Fortune〜偶然の奇跡〜 U



新入生が入り、活気づいてきた4月。
本日、ここ青学では部活紹介が行われる。
勿論、それはテニス部でも同じなわけで…

「…というわけで、手塚・不二」
「お断りします」

昼休みの部室。
部長に呼ばれた手塚と不二。
二人に連行された乾と、面白がってついてきた菊丸。
その菊丸に連行された、大石・河村の7人がいた。
強豪と言われる青学のテニス部なので、そこまでしなくても部員は入ってくるので、わざわざそこまで部活紹介に頑張る必要性はないのだが、何と言っても粒ぞろいのテニス部だけに、部長に元に異常な期待が持ち込まれていた。
そのため、部長は痛む頭と胃を押さえながら、不二と手塚を呼び出して、頼みごとをしようとしたら、この様だったというわけだ。
間髪入れずに断られた部長は、わかってたけどと呟きながら深い溜息を吐く。
ハナから期待してなかった分、平気なんだが、まわりからの重圧が圧し掛かってくると思うと、今から気が重い。
そんな部長を哀れに想ったのか、

「え〜、面白そうじゃん」

…単に、楽しそうだと判断した菊丸が不二と手塚の説得に走る。

「なら、英二がしたらいいじゃないか」
「やっていんなら、俺も出るにゃ」
「だそうですが、部長?」
「不二と手塚が出るなら、後は誰が出てもいいぞ」
「じゃあさ、じゃあさ、俺たち2年全員で出ような」
「「「えっ」」」

部長の言葉に、飛び跳ねながらしゃべる菊丸に、見物していた乾・大石・河村の三人が声をあげる。

「冗談じゃない」
「俺たちが出ても仕方ないよ」
「誰も俺たちなんか、見たくないよ」

口々に、出ることを嫌がる三人。

「そんなことないよ、皆で出たほうが楽しいって」
「…乾も出るなら、出てもいいが…」
「恥は皆でかかないとね」

自分らだけ出てたまるかと想ってる不二に、本気で楽しんでいる菊丸。
少しズレてる手塚の言いように

「乾・大石・河村、部長命令だ出ろ」

全てが上手くいくために、そう滅多に使わない部長命令が三人に降りかかった。


本番

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」

不二の微笑と優しい物言いから始まった、男子テニス部の紹介。
新入生のみならず、ほとんどの在校生がコレを見るためにだけ集まってきて、講堂は黄色い悲鳴に溢れていた。

「我が男子テニス部は…」

乾が考えた台詞を、手塚がほぼ棒読みの状態で話す。

「ま、ゴタクはどうあれ、テニス好きの少年は集まるにゃ」

ウケを狙う目的も含めて、軽い口調で菊丸が締めくくって、紹介は終わるはずだった。
テニス部でチョコを貰った数が多かった三人を表に出させた策は成功を収め、企画をした乾は、観客の反応にご満悦だった。
だから、気がつかなかった。悪魔の微笑みに…

「今回は、特別に滅多に見れないものを大サービスで見せてあげるから、皆、来てねvv」
「「「「ええっ?」」」」
「不二!!」
「キャー」

台本にない言葉に、驚く舞台に立つ5人に、片手で顔を覆いながら怒る乾。
そして、不二がしたことによって、倍に増した黄色い声。
その理由とは、不二が乾の眼鏡を奪ったからだ。
厚く、瞳を隠していた眼鏡がなくなった顔は、端正な素顔。
余り知られてない、乾の素顔に先輩・同級生・後輩…男女問わずで色々な種類の悲鳴があがった。
中でも、

「わ〜、海堂」
「薫、しっかり」

と、誰かが倒れた声が印象的だったらしい。

「凄いね、乾」
「誰か倒れたみたいにゃ」
「いいから、返せ」
「どう収集をつけるんだ」
「…だから、嫌だったんだ…」
「…騒がしい」

壇上からの低い声に、シンとなる講堂。

「以上をもって、男子テニス部の紹介は終了する」

唯一響くのは、手塚の威圧感のある声。

「以上、解散」

そうして、長い午後は終わりをつげた。

Fin