ここ東雲寮は部外者立ち入り禁止というほど厳しくはないため、クラスメイトのみならず他校の生徒が遊びにきたりすることもしばしあった。
その最たる存在が、彼…
「おっちゃん、久しぶり」
元気に東雲寮にやってきた少年が寮監に挨拶をする。
「ハル、おるやろ。邪魔すんな」
慣れた足取りでさっさと寮に入っていこうとしたが、
「貴様、何故ここにいる」
外出するつもりだったらしい手塚とはちあわせ。
「ハルに逢いにきたに決まってるやろ」
勿論、泊まりでな。
「部外者は出入り禁止だ。出て行ってもらおう」
「そんな規則、知らんな」
実際、今まで彼は何度もこの寮に泊まりにきていた。
「今、俺が作った」
「ふざけんな。貴様の作ったものなんかに従えるか」
「なら、力づくでも従ってもらおう」
「おう、望むところや」
バチバチと火花を散らす二人に、そこにいた誰かが
「早く乾を呼んでこい!!」
と、飛び火されないように逃げながら叫んでいた。
その頃、303
「晴れ時々曇り、所によりブリザードかな?」
「は?」
ノックの音に、海堂がドアをあけると、ニッコリと笑いながら不二が言い出す。
「忍足君と手塚が、雷撒き散らしってるって、乾」
クスクスと楽しそうにソファに寝転がっている乾に声をかける不二。
対して、乾は疲れてように溜息をつく。
「またか」
やれやれと立ち上がって、部屋を出ようとする。
「どこ行くんすか?」
「玄関。そうだな、海堂もおいで、紹介しとくよ」
「??」
手招きされて、訳がわからないまま、海堂は乾と一緒に下に降りていった。
「ほんまにいい度胸やな、手塚」
「忍足、貴様とはきっちりと決着をつけなければいけないようだな」
「侑、手塚、周りの迷惑だから止めろって」
「ハルvv」
「乾」
乾の声にピタッと喧嘩するのをやめて、乾のほうを向く二人。
「相変わらず、別嬪さんやな」
「お前、メガネの度変えたほうがいいぞ、絶対」
忍足の言葉に乾があきれたように口を開く。
「先輩は、別嬪というより、格好いいっす」
乾の横でそれを聞いてた海堂がポツリと呟く。
「そうか?海堂に言われると嬉しいな」
おせじでもね。
「おせじだなんて、俺は思ったことを言ったまでで」
「おい、お前ら、俺を無視すなや」
二人の世界を築き初めている乾と海堂の間に割って入る。
「ハル誰やこいつ?」
「誰って、海堂。今の俺の同室の相手」
可愛いだろと自慢げに話す乾に、
ぬかった、こんなとこに思わぬ伏兵がおるなんて。
手塚だけやなかったんやな、ここは。
くぅっと悔しそうな忍足がいた。
「で、海堂。こっちが忍足 侑士。幼稚園からの親友で、今は氷帝にいってる」
「…ハジメマシテ」
乾の説明を受けて、海堂が礼儀正しく挨拶をする。
なんや、いい子やないか…
手塚と違って奥ゆかしいし、礼儀ただしいし。
「よろしくな」
俺のハルが気にいっとる子やねんから、いい子に決まっとるわな。
「おい、貴様。今、何か不埒なことを考えなかったか?」
「なんや手塚。勝手に人の思考読みくさるな」
「読まなくても、貴様の問題ある脳の中などお見通しだ」
「そんなこと、お前に言われたない。お前のほうが腐った脳みそしとるやんけ」
「何だと」
「何や、やるのか?」
「いい度胸だな、貴様」
「お前こそ、とっとと謝れば許さんでもないで」
「そんな必要などない」
「そんなこと言ってられるのも今のうちやで」
「…戻ろうか、海堂」
「えっ?でも、いいんですか?ほっといて」
「玄関を立ち入り禁止にしたら、周りに害はないだろう」
俺は疲れた。
「大丈夫っすか?」
「うん、海堂が膝枕してくれたら大丈夫」
「俺でよければ」
険悪な二人を残して、甘甘の二人は部屋に帰っていった。
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