ピクミン



○月×日

ベランダに初めてみる花の芽が出ていた。
興味深いので、データーに取ってみることにした。
沢山、ガーデニング用の土に芽が出ていたので、色々とじっくりと観察してみる。
よくよく調べれば、種類は3種類あることがわかった。
とりあえずは、水だな。

○月□日

毎日、こまめに手入れをして育てていれば、蕾がついた。
もうすぐ、花が咲くだろう。
どんな花が咲くのか楽しみだ。

○月○日

頑張って育てた甲斐があったのか、とうとう綺麗な花を咲かせた。
そこら辺に咲いてるような、そうでもないような花だった。
これはもう少しじっくりと研究したい。
そう思って1本抜いてみれば

「カオルン」
「!?」

声がしたと思ったら、引っこ抜いた花の下には…

「人間?」

人間の姿をしたミニマムだった。
ためしに、他のもあるだけ抜いてみることにしてみれば、全部が「カオルン」とミニマムが花についていた。
まだまだ、研究の余地はありそうだ。

○月◇日

謎の生物?植物?どちらでもいいが、折角なのでカオルンという名前をつけてみた。
カオルンたちは簡単に3つのタイプに別れるらしい。
赤色のカオルン、通称赤カオルンは一番攻撃的らしく、よく他のカオルンに攻撃をしかけている。
火に強いらしく、コンロの傍でも平気で通っていく。
青色のカオルン、通称青カオルンは水が好きなのか、よく一緒に風呂に入ろうとする。
後、他のカオルンに喧嘩を売られると、どっかからホースを出してきて水をかけて応戦している。
それ以外では、一番大人しいかもしれない。
最後に黄色のカオルン、黄カオルンはキレると爆弾を投げつける。
マンションを追い出されかねないので、それだけは勘弁して欲しいところだ。
後は、一番ジャンプ力があるもんだから、たまにジャンピングボムを人の頭に打ち付けてくれる。
特に俺がデーター整理に夢中になってるときは、確実に爆弾が頭に投げつけられる。
俺の命が持つのかが心配になってきた。
こうしてみると、やはり個々の性質というのがあるのがわかるな。

○月■日

あれから色々な発見があった。
例えば、彼らは結構従順で、俺のためによく働いてくれている。
最初は何も出来ないカオルンたちは、常に俺の後をついてまわり、俺が何かを始めると「自分にも出来るものはないか」と訴えるような視線を投げかけてきた。
ためしに、やりかたを教え、させてみるとおぼつかないながらも完璧にやってのけた。
面白いので、他にも色々と教えて見ると、気がつけばすっかり細かなことはカオルンたちがやってくれるようになっていた。
便利な生物だ

○月◆日

カオルンたちは今日も頑張って、俺のために働いてくれている。
皆で力を合わせて、皿を運び、掃除機をかけ、洗濯物をたたみと、それぞれ得意分野にわかれてというところなのだろうが、黄カオルン、俺を起すのに爆弾を投げるのは出来れば止めて欲しい。
だが、確実に起きれるので言うに言えないところだった。
さて、はて、ここ最近、不可解なことが起きている。
朝、起きてみると部屋のあちこちが水に濡れていたり、壁が焦げていたりする。
その上、どうも頬とか腹とか胸の辺りが何かで突付かれた後のように痛い。
一体、寝てる間に何が起きているんだ?

○月◎日

毎日、朝起きると部屋が凄いことになっているので、寝たふりをして様子を見てみることにした。
だが、それでも眠ってしまった後に起こるので、とうとう自分の部屋に隠しカメラを設置してみた。
今からそれを見ようと思う。


「………!?」

今、目の前のテレビの中ではベッドで眠る俺の周りを取り囲むカオルンたち。
カオルンたちは俺を取り囲んで、各自、赤はラケットを持って、黄色はテニスボール……に見立てた爆弾だ。
そして、青は……ホース。好きだな、水……

「カオルン」

俺の周りで、ちょろまかと動きながら仕事をしてるカオルンたちを呼び止めてみる。
テレビでは、激しい戦闘が寝てる俺を挟んで繰り広げられていた。

「フシュー」
『何っすか?』

カオルンたちとは長い付き合いのおかげで、話せないカオルンたちの唯一の台詞……ん?気体の発生音というのが正しいのか?……を読解できるようになっていた。
カオルンたちはその「フシュー」という、気体を吐く時の音で会話をするらしく、今ではその微かな違いを全て理解でき、何と言ったのかわかるまでコミニュケーションをとれるようになったのだ。

「毎晩、何をしているんだ?」
「フシュフシュ!!」
『真剣勝負っす!!』

カオルンたちがいっせいに、握りこぶしで熱く語る姿は壮観だ。

「何の勝負だい?」
「フシュウ〜」
『食べられるっす』
「食べられる?何にだ?」

何を奇妙なことを?
食べられたいだなんて、そんなにカオルンたちは早く死にたいのだろうか?
少なくとも、俺は今まで嫌われてはないと思っていた。
かなり懐かれていると思っていたのに、本当は嫌われていて、早くこんな運命から解放されたいと願っていたのだろうか?

「フシっ」
『あなたに』
「あなたに、って?俺?」
「ッシュ」
『っす』

…………?

「俺がカオルンを食べるの?」
「ッシュ」
『っす』

呆気にとられる俺の目の前、ズラリと並んだカオルンたちはほんのりと頬を赤く染めて、少し俯き加減で俺を見上げている。

「食べる?」

カオルンの状態と食べるという言葉。
見事にアンバランスのようで、とてもバランスのとれているような………

「ま、まさか……!?」

カオルンたちに視線を送れば、全員サッと視線を逸らす。
それでもチラ、チラと期待したような目で俺を盗み見する、その姿は……

「食べられるって、アッチの意味か!!」

ようやくそのことに思い至った俺。
見れば、カオルンたちはじっと俺を見詰めていた。

「フシ、フシュ〜?」
『誰にするっすか?』

……誰って、確かに大まかな個性はあれども、俺にしてみれば皆、同じカオルンで……
その前に、こんなミニマムをそういう意味で食えと言われましても……

「皆、俺には大事なカオルンだから、選べないよ」

適当に場を濁そうと思ったのだが……

「フシ〜」
『仕方ねぇ』
「フシュ、フシフシフシュー」
『やはり、戦う運命なんだな』
「フシッ、シュッシュ」
『手加減はしねぇぞ』

片手にラケット・ボール爆弾・ホースを持ったカオルンたちは、どうしても誰か一人だけが俺に食われるために戦闘を始めてしまった。


いつか、決着がついたら、俺は本当にカオルンたちを食べなくてはならないのだろうか?
この子達と、自分の平和のために、俺は遺伝子学の勉強をして、カオルンの遺伝子から自分そっくりのカオルン…ハルルンを作り出そうと思った。
それまで、この家も自分も無事だといいな。
そう神様にでも祈らずにはいられなかった。

Fin