ピンポ〜ン
「ちわ、クロネコ…宅急便です」
軽快なチャイムの後に、威勢のいい声。
「あ?うち…?まだ、お中元でも、お歳暮のシーズンでもないだろう?」
自室でパソコンに向かっていた乾はイライラしながらパソコンの電源を切って玄関に向かう。
「はいはい」
「宅急便です、コチラに判子お願いします」
「はい」
「有難うございました」
面倒臭そうに判子を押して、荷物を受け取る。
宅急便が帰っていったのを確認して、ドアの鍵を閉め、宅急便をリビングに持っていく。
「…差出人……カヲ……?」
宅急便の差出人を確認したところ、住所も何もなく、ただカヲとだけ書かれていた名前に首を傾げる。
「取り合えず、金属探知機でもかけるか…」
何故、一介の中学生が金属探知機?とかのツッコミは置いておいて、部屋に戻ろうとする乾。
「……うにゃぁ……」
バン!!
ドン!!
奇妙な鳴き声とともに、ダンボールを中から何かが叩くような音がする。
「?何だ…?」
リビングのドアを開けたところで聞こえた物音に、乾が訝しげに戻ってくる。
ダンボールはドンドンとでこぼこしていき、
ドンッ!!
「なっ、何だ?」
一際、大きな音とともに小さな手が出てくる。
「うっ…んにゃあ〜…」
乾が困ったように見ている前で、ダンボールから生えた手…もとい、出てきた手はジタバタと振り回されているが、それ以上、動かすことが出来ないらしく、体が出てくることはない。
「出すにゃ〜」
さっきまでは奇妙な鳴き声だったものが、今度ははっきりした言葉でダンボールの中からくぐもって聞こえる。
「あ…ちょ、待て」
たぶんもう片方の手で、ダンボールを叩いているのだろう、ドンドンと音のするダンボールに正気に戻った乾がガムテープを剥がす。
「にゃっ…にゃにゃ……?」
ガムテープが剥がれたことにより、空いた隙間に気付いたのか、もう片方の手がダンボールの蓋を開けて、出ようとしたらしいのだが、もう片方のダンボールの蓋に片手を突っ込ましたままだったために、出ることが出来ずにバタバタと奇声を発している。
「ああ、今出してやるから、ちょっと待て…って」
乾がダンボールを掴んで、中に片手を忍ばせてその手を掴み、ジタバタ暴れられて苦戦や小さな傷を作りながらでも、ダンボールから出す。
「…………薫…………?」
「にゃん」
乾に片手を掴まれてぶら下がっている、ダンボールから出てきたものは、乾の後輩であり、恋人でもある海堂薫そっくりで、だが、2.3歳児位の大きさの子供サイズで、何故か頭にネコ耳とおしりに尻尾がついていた。
「え…と…。………猫………?」
「にゃ」
海堂のミニ姿なので、乱暴な扱いも出来ずに、片手で持ち上げていた形から、抱き上げるように両手で持つ。
「そ、猫……か……色々とデーターに取りたいとこだが……」
「にゃっ?」
マジマジと観察するようにその猫を見つめる乾。
「カヲにゃ、よろしくにゃ」
不思議そうに、そんな乾を見ていた猫・カヲ(正式名称:カヲル)は、自分の名前を名乗った後、挨拶代りに乾の頬をペロッと舐めて、笑った。
「あ、よろしく……」
海堂そっくりのカヲに頬を舐められ、微笑まれ、思わず照れてしまった乾は片手で顔半分くらいを隠しながら、呟く。
「で、色々と聞きたいんだけどね……」
「にゃに?」
このまま抱き上げたままってのもと思った乾は、ソファに座り、膝の上にカヲを座らせる。
「どうやってここに?」
「う…?あのね、カヲね、お友達のクロちゃんにね頼んだのにゃ」
物凄く得意そうに語るカヲ。
「うん。そうじゃなくてね、誰がコレ書いたの?」
「クロちゃんにゃよ」
「へぇ、で、どうして俺の家に?」
「にゃ?」
心底分からなさそうなカヲの表情に、これはココにくる経緯も何もかもわかっていないに違いないと乾は理解した。
「いいか。薫そっくりの子だし…」
もしこの子のせいで何かあったとしても、仕方ないと思える。
それに。これだけ薫そっくりの猫。
信用できるだろうし、信用したい。
「カヲ、今日からうちの子になる?」
「にゃる」
乾の言葉に両手を上げて、言い切るカヲ。
「じゃ、今日からよろしくな、カヲ」
「よろしくにゃの」
抱き上げてくれる乾に、カヲは嬉しそうに頬をすり寄せた。
こうして、たぶん猫のカヲルが、乾の家の一員になった。
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