大好きなお父さん・お母さん
いつも、僕を育ててくれて
遊んでくれて、有難う。
もしもし。子供悩み相談室ですか?
−そうですよ。僕、お名前は言えるかな?
はい。乾 静流と言います。
−静流君ね。静流君はいくつかな?
4つになります。
−偉いね。静流君、今日はどうしたのかな?
あのですね、もうすぐ父の日なので、お父さんとお母さんにプレゼントをあげたいんですが、何をあげたらいいでしょうか?
−いい子ね、静流君は。でも、どうしてお母さんにもあげるの?
僕、母の日は知らなかったので、あげれなかったんです。
−そうなんだ。だから、お母さんにもあげたいんだね。
はい。お父さんもお母さんも大好きですから。
−そっか。お父さんとお母さんは何が好きかな?
はい。お父さんはお母さんが大好きです。お母さんもお父さんが大好きです。
−そ…そうなんだ…。他にはないかな?
他は…、お父さんはデータを集めるのが好きで、いつもノートを持って、何かを書き込んでます。
−データ…?そ、そう。じゃあ、お母さんは?
お母さんは、綺麗好きです。お父さんが片付けないと、怒って、殴り飛ばします。
−…そう…、お母さんは、集めてるものとかないのかな?
お母さんですか?お母さんは、いつもテニスする時はバンダナをしているので、それなら沢山集めてます。
−そっか。じゃあね、こんなのはどうかな?
それ、いいです。有難うございました。
−いえいえ。じゃあ、静流君。頑張ってね。
はい。それでは、これで。
−はい、さようなら。
「どうでした?静流」
「はー君」
「いいこと、聞けましたか?」
「うん。いいこと教えて貰ったよ」
ということで、改めて、初めまして 乾 静流です。
ここは、お母さんの実家の海堂家です。
お父さんとお母さんは、高校で部活中です。
さっきまで、はー君…あ、はー君というのは、お母さんの弟の葉末君のことです。
そのはー君とテレビを見ていたら、父の日の話がでたので、はー君に父の日のことを聞いて、今、こうして電話を終えたところなんです。
「あら、葉末。静ちゃん、どうしたの?」
「穂摘ママ」
穂摘ママは、お母さんのお母さんにあたるので、僕からすればおばあちゃんに当たるんですが、まだ若いので穂摘ママと呼ぶようにお父さんから言われたので、こう呼んでいます。
丁度いいところにきてくれた穂摘ママに、僕は走っていきます。
「穂摘ママ、お願いがあるんだけど」
「なぁに?」
「あのね…」
僕が耳打ちできるようにしゃがんでくれた穂摘ママに口を寄せて、僕がお願いを話す。
はー君は、もうわかっているので、後ろでニコニコしていた。
「あら、いいわねぇ」
僕の話を聞き終えて、穂摘ママは僕の頭を撫でてくれる。
「それじゃあ、早速行きましょうか?」
「うん」
「じゃあ、僕は留守番していますんで」
「は〜い。行ってきま〜す」
「行ってらっしゃい」
はー君を残して、僕と穂摘ママはお外に出かけました。
僕たちが向ったのは、駅前のデパートで穂摘ママに悩み相談室のお姉さんが教えてくれたプレゼントを買って貰った。
買って貰ったっていっても、後で僕の今までのお年玉から引いててねと言ってるから、これは僕が買ったことになるんだ。
「僕、お父さんとお母さんに渡してくる」
「え?ダメよ、静ちゃん。一人じゃ危ないわ」
お父さんのプレゼントの支払いをしてる穂摘ママに、そういい残して走ってお父さんたちがいる高校まで行くことにした。
穂摘ママが何か言っていたけど、早く渡したいので聞こえなかったことにした。
お父さんとお母さんのいる学校は、駅に近いので、僕の足でも行けるの。
何回か、連れていってもらってるから道は覚えているし、学校の名前も読めるので(と、お父さんに言うとお前のは、読めるじゃなくて覚えてると言うんだよと言われるけど)、ちょっと疲れたけど、ちゃんと着くことが出来ました。
お父さんたちの通う学校は、僕の保育園と違ってとても大きいので、中に入ってからも大変です。
お父さんもお母さんもテニス部にいるので、テニスコートを僕は探します。
「あれ?リョーマ兄ちゃん!!」
テニスコートを探す必要がなくなりました。
僕が学校に入ってすぐのところで、リョーマ兄ちゃんと桃ちゃんが走っていました。
「静流?どうした?」
僕の声に気づいたリョーマ兄ちゃんと桃ちゃんが僕の傍に来てくれます。
「リョーマお兄ちゃん、桃ちゃん、こんにちわ」
僕は、いつもお母さんが「知ってる人にあったら、まず挨拶」と言うので、挨拶をしました。
「こんにちわ、静流」
「お、元気だな。静流」
「はい。今日は父の日だから、お父さんとお母さんにプレゼントを買ってきたの」
だから、お父さんたちの所に連れていって?
と、お願いすれば。二人とも、あっさりと引き受けてくれました。
「お父さん、お母さん」
お兄ちゃんたちに連れられてテニスコートに着きました。
コートでは、お父さんとお母さんが、菊ちゃんとおーちゃんとテニスをしていたけど、僕が呼んだら、お父さんたちは練習を止めて走ってきました。
「静流!!」
「何かあったのか?」
気がついたら、僕の周りにはレギュラーの人たち全員が集まってました。
心配そうに僕に声をかけるお父さんたちに、僕は
「お父さん、お母さん、コレあげます」
持ってる袋を、お父さんたちに渡しました。
「これ?」
「静流が買ったのか?」
「うん。穂摘ママに頼んで、買ってもらったの」
ちゃんと、僕のお金だよ。
と、お母さんを怒らせないように付け足しました。
「で、穂摘ママは?」
僕の話しにお母さんは、ちょっと怒ったようですが、お父さんが苦笑しながら聞いてきたことに、僕はウン?と考えます。
「…えっと…、デパートに置いてきた…かな?」
首を傾げて、言ったら、お母さんはハァと大きな溜息をつき、お父さんはやっぱり苦笑を見せて、その代わり、周りにいたレギュラーの皆さんは大爆笑しました。
「先に、穂摘さんに連絡しないとな」
「そうっすね、母さん探してると思うし」
そう言って、お父さんは僕を抱き上げて、お母さんとともに部室に向かいます。
何だかよくわからないけど、その後を、くーちゃんとしゅうちゃんと菊ちゃん、リョーマ兄ちゃんに桃ちゃんが付いてきました。
おーちゃんと、ターちゃんは苦笑いを浮かべて、コートに残ってます。
部室につくと、僕はお父さんからお母さんの膝の上に移動させられました。
お父さんが携帯を取って、穂摘ママに電話します。
その横で、僕はお母さんに、周りに心配かけるような真似はしちゃダメだって怒られました。
けど、そのすぐ横で
「薫、今日だけは許してやろう」
と、電話を終えたお父さんが助けてくれました。
「先輩?」
「穂摘さんかあら聞いたんだけどな…」
お父さんは、お母さんのお隣に座って、穂摘ママから聞いた話をお母さんに聞かせました。
「だからさ」
「ッス。静流、有難う」
お父さんの頃場に頷いて、お母さんは僕の髪を撫でながらお礼を言ってくれました。
「乾、かおちゃん、あけてよ?」
そして、お父さんの話を聞いていた、菊ちゃんがお父さんの手の中にある、僕のプレゼントを指します。
「わかった」
菊ちゃんの言葉に応えるように、お父さんはプレゼントの包みを綺麗に開けていきました。
僕がお父さんにあげたもの、それは…
「シャーペンか?」
お父さんの手の中に納まる、ソレを見てくーちゃんが声を出します。
「お父さん、いつもノートに大事なデータ書いてるから」
手の中のシャーペンの手触りを楽しんでいるようなお父さんに、僕はそれを選んできた理由を話します。
黒の細い、メタルな輝きを放つそのシャーペンは、きっとお父さんの大きくて細長い、暖かい指に、とてもよく似合うと思ったから、たくさんあるシャーペンの中から、それを選びました。
「しっくりくるね」
書き味を試そうと、脇に挟んでいたノートに字を書くお父さんを見て、しゅうちゃんが嬉しいことを言ってくれました。
しゅうちゃんの言うとおり、お父さんの指に、そのシャーペンはとても似合ってたからです。
僕のセンスも満更じゃないなぁと、思いました。
「…書きやすいな」
一通り、書き味を試したお父さんが顔をあげて、笑ってくれました。
「嬉しいよ。ありがとう」
クシャリと僕の髪を掻き混ぜて俺を言ってくれるお父さんに、僕も嬉しくて笑顔を返しました。
「これからは、これを使ってデータを取るよ」
と、僕の前に小指を出して、僕と約束の指きりをしてくれました。
お父さんは、言ったことはきちんとする人だけど、もしものために、はー君に頼んで針千本用意しておいてもらわないとと思いました。
「おい、海堂。お前は何貰ったんだよ」
僕とお父さんが約束をしてるときに、桃ちゃんがお母さんに聞きます。
「何だっていいだろうが」
だけど、桃ちゃんとお母さんはあんまり仲良くないので、お母さんは家では聞いたことのないような言い方をしました。
桃ちゃんといるときのお母さんは、普段、見たことないようなことをするので、僕はちょっと恐いなぁと思うけど、いつもと違うお母さんが見れるので楽しいです。
「薫が貰ったものも、見せて欲しいな」
桃ちゃんと睨みあっていた(この状態のお母さんと桃ちゃんを、一発触発って言うんだよって、前にしゅうちゃんに教えて貰いました)お母さんですが、お父さんの声に、そrを止めて、あっさりと頷きます。
それで、お母さんもお父さんと同じように、皆の前で、僕のあげたプレゼントを開けてくれました。
「バンダナか」
開けて出てきたものを、またくーちゃんが声に出しました。
「テニスするときは、いつもバンダナ巻いてるから」
バンダナを広げて、柄や大きさなどをチェックしてるお母さんに、僕はお父さんの時と同じように、理由を話します。
試合をする時とか、気合を入れるためにバンダナをするお母さんに、青の迷彩のバンダナは、戦闘服のようで格好いいと思って買いました。
「似合うっすよ、先輩」
今、巻いてるバンダナを外して、お母さんは僕が買ったバンダナを頭につけました。
それを見て、リョーマお兄ちゃんが嬉しいことを言ってくれます。
やっぱり、僕の買ったバンダナはとてもお母さんに似合っていて、僕のセンスっていいかもって思いました。
「大事な試合の時は、いつもこれを使うな」
お母さんが、嬉しそうに微笑んでくれます。
お父さんとお母さんは、現在、ダブルスを組んでいます。
だから、お母さんの大事な試合の時は、お父さんにとっても大事な試合で、二人で戦ってるから…
僕は、お母さんの言葉を聞いて、とても喜びました。
だって、
「じゃあ、僕もお母さんとお父さんと一緒に試合してるんだね」
って、ことになるからです。
「…そうだな。じゃあ、これからは三人だな」
瞳を輝かして大きく手を振り上げて話す僕に、お父さんが優しく笑いかけてくれます。
「静流も一緒なら、もう絶対に負けねぇな」
お母さんも、僕を抱きしめて、ふわっと柔らかい微笑を見せてくれました。
「いいなぁ」
お母さんの膝の上で、お母さんに抱きしめられて、お父さんに頭を撫でてもらっていると、菊ちゃんが羨ましそうな声を出します。
お父さん、お母さんと一緒に、そっちを見ると、しゅうちゃんも声にはしてないけど、やっぱり、羨ましそうに僕たちを見ていました。
「俺も、大石の子供欲しいにゃ」
へにゃっと動物の耳が垂れたような錯覚が見えてしまうくらい、項垂れた菊ちゃんに
「僕もタカさんとの子供、欲しいな」
と、ニッコリとお父さんに笑いかけるしゅうちゃん。
「今度、父さんに会わせてやるから、自分たちで頼みこめ」
と、お父さんが溜息混じりに言いました。
「本当にゃ!!」
「有難う、乾」
お父さんの言葉に、菊ちゃんとしゅうちゃんは嬉しそうに笑いました。
「先輩、俺も!!」
元気よく、手をあげる桃ちゃんに
「桃先輩の子供なんて、単純バカな子になりそうで嫌っす」
と、リョーマ兄ちゃんが冷たく言い放ちます。
「越前…、それはひでぇよ、ひでぇな」
リョーマ兄ちゃんの言葉に、がっくりと項垂れる桃ちゃん。
何だか、可哀そうだなと思っていると
「バカな子ほど可愛いって言し、どっかで失敗して可愛い子供が出来るかもしれねぇぞ」
と、お母さんが、助けているのか、追い討ちをかけているのかわからない言葉を口にしました。
「てめぇにバカ扱いされたかねぇぞ、海堂」
「バカをバカと言って何が悪い、この万年赤点野郎」
「そんな変なあだ名つけんじゃねぇよ、マムシ」
「マムシ言うなって言ってんだろうが」
「うっせぇんだよ、てめぇだって、乾先輩がいなきゃ、どっこいだろうが」
「何、失礼なことほざいてんだてめぇは。先輩に教えて貰わなくたって、お前みたいな猿が取るような点数取るわけねぇだろ」
「何だと、俺が猿と同じだっていいてぇのかよ」
「はっ?猿と同じだ、笑わせんな。てめぇなんざ、猿以下だろ」
「んだとぉ」
段々と、しゅうちゃんの言うところの一発触発になってくるお母さんと桃ちゃんに
「また、始まったにゃ」
「何年たっても懲りないね」
「静流の前では、止めろよ」
「まだまだだね」
と、呆れかえったような声が、聞こえました。
「…れ」
「え?」
「にゃに、何か言った?」
「どうした、手塚?」
「手塚、いつものアレじゃないの?」
ボソッと何かを言ったくーちゃんに、お父さんたちが不思議そうに問いかけます。
「自分の子供は別にいらんから、静流を嫁にくれ」
「やらん!!」
「部長、静流はまだ4歳っす」
「にゃ!?手塚がとうとう壊れたにゃ!!」
「手塚、いつからショタに?」
「部長、それは犯罪っすよ」
「何で静流を、静流の父親と同い年の人にやらなきゃいけないんすか」
言い直したくーちゃんの言葉に、お父さんは僕とくーちゃんの間に立って、お母さんは桃ちゃんとの一発触発を止めて、僕をギュッと痛い位に抱きしめます。
それで、菊ちゃんと桃ちゃんはわたわたと混乱しながら、部室を走りまわっていて、しゅうちゃんは面白そうにしながらも、いつもは閉じてる目が開いていて、リョーマ兄ちゃんはくーちゃんにラケットを向けて睨んでいました。
「静流の意見はどうなんだ?」
けれど、くーちゃんは、そんあことで怯むような人じゃないので、いつも通りの態度で、僕に返事を聞いてきます。
僕の答えは…
「僕は、お父さんのお嫁さんになって、お母さんのお婿さんになるから、くーちゃんのお嫁さんにはなれないよ?」
です。
僕の夢は、お母さんと一緒にお父さんのお嫁さんになって、お父さんと一緒にお母さんのお婿さんになって、三人でいつまでも仲良く暮らすことだから、くーちゃんのことは好きだけど、くーちゃんのお嫁さんにはなれません。
僕が、そう説明すると、くーちゃんは寂しそうに「そうか」と言って、引き下がってくれました。
僕の言葉に、他の人たちは微笑ましいって感じで僕を見て笑ってました。
僕は、くーちゃんに悪いことしたかなと思ったので
「くーちゃん。僕ね、くーちゃんのお嫁さんには、なれるないけど、愛人にはなったげるよ」
と、言ってみました。
そうすると、
「本当か?静流」
くーちゃんは何だか、無表情のまま涙を流して僕の手を握りしめてきて、少し恐くて、
「…不二!!」
お父さんは滅多に出さない大声を出しましたが、既にしゅうちゃんはここにはいなくて
「静流、不二先輩の言葉は信じちゃダメだからな」
と、お母さんはいつもは言わないことを言います。
そして、桃ちゃんと菊ちゃんは、大笑いしていて、しゅうちゃんがいなくて、怒りのぶつけ場所がなくなったお父さんに苛められていて、リョーマお兄ちゃんは
「静流。愛人になるなら、部長じゃなくて、俺にしなよ」
と言ってきて、くーちゃんとお母さんに怒られてます。
僕、何かおかしなことを言ったでしょうか?
きっと、お母さんもお父さんも教えてはくれないと思うので、また家に帰ったら、子供悩み相談室のお姉さんに相談しようと思いました。
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