Virtual Family 1



まずは、裏設定…乾ママと海堂ママは学生時代からの親友で、二人でサークル活動なんかしちゃってる、いわゆる同人お姉さん。乾さんとそれぞれの旦那さんはその事実を知っています。乾パパの職業は遺伝子工学専門の博士という設定になっています。
では、ssへ…
乾 貞治12歳4月

「母さんは、どこに行ったの?」
「ちょっと用事に」
「用事って、何?」

入学式に父親と二人できた乾。母親は何やら出かけるとこがあるからと、今日の入学式には来ないことになったと朝に伝えられ、現在の会話に至る。

「いや、別に…」

しどろもどろに目を泳がして話す父親に

「また、何を企んでるんですか」

感の良い息子が詰め寄っていた。

「なっ、何も企んでなんかないよ、ねっ」

どうやらこの親子、立場は父親よりも息子の方が強いらしい。

「父さん、さっさと吐いたほうが身のためだよ」

口元を歪めて笑う息子の前で、父親は誤魔化すように乾いた笑いを漏らしていた。
その頃、話題の母親はと言うと…

「いや!!」
「嫌じゃないわよ、薫」
「絶対に着てもらうから」
「嫌だっていってんだろ」

海堂家にて、ご長男薫君を薫君の母と二人で追い詰めていた。

「いい加減、大人しくしてね、薫君」
「そうよ、大人しくしていれば、悪いようにはしないから」
「嫌だ―!!」

朝の海堂家は、息子の大絶叫で始まった。
さて、戻って青学…
入学式を終えて、幼馴染兼親友の手塚と話してる乾。

「さっ、帰るよ」

ガシッと腕を父親につかまれ、引っ張られる。

「な、何?そんなに急ぐ必要なんかないだろ?」
「急ぐの!!大事な用事が残ってるんだよ」

ズルズルと引きずられながら、乾が父親に問いかけ、返ってきたのは要領の得ない答え。

「やっぱり、何か企んでるな」
「まあまあ、行けばわかるって」

気楽な父親の声に、乾は一度嘆息して、仕方なさそうに車に乗り込んだ。
そんな二人の向った先は、教会。そこには

「薫…?」
「どう、貞治君?」
「可愛いでしょう、ハル」

男の子なのに、ウエディングドレスを着さされて、涙を堪えてムウッと口をとがらせている海堂と、両横で楽しそうに笑う母二人がいた。

「あの…可愛いことは、可愛いんですけど…それ…」
「だか…らっ…嫌だっ…て…」
「ああっ!!ダメよ薫、泣いたら」
「や〜ん、折角のお化粧が崩れちゃう」
「母さん、穂摘さん、そういう問題じゃないでしょう」

ポロポロと涙を零し始める海堂の頭を撫でながら、二人の母親に向う。

「ふぇっ…おにい…ちゃ…」

ギュウッと乾に抱きついて泣きはじめる海堂。

「よしよし、ごめんな。助けてやれなくて」

抱きついてくる海堂を緩く抱きしめる。

「何が不満なのかしら?大好きなお兄ちゃんと結婚できるのに」
「どうしても嫌なら、考え直さないとね。穂摘ちゃん」

泣いてる息子をよそに、母親たちは勝手に話をすすめる。
何が不満って、こんな格好をさせられて不満に思わない男の子がいるだろうか?とは二人の息子たちの心情だった。

「そうねぇ、まあ、うちには薫じゃなくても、葉末もいるしね」

だが、そんな息子たちに構うことなく、母親たちはどんどん話をすすめていく。

「まあ、葉末君も薫君も見た目は変わらないし、穂摘ちゃんの子供だから、私は問題ないよ」
「そう?じゃあ、変えようか」
「そうねぇ、なら、葉末君呼んで来ようか?」
「ダメ!!」

教会の控え室を後にしようとする母親たちを止めたのは、海堂の声だった。

「あら、どうして?不満なんでしょ?」
「不満なのは、こんな服を着さされたからだよ」

がっちりと乾に抱きついて、母親たちを睨みつける海堂。

「お兄ちゃんのお嫁さんは俺がなるから、葉末にはやんない!!」
「薫…」
「そう、じゃあ文句を言わずに、大人しくしてくれるわよね」
「それ着て、結婚しなきゃ、乾家の嫁として認めないよ薫君」

途方に暮れる乾をよそに、母親たちはしてやったりとしたり顔。
それを着て、式に出なければ結婚できないと言われれば、海堂が取れる手段は一つで…

「お兄ちゃんのお嫁さんになるためなら、我慢する」

グイッと涙に濡れた瞳を片手で拭って、真っ直ぐに母親たちを見る海堂。

「じゃあ、薫の気が変わらないうちに挙げちゃいましょうね」
「そうね、ほらハルも早く着替えて」
「薫も、化粧直ししないとね」

そそくさと準備を始める彼女たちに、乾は一人ついていけなかった。
なあ、ウエディングドレスがどうとかの前に、あるだろう?問題が…
俺も薫も男だし、それに俺は今日、中学に入学したばっかだぞ?薫なんて、まだ小学生なんだぞ!
と、声を大にして言いたかったのだが、言ったところでどうにもならない人たちだと知ってる乾は、それを口にすることはなかった。

「ねえ、ハル。最高の入学お祝いでしょ?」

乾が着替えに行く途中に母に言われた一言。

「もしかして、お祝いって、薫?」
「そうよ、嬉しいでしょvv」

母は何でもお見通しらしかった。
こうして、半ば無理やりに結婚させられた二人。
新居は二人の実家の近くのマンションの最上階の一室。
仲良く平和に暮らしていた二人の元に、可愛い嵐が届いたのは、それから1年たった、海堂薫の入学式の日の夜のことだった。

Fin