Snow Drop



東京に今年最初の雪が降った。
夜半過ぎから降っていて雪は、朝には大地を雪化粧に染め上げた。
犬は外を駆け回り、猫はコタツで丸くなるというが、ここでは……

「しろい、しろいよ」
「しろいね」

朝、窓から見た外の景色に嬉しそうにはしゃぐのは猫のカヲ。
横で頷くのがハル。
ハルはあまり寒いのが得意ではないらしく、さっさとオコタの中に入っていった。

「かおる、あれにゃに〜?」

外の景色に気付いた海堂がカヲの横に来たことに気付いたカヲが訊ねる。

「あれは雪って言うんだよ」
「さわっていい?」
「ああ、雪遊びするか?」
「する〜」
「よし、行くか」
「うん、ハルもいこ?」
「ぼくはいいよ」
「先輩?」
「パス」

マフラーをつけて、手袋もして、防寒を完璧にした海堂とカヲに対し、ハルと乾はいまだオコタの中。外に出る気はさらさらない。

「にゃんで、あそぼーよ」

ハルの腕を掴んで、カヲが引っ張る。

「先輩、行きましょうよ」

海堂が乾の腕を掴んで引っ張る。

「ぼくはいいよ」
「俺は寒いの苦手だから…」

だけど、オコタの中の乾とハルはそっから出たくないのだろう、頑張って反抗している。

「仕方ねぇな。カヲ、二人で行こうな」
「え〜」
「で、一杯遊んで、その後は美味しいケーキ屋さんでケーキを食べて帰ろうな」
「ほんと、うん」
「あっ…」

その話を聞いたハルが声を出す。

「ん?どうした?」
「ハルもいく?」
「………うん……」
「行ってらっしゃい、俺は留守番してるよ」

実は甘いものが好きなハル。
海堂の提案にまんまとハマッてしまったのである。
乾は、嫌いではないが、どうしても食べたければ自分で作れるので、興味ないらしい。

「わかりました」

というわけで、乾をのぞいた一人と二匹で外へと出かけたのだった。
出かけたと言っても、家の庭なのだが…(一軒家に住んでるの?とかいう疑問は持たないように)
乾がオコタでのんびりとしてる間、窓の向こうからははしゃぐ声がする。

「うわ〜、みてみて〜」

カヲは嬉しそうに走り回ってコケて、顔や足の跡が残ってるのが面白いらしく、ハルを呼ぶ。
ハルも出てしまえば楽しいみたいで、座って雪に触れている。

「うさぎ〜」

雪を固めて雪ウサギをハルは作っていたらしい。

「上手だな。よし、雪だるま作るか?」
「うん」
「カヲも作る〜」

ということで、雪だるまを作ることになった。
その頃、オコタでのんびりしてる乾はというと、ようやくオコタから出てきて、キッチンへと向った。

「さてと…はしゃいで帰ってくるあいつらのために頑張りますか」

冷蔵庫を開けて、卵や砂糖などと、ケーキの材料を用意する。
そう、乾は外で遊んでいる海堂たちのために、美味しいケーキを作るつもりなのだ。
食べに行くとは行っていたが、外ではしゃぎまくればそこまで行くのも疲れるだろうし、それにそこまで行くよりも乾の作るケーキのほうが人気があるからだ。
そういうことで乾がケーキを作ってる間、庭の海堂たちはハルやカヲでも作れる大きさの雪だるまと雪ウサギを数個、後、最後に乾に手伝わそうと大きな雪だるま用の塊を作っていた。

「おにゃかすいた〜」
「ん?……いいにおいする」

ペタリと雪の上に座ってお腹に手を置くカヲ。
家から漂う甘い匂いに気付いたハルが、庭からリビングへと続くガラス戸に手をかける。

「あ〜、ケーキのにおいにゃ〜」

ハルがドアを開けたことにより、部屋から漂う香りにカヲも気付き、嬉しそうに中に駆け込む。

「あれ?もう終わったの?」
「はる、おにゃかすいた〜」
「今、焼いてるところだからもう少し待ってくれるかな?」
「じゃ、先輩、少し手伝ってもらえます」
「手伝うって?」

カヲと乾の会話を聞いて、海堂が乾を外に誘う。

「雪だるま。後、のせて飾りつけて終わるんっすよ」
「大きいの?……ああ、これは一人じゃきついな」
「っす」

海堂の言葉に、乾が庭を見に行く。
そこにはどう見ても、海堂一人じゃのせれない大きさの球が二つ。

「わかった」

乾が庭に出て来る。
ハルとカヲの目の前で、海堂と二人でのせる。

「よっと」
「出来た。ほら、後は…」

一旦、家にあがり、バケツや人参などを持ってきて飾り付けをする。

「完成だな」
「うわ〜」
「おおきいね」

出来上がった雪だるまを嬉しそうに見るハルとカヲ。
しばらくは上がってこなさそうな二匹を置いて、二人はケーキの用意にと部屋へ上がる。

「嬉しそうだな」
「っす。先輩も来ればいいのに」
「俺は寒いのはパス」
「体動かせば暖かくなります」
「でも、ほら冷たいよ」

海堂の赤くなった頬に指を滑らせて呟く。

「外にいたんっすから…」

余計に赤くなった頬を隠すように俯く海堂。

「ほら、ココも」
「なっ…」

チュッと海堂の唇を自分の唇で触れる。

「俺が暖めてあげるよ」
「ふっ…」

唇をくっつけたまま喋る乾。
その振動がじかに伝わってきて、海堂の口から細い息が出る。
そっと開かれた唇の合間を縫って、乾の舌が滑り込む。
冷えた手を握られ、冷たい唇を暖められて、熱い口内を蹂躙される。
いつ二匹が戻ってくるかわからない状況での、深い口吻に海堂が戸惑う。

「先輩…やばいって…」
「大丈夫」

触れ合ったまま囁く二人。
離してくれない乾に海堂も少しずつ応えはじめる。

「ふ…っく…」

冷え切った体が体温を取り戻した頃に、ようやく離された唇。

「はぁ…」
「な、戻ってこなかっただろ」
「そういう問題じゃないっすよ」
「…あ、時間だ」

む〜っと頬を膨らます海堂を誤魔化すように、乾はオーブンの前に立つ。

「うん、上出来」

焼きあがったタルトを見て乾が満足そうに頷く。

「相変わらず、美味そうっすね」

海堂もつられて見に来る。

「後は、クリームと果物のせて出来あがり」
「っす」

そして、二人で最後の仕上げにかかった。

「ハル、カヲ」
「出来たから、入っておいで」
「うん」

オコタの上に置かれたケーキ。
それを見て、急いで二匹が戻ってくる。
キチンと手を洗って、座る。

「いただきましゅ」
「いただきます」

乾の作った、そこらの店よりも確実に美味しいケーキは瞬く間になくなった。
キチンとキッチンにお皿を持っていき、海堂が洗う。
洗い終わって戻ってきた海堂。

「あれ?寝ちゃったんですね」
「ああ、二匹仲良くね」

オコタでは、はしゃぎ疲れた上に、ケーキでお腹一杯になって眠くなってしまったのだろう、カヲとハルがオコタで二匹くっついて寝ていた。

「微笑ましいですね」
「そうだな。でも…」
「でも?」
「薫、こっち」

自分の向かいに座った海堂を手招きする。

「はい?」

トコトコと四つんばいで近づく海堂。

「俺らも微笑ましくな」

そう言って、微笑みながら海堂の腕を掴み、自分のいるコタツの中に引きずり込む。

「ちょっ…俺がやったら微笑ましくないっす」
「そんなことはないって」

嫌がって出て行こうとする海堂を押さえ込む乾。

「せまいっすよ」
「こうすれば大丈夫」

乾が海堂を抱き上げ、自分の体の上にのせる。

「先輩が重いっすよ」
「俺のことはいいから。薫も眠いだろ、寝よう」
「…でも…」

事実、海堂はさっきからアクビを繰り返し、目を擦っていた。

「俺がこうしたいんだから、気にしない」
「…っす…」
「お休み」
「…おやすみなさい…」

スウッと眠りに落ちた海堂。
乾はそれを見送って、海堂のサラサラの髪に唇をくっつけてから、自分も眠りに落ちていった。

Fin