「何で、こんなのに出なきゃなんないの?」
講堂の隅のほう、不満を並べるのは越前。
「面倒くせぇ」
フシューと個性的な溜息を吐くのは、その横に座る海堂。
「仕方ねぇだろ、学校行事なんだから」
そんな二人を呆れたように見る、桃城。
既に、入る部が決まってる三人とって、この部活動紹介は面倒なことこの上ないものだった。
「こんなとこで、くだらないもん見てる暇あったら、テニスしてるほうがマシ」
「同感」
「でもよ、もしかしたら、あの人たちに会えるかもしんねぇだろ」
「あの人たちね、何部かな?」
「文化部だろ?」
「それは、薫の人の場合でしょ」
「あ〜、あの人、見るからに文化部っぽそうだよな」
「お前らの人だって、運動部にはみえねぇだろが」
「ま、確かにな」
「桃のなんて、生徒会役員とかしてそう」
「越前の人だと、帰宅じゃねぇのか?」
「名前しか知らねぇんだよな、俺たち」
「ただし、名前と顔は一致しないけどね」
「三人の誰かが、不二・乾・手塚ってだけだからな」
「静かに、今から部活動紹介を行う」
壇上からの教師の声に、講堂内は静まりかえる。
三人も話すのをやめて、壇上に視線を向ける。
まずは文化部から始まる、紹介。
時間がたつにつれ、飽きてきたのか、ポツポツと声が聞こえ始める。
「まだ、終わんないの?」
この三人もそのくちで、面倒そうに小さな声で話し始める。
「そろそろだろ」
「男テニまだか?」
「次だ、次」
女テニの紹介が終わって、ザワリと色めきたつ講堂。
「手塚君、出るんでしょ?」
「不二君もだって」
「乾君や、菊丸君も出るらしいよ」
ボソボソと聞こえてきた声に、三人は顔を見合わせる。
「手塚って?」
「不二ってさ…」
「乾って言わなかったか?」
唯一覚えた三つの苗字。
まさかと思い、三人が壇上に目を向ける。
「次は、男子テニス部です」
聞こえてきた、放送と、黄色い声。
その中を、悠々と出てきた6人(若干、はしゃいでたもの1名に、緊張して固まってるもの2名いるが)。
「あっ」
「あれって…」
「マジかよ」
忘れられない人たちが壇上に出て、三人は呆然と壇上を見る。
「「「テニス部だったんだ…」」」
ようやく呟かれた言葉は、綺麗にハモられ、三人はまたもや顔を見合わせる。
「これって、ラッキー?」
「グッと、近づけるチャンスじゃねぇか」
「ぜってー、落とす」
「俄然、やる気になったね」
「お、しゃべり始めたぜ」
「集中しろ」
テニス部の紹介が始まって、三人は前を向く。
「不二君ってば、いつ見ても綺麗よね」
「笑顔が素敵」
「そっか、あの人が不二って言うんだ」
最初に話し始めた亜麻色の髪の少年のことを、はやし立てる周りに聞き耳を立てて、越前はちゃっかりと彼の名前を入手していた。
「手塚君がしゃべってるよ」
「嘘。絶対に彼は出てくるだけだと思ってた」
「手塚さんね、覚えとこっと」
次に説明を始めた、少年のことを話し始めた周りの声に、桃城がチェックを入れていた。
「…じゃあ、あの人が乾か」
その全部を聞いて、消去法で名前がわかった海堂。
名前と顔が一致できた三人は満足顔。
「来てよかった」
「楽しくなりそうだぜ」
「……!!」
菊丸の声に、そろそろ終わりだと思い、話そうと横を向いた桃城と越前。
「今回は、特別に…」
二人の耳に、不二の声が入る。
途端にあがる、黄色い悲鳴。
「わ〜、海堂」
「薫、しっかり」
二人の間に座ってたため、海堂だけは正面を向いたままだったために、しっかり見てしまったもの。
「反則だ…、あんな顔…」
むちゃ、好みじゃねぇか…
ポツリと聞こえた呟きとともに、フラッと倒れた海堂を二人は支えながら、
「反則?」
「顔?」
と、疑問に思って、壇上を振り返る。
まだまだ、興奮冷めやらぬ講堂内。
壇上には、呆気に取られた4人に、面白そうに微笑む不二と、眼鏡を奪われ素顔を曝す乾。
「へぇ、結構男前じゃん」
「好みだったってわけか」
それを見て、海堂が倒れた訳を察した二人。
手塚の声で、静かになり、終了した部活紹介。
二人は、仕方なく海堂を保健室に運んだ。
熱気にやられたと、適当に理由を誤魔化して。
「スマン」
ようやく、元に戻った海堂が二人を見て、あやまる。
ここは、海堂の自室。
ある程度、歩けるまで回復したのを見計らって、二人は海堂を家に連れて帰った。
「いいけどよ」
「眼鏡つけてて、一目ぼれした相手が、眼鏡とったらモロ好みじゃ、倒れるのもわかるし」
「……」
越前の言葉は図星で、海堂は赤くなったまま黙りこくる。
「仕方ねぇだろ…」
「?」
「まさか、あんなに格好いいなんて…」
「まあ、あれは確かに反則だな」
「それも、あんなに俺の好きな顔…」
「でもさ、不二先輩のが綺麗だよ」
「それを言うなら、手塚さんだっていい男じゃねぇか」
「乾先輩のほうが、いいに決まってるだろ」
「何だって?」
「何だと?」
「何だ?」
「やるの?」
「やんのか?」
「やってやろうじゃねぇか」
そして、三人はまだ顔と名前しか知らない一目ぼれの相手のノロケ大会を繰り広げたのだった。
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