注:この話では、越前と海堂・桃城の三人は同級生で、
くされ縁というやつです。
不二と乾・手塚の三人は、幼馴染兼親友です。
4月
真新しい制服に身を包んだ少年・少女が校内に溢れる日。
校庭の片隅にある桜の大木の下に佇む、三人の少年。
「折角の春休みなのにな」
「同感、僕達には関係ない日だったのに…」
「本来なら、出る必要なかったんだけど」
「煩い」
不満げな顔で、タラタラと文句を並べ立てる二人に、眉間に皺を寄せ切り捨てる一人。
既に最上級生並を風格を持つ彼らは、新2年生になったばかりの、青学三強と謳われる者たち。
「大体、こういう行事って、最上級生の仕事じゃないの?」
「最上級生じゃなくても、普通は役職組のみの出席だろ?」
「委員長に指名されてるのを、無理やり変えたお前たちに言われたくない」
不平を漏らすのは、長身に印象的な眼鏡をかけた乾と亜麻色の髪に絶やさぬ微笑を称えた不二。
その二人に、一人で対抗できる者など一人しかいない。
そう青学最強と謳われる、手塚だ。
青学に入学してから、一年のうちに、既に名物…もとい、有名になった三人の姿を、見つめているものたちがいた。
「ったく、ツイてねぇな、ツイてねぇよ」
「てめぇのせいだろうが」
「愚痴ってないで、足動かしたら」
校庭の道を闇雲に歩く、三組の足。
真新しい制服に身を包んだ彼らは、校庭を適当に歩きながら、不機嫌な様子でしゃべっている。
どうやら、入学式早々に迷子になったらしい。
「んだよ、海堂も越前も、すぐに俺のせいにしてよ」
「お前のせいだろうが」
「桃こそ、立場が悪くなったら逃げるの止めて欲しいね」
話しから察するに、この髪を立てた桃と呼ばれた少年が、道に迷った原因らしく、後の海堂と呼ばれた、きつい眼差しの少年と、越前と呼ばれた生意気そうな少年が巻き込まれたということみたいだ。
「はいはい、どうせ全部俺が悪いんですよ〜だ」
二人から、責められた桃城は、不貞腐れ気味に開き直るが、後の二人は桃城を睨みつけるのみで、無視を決め込む。
「…俺が悪かったよ。だから、そんなに怒る必要ねぇだろ」
「このままじゃ、入学式に間に合わねぇだろうが」
「これじゃ、恥の上塗りもいいとこだね」
二人の怒りがピークに来てることを察した桃城が、流石にまずいと思って謝るが、既に二人の機嫌は落ちるとこまで落ちてるらしく、冷たい言葉が返ってくるだけだった。
「誰か見つけて聞きゃいいだけだろう…っと、丁度いいところに…」
「桜…?」
「こんなとこあったんだ…」
林みたいに木々の生い茂る場所を無理やり通過して、視界のひらけた場所に出た三人は、目の前の大木…よりは、その下に佇む三人の先輩に目を奪われた。
「「「……」」」
桜の下に佇む先輩たちのもつ威圧感に、舞う花弁との見事な調和。
壮観な景色に、声もなく見蕩れる三人の少年たちを現実に引き戻したのは、優しそうな先輩の声。
「君達、新入生だろ?」
「え?」
現実に引き戻されて、驚いたように後ろに振り向く三人。
そこには、まだ今ほど個性的ではない髪型の大石がいた。
「もしかして、迷子?」
自分のいる場所と、毎年数人はなるらしい噂から、そう判断した大石が尋ねる。
「っす」
それに答えたのは、桃城で…こういうときは、一番、人当たりのよい桃城が答える。
「毎年、いるらしいんだよね…。で、講堂だけど…」
「有難うございました」
「…った」
「した」
丁寧に場所を教えた大石に、三人は礼を言ってその場を離れた。
そこに
「あっ、いたいた。手塚、不二、乾」
と、先ほどの大石の声が聞こえ、三人は歩く足を止め振り返る。
「大石、どうしたの?」
「先生が呼んでる」
「どうせ、在校生代表のことだろ」
「生徒会長がするのが筋だと、答えたが?」
「面倒なことは遠慮したいよね」
「丁重に辞退させてもらうよ」
「そういうことだ大石」
「俺に言われても…先生たちに言ってくれよ」
「…仕方ない」
「行こうか」
「行くぞ」
仕方なさそうにそこから離れていく四人を、三人は最後まで見つめていた。
「……」
「…俺たちもいくか」
「…ん」
誰もいなくなって、やっとで三人も動き始めた。
「それにしてもさ、凄かったよな」
講堂に向う道すがら、話す桃城に海堂と越前は頷く。
三人とも、視線はどこか遠くに向っている。
「なんてーの、あの威圧感っていうのがさ…表情も厳しそうだったしよ…」
「…デカい。すっげ、読めない顔してたし…」
「綺麗な髪してた…ずっと笑ってたし…」
「「「えっ?」」」
それぞれ呟いて、顔を見合わせる。
「お前ら…」
「一体、誰のこと言ってんだ?」
「誰、見てたわけ?」
三人揃って考え込む…
まさか
「皆、揃って」
「見てたのは、違う奴か」
「見事だね」
桃城が惹かれたのは手塚。海堂は乾。越前は不二と、三人の視線の先には違う人物が映っていたらしい。
「ま、そっちのほうがいいじゃん」
越前が、生意気そうな笑みを向ける。
「まあ、な…」
海堂も、どことなく嬉しそうに呟く。
「ライバルじゃないってことか」
桃城も楽しそうに笑う。
「協力し合うってことで」
「共犯者ってのが合うんじゃねぇか?」
「どっちにしろ、やることは一つだ」
絶対に振り向かせてやる!!
桜の下で見つけた、偶然の奇跡。
幸運の運命を、その手につかみ取るために、少年たちは手を取り合った。
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