hibernation  -Spring country-



あるところに、子供の頃にウサギに助けられてからウサギは食べない狼さんと、そんな狼さんに助けられてから狼さんと一緒に暮らすウサギがおりました。
ウサギさんは狼さんが大好きで、いつも狼さんの後をピョンピョンとついて歩きます。
ほら今日も…

「カオル、冬籠りの準備だから、家で大人しくしてなさい」

今日のサダハルの仕事(?)は冬篭りの準備。
春までの間、二人が生活できる分だけの食料に、暖炉にくべる薪の用意と、ここ最近のサダハルは忙しい。
そのせいで、最近のカオルは家からは出させてもらえないし、サダハルは構ってくれないから、拗ね気味だったのです。
サダハルからすれば、カオルが可愛くて仕方がないので、カオルを危険な目に合わせたくないだけなのです。
だから、今日もサダハルはカオルに家に戻るように言います。

「やだ、一緒にいたい」

けれど、カオルはずっとサダハルが構ってくれなくて寂しくて仕方がなかったので、こえ以上、一人で留守番するのは我慢できませんでした。

「俺、邪魔しないから。ちゃんとサダハルの手伝いするから、一緒にいさせて」

ギュウっとサダハルの腕に抱きついてカオルがお願いします。

「仕方ないな。その代り、離れちゃダメだよ」
「うん」

カオルの可愛いおねだりに、サダハルはついてくることを許してあげました。
こうして、二匹は仲良く冬籠りの準備をしました。


「じゃあね」
「また、春に」
「元気でね」

冬になり、森の動物たちは家に冬籠りに入りました。
それは、カオルとサダハルも変わりません。
暖かい家の中で、二人は仲良く、春までの日々を過ごします。

「春までは二人だね、寂しい?」

窓から外の雪を眺めるカオルにサダハルが声をかけます。

「ううん、サダハルがいるから寂しくない」

カオルはサダハルの隣にきて笑います。

「雪が綺麗だから、見てただけだよ」

ギュッとサダハルに抱きついて、擦り寄ります。

「サダハルに逢ってからは、いつも寂しくない」
「俺も、カオルと逢ってからは幸せだよ」

サダハルもカオルを抱き寄せて、同じように微笑みます。

「俺ね、冬が一番好き」
「どうして?」
「だって、サダハルがずっと傍にいてくれるから」

他の季節、サダハルは他の人とお話したり、色々と困った人を助けてあげに行っちゃいます。
サダハルのしてることはとてもいいことで、だからカオルは表立って文句を言うこともできませんが、自分以外の人(?)とサダハルが一緒にいるのを見るのが嫌なカオルでした。
まあ、ようするにやきもちを妬いてるだけなんですが。

「冬の間だけは、サダハルは俺だけのサダハルでいてくれるから」

だからカオルはサダハルを独り占めできる、冬が一番好きでした。

「大丈夫だよ、カオル。確かに、外にいるときは困った人は助けるけど、俺はカオルだけのものだよ」

サダハルは優しくカオルの頭を撫でます。

「俺はずっとカオルと一緒にいるよ」

カオルの頬を舐めながら、サダハルが言います。

「うん、一緒にいてね」

カオルも、お礼とばかりにサダハルの頬を舐めてあげました。
その時、カオルが小刻みに震えているのにサダハルは気付きました。

「寒くない?」
「ちょっと」

小さく、白い体をプルプルと震わせるカオルをサダハルはさっきよりも近くに来るように抱き寄せます。

「これで暖かい」

毛布を二匹の上からかけて、サダハルはカオルを寒さから守りました。

「うん、暖かい」

カオルはサダハルの胸に顔を埋めて幸せそうに呟きます。

「春まで、こうやって過ごそうか」
「うん」

サダハルの言葉に、カオルは嬉しそうに頷きます。
自分たちだけで過ごせる、冬の間だけでいいから……

「ずっと、こうしていて」
「うん、ずっとこうしていよう」

お互いに抱き締める腕の力を強めて、ギュウッとぬくもりを離さないように抱き締めあいました。


そんなサダハルとカオルは、冬でも春のように暖かな時を過ごしました。


春はもうすぐソコに。
二匹に逢えるのは、もう少し先のこと。

Fin