中学の時に出逢った一つ年上の先輩と、付き合い始めて、プロでダブルスを組んで引退して…そして、結婚して…
先輩と先輩との間に出来た(どうやって出来たのかは生んでおいて言うのもなんだか、疑問だが…)三人の子供と、平穏とは程遠いとしか思えないような日々を戻ってきた街で過ごしている。
はぁ、朝最初に起きるのは必ず俺なんだよなー
毎朝かけてる目覚ましより先に体が起きるから、隣で寝てる人に目覚ましの音が聞こえないのがいけないんだよな。
まあ、でも起すの可哀相だしな…
「お早うございます、もう少し寝てていいですよ」
結局、俺は先輩には甘くなっちまうんだよな。
仕方ないか、惚れた弱みってやつだし。
さ、朝飯の仕度だ、うちは揃ってテニス部に入部しているせいで、朝練があるから早いんだ。
「お早うございます」
「お早う、国光」
相変わらず早いな、まだ飯が出来るまで時間があるぞ?
「では、手伝います」
「申し出は有難いが、遠慮する」
お前が手伝ったら、通常の倍時間がかかるし、食器が減る。
下手すりゃ、食材まで減るからな。
「それでは、父さんを起してこようと…」
「いい、お前は大人しくそこに座ってる!」
絶対にそれはするな。
あの人の寝起きは最悪なんだ、寝ぼけて何するかわかんないんだぞ!
実の息子が相手でもだ。
お前、いきなり父親に襲われたらどうするんだ?
……国光なら、喜びそうだな。嫌になる位にファザコンだしな……
やっぱり、ダメだ。違う意味で、危険だ。
国光よりも先輩が危険だから、お前はダメ。
いや、勿論、残りの二人もダメだけどな。
「起しに行くなら、リョーマを起しに行け」
そうそう、起す必要があると言えば、末の息子のリョーマもだな。
あれはそんなとこは見事に父親に似てくれたからな。
毎日、二人も起さなきゃならないなんて、面倒だ。
「僕が起してこようか?」
「周助」
「お早う、母さんに国光」
「お早う」
「お早う」
お前はな……
う…ん…お前こそ大人しく座ってて欲しいかもしれない。
決して役に立たないんじゃなくて、こっちを手伝って貰ったら知らない間に奇妙な味付けされそうだし、起しに行ってもらうのもな……
二度と起きれないような目に合わしそうだしな……
「母さん、そんなに二度と起きれなくなりたいの?」
……俺の子は人じゃありませんでした(泣)
何が悪かったんだろう?
やっぱあれか、男同士で生んだのが間違ってたのか?
「さりげに失礼だよね」
人知は超えないで欲しいよな。
先輩ですら、心の中は読めなかったぞ。
人の表情や性格から、心を読むことがあってもな。
それにしても、毎日思うんだが双子のくせに少しも似てないよなお前ら。
「国光に似てるなんて言われたら、僕、生きていけない」
「同感だ」
…仲いいのか?悪いのか?
「「悪い」」
悪いのか、兄弟なんだかあ、出来れば仲がいいほうが……
いやいやいや…国光と周助が普通に仲のいい兄弟やってたら……
うちは間違いなく家庭崩壊する!
「自分の生んだ息子を何だと思ってるんだろうね?」
「お前に限って言えば、宇宙人だろ」
「国光に限って言えば、珍獣だよね」
お前ら、そんな静かに兄弟喧嘩を始めるんじゃねぇ。
「国光と周助はリョーマを起しに行け」
揃って行けば、リョーマも確実に起きるだろう。
二度と寝坊する気も起きなくなるかもしれないけどな……
それのが楽でいいよな。
「俺は先輩を起してくる」
飯の仕度も出来たし、周助も国光と一緒にリョーマの部屋へと追いやったから、帰ってきたら味が変わってたってこともないだろうからな。
先輩はと…まだ寝てるよな、絶対に…
「先輩、朝っすよ。起きて下さい」
やっぱり、起きそうにないな。
「家族全員で朝飯食うんだろ」
アンタがそれを誰よりも望んだことだろうが。
両親が多忙で家族団欒を知らなかったアンタが何よりも望んだことだろう。
「ん…も、ちょっと…」
「ダメっすよ、あいつらは学校があるんっすから。これ以上はゆっくり出来ません」
「じゃ…先に食べて…て…」
「先食べたら、後でグダグダ言うだろうが、アンタは」
ったく、前にも同じように言って、先に食ったら、起きた後に散々ブチブチ文句言ったくせに。
「言わない…」
「ぜってー、言う」
言わないわけねぇんだ、寝起きの先輩の言葉は信用しちゃいけねぇ。
先輩に逢ってから、今まで一緒にいた中で覚えたことの一つだ。
「早く起きろって」
あいつらが遅刻したらどうするんだ。
ダダダダダダダダダダダダ……
ん?なんだ、あのけたたましい足音は。
朝から騒ぐな!
てか、うちの家族ああいう騒ぎ方はしないんだが…
は!まさか、また隣のバカガキが来たんじゃねぇだろうな!
「父さん、助けてよー」
「リョーマ?」
「グエッ…」
うわ!お前、駆け込んできた勢いのまま先輩に飛び乗るな!
見てみろ、先輩の腹に直撃したせいで、沈没してるじゃないか。
「父さん、寝てないで兄ちゃんたちを何とかしてよー」
リョーマ、そんなに強く揺すってやるな。
お前のしたことで、それどころじゃねぇんだよ。
それより…
「何があったんだ?」
「俺、殺される――――――!」
「ええっ!誰にだ――――!」
おおっ、飛び起きたじゃねぇか、先輩。
殺されるって…まあ、殺されかねないよな…ある意味……
「失礼だよね、リョーマって」
「起してやったというのに、その態度は何だ」
「うわー、鬼が来た―――――――!」
「…なるほど」
せ、先輩、そこ納得するところじゃねぇっすよ。
納得したくなる気持ちもわかりますけどね。
「父さん、朝からいい度胸だよね?」
「朝から父親を平気で脅すお前のほうがいい度胸だよ」
「やだなー脅すだなんて、僕がそんなことするはずないじゃない」
「いつもやっているだろう」
「何か言った?国光」
「事実を言った」
「本当にいい性格してるよね、君ってば」
「周助には言われたくないな」
また始まっちまった。
いい加減にしてくれよ、この胃が痛くなりそうな…大石先輩なら確実に吐血して入院騒ぎになりそうな…冷戦を毎日繰り広げるのは。
「またか…」
「まだまだだね」
「恐がって逃げてきた奴の台詞じゃねぇぞ」
「ぐっ…、母さんだって二人に起してもらえば?」
「俺は、あいつらより先に起きてる。起きないてめぇが悪い」
「うっ…父さん、母さんが苛める」
「……う〜ん、確かに自分で起きれるほうがいいからな。俺も人のこと言えないんだけど……」
よくわかってんじゃねぇか。
「でも、起きれないもんなんだよねー、頑張っても」
「だよねー」
「じゃあ諦めて、あの二人に起してもらえ」
「えー、母さんが起してよ」
「それじゃ、先輩があの二人に起してもらうことになりますね?」
「え!」
「俺、一人で両方は時間的に苦しいでしょ」
「……リョーマ、頑張って起きような。俺も、頑張るから」
そんなにあいつらに起されるの嫌か……
嫌だろうな…
俺もそれだけはぜってーやだしな。
「時間もねーし、今日はもう、そのまま起きて下さい」
「ああ、起きるよ」
リョーマもとっとと先輩の腹の上から降りろ。
「このまま抱っこして連れてって」
「仕方ないなー」
おい、そこで頷くな!
甘やかすなと言ってんだろうが!
「でもさ、いつこういうスキンシップ取ってくれなくなるかわからないしさ」
中学生の息子と父親がとるもんじゃねぇーよ。
「お早う、薫」
「はよっす」
ちゅぅ
こんなんで騙されてやんねーからな!
時間がねーから、言うの諦めただけだかんな!
「父さん、俺も」
「あ、僕も」
「俺も」
…さっさと食って、とっとと学校に行け!
「母さん、やきもち?じゃあ、母さんも」
「いらん!」
いいから、お前ら全員、出てけ―――――――!
寝室に鍵つけてやる!
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