」
「ああ」
乗り込んでからしばらくして、丁度、4分の1ほどに指しかかったとこで、3人は上を見上げる。
その上では…
-菊丸・大石・河村組-
「うわっー、すげー。見てみて、大石ー。ほら、タカさんもー」
「あ、ああ、わかったから英二」
「動いたら危ないよ」
「平気だって、俺、いっつも観覧車にのったら動いてるもん」
その言葉のまま、あっちこっちの景色を見るために動き回る菊丸。
その度に、あっちにこっちにとガクン・ガクンと激しく揺れる観覧車に、大石と河村は気が気じゃない。
何とか、菊丸を止めようと頑張る、大石と河村だが、気にせずに動き回る菊丸と、なるべく揺れないように気を使いながら止めようとする大石・河村では、どうあっても止めるのは不可能と言うもので…
「胃、胃が…」
「大石、後少しで回り終わるから」
どんどんと胃痛がひどくなる大石に、河村が一生懸命に背中を擦りながら早く降りれることを祈っていた。
戻って……
-乾・不二・手塚組-
「何だか、前よりパワーアップしてないか?」
「うーん、これは大石のために救急車呼んでおいたほうがいいかな?」
「菊丸、外周20周だ」
と、完全に他人事のせいか、のんびりと話していた。
「ん?ねぇ、乾・手塚…」
「ああ、あそこもか…」
「あっちは、大方、桃城だな」
不二の言葉に、視線をすぐ上の観覧車に向ける2人。
その視線の先では……
-桃城・越前・海堂組-
「やっぱさー、ただ乗ってるだけなんて、つまんねーよな、つまんねーよ」
「ふざけんな」
「桃先輩、いい加減にしてください」
一箇所にジッとしているような我慢が桃城にあるはずなく、狭い観覧車の中を縦横無尽に動き回り、挙句、飛び跳ねる桃城に、既にブチ切れモードの越前と海堂。
「こうやってさ、揺らしたほうがスリルがあって面白いとおわねーか?」
「思うわけねーだろ」
「思わないっす」
その2人かた出される不穏な空気に気付くことなく、ピョンピョンと飛び跳ねる桃城。
「後さー、こうやって揺らすんだよなー」
そう言って、観覧車の両端に手をついてガンガンと揺らし始めた瞬間
「死ね!!」
「死んで下さい!!」
海堂のスネイクと越前のツイストサーブが…勿論、手をラケット代わりに見立ててである…が綺麗に桃城に決まった。
「最悪だ」
「本当っすよね」
床に撃沈する桃城を放って、向かい合わせに座る越前と海堂。
「「乾先輩と一緒がよかった…」」
深い溜息とともに、綺麗に被る台詞。
「てめぇ…」
「俺は思ったことを言ったまでです」
そして、海堂と越前は黙ったまま睨みあう、冷戦へと突入していった。
さて、その原因はと……
-乾・不二・手塚組-
「静かになったね」
「ああ、完全に止まったな」
「今度は葬儀屋を手配すべきかな?」
「桃城、外周15周だ」
突然、ピタリと止まってから、全く静かになってしまった上の観覧車に、何が起ったのか完全に把握した三人は、やはり他人事なのでまったりとした会話を楽しんでいた。
そして、観覧車は無事、回り終わり……
「俺、取り合えず、大石を救護所に連れて行くよ」
「河村先輩、そこの粗大ゴミもお願いします」
「なんなら、そこらのゴミ箱でもいいっす」
「も、桃城…」
河村は真っ青になってしまった大石を救護室に連れて行こうとした所を、越前と海堂に止められて、大石以上にヤバそうな状態の地面に適当に転がされてしまっている、桃城を見て、慌てて2人を担いで救護所に走る。
「河村先輩、力持ちっすねー」
「む、乾先輩だって、俺を軽々と抱き上げる位に力がある」
「海堂、こっそりと妙な惚気をしなくていいよ」
河村を見送りながら、感心する越前に、何故か変な対抗意識を持っていらんことを言ってしまう海堂に、笑顔で突っ込む不二。
「不二っー。今度は一緒に乗ろうね、面白かったー」
「英二、僕は遠慮しておくよ」
「何でだよー。じゃあ、乾ー」
「遠慮する」
「手塚ー」
「いらん」
そして、一人だけ元気にはしゃぐ菊丸に、次々と一刀両断とばかりに切り捨てていく、不二・乾・手塚の三人。
「観覧車は、乗る相手を確実に選ばないとな」
この日、遊園地に遊びに来ていた菊丸以外の8人がそう心に誓っていた。
観覧車に乗る時は、相手を選びましょう。
下手したら、人生に係わるトラウマが出来ちゃうかもしれないからね。
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