賢者の弟子として、彼女と彼女の竜たちと住み始めた三人の少年。
初めのうちは、基礎を学ぶために、三人とも同じ修行をしますが、ある程度のとこまできたところで、彼女は三人を呼びました。
「先生」
「何か?」
「用事ですか?」
それなりに大きくなった少年たち、聡明で秀麗な少年たちは賢者と同じようにこの国の人々に愛されていました。
「そろそろ、お前たちに、本格的に術を教えようと思ってね」
やはり、教えるなら、一つのものを徹底させたほうがいいだろうと考える賢者は、自分のもつ三つの術を三人に分けます。
「国光、お前は竜術士を目指しな」
竜族はとてもプライドの高い一族です。
ですから、生半可な人間の言葉など聴きません。
「お前は、誰よりも誇り高い。きっと、竜もお前のためになら力を貸すことを厭わないだろうからね」
「はい」
「貞治、お前には精霊術士になってもらうよ」
「精霊術士ですか?」
「そうだよ」
精霊族はその属性により、気質は違いますが、皆、自然に生まれ、自然に育つものたちですから、自然と一体です。
ですので、自然を愛し、自然に愛される人のためにしか力を貸しません。
「お前は自然や動物に愛されてる。お前のその優しく穏やかな心は精霊たちにも愛されるだろうよ」
「わかりました」
「そして周助、お前は魔術士におなり」
精霊の力を借りる、精霊術士。竜とともに存在する竜術士。
魔術師はこの二つの術士とは、全く異なり、自分の中の力を魔力し、使うものです。
その身に、それだけの力を身に秘めていないとなれません。
「お前は、その小さな体に、誰よりも力を秘めているからね」
「僕、頑張ります」
そして、三人は言われた通りの術士になるための修行を積み重ねていった。
現在…
「桜乃、リョーマはどこだ?」
「マスター。リョーマ君は、乾さんのところに行きましたよ」
「……」
街外れの小高い丘の上に竜王の双子竜・桜乃とリョーマを育ててる竜術士、手塚。
「全くさ、手塚って頭固すぎだと思わない?」
「お前な、毎回、毎回、喧嘩するたび、うちに来るんじゃねぇよ」
「俺も、薫みたいに乾さんがマスターだったらよかったのにな」
今からでも、変えてみない?
「ふざけるな。お前は竜だろうが。マスターは精霊術士なんだから、お前を育てられるわけないだろう」
「育てられなくもないけど?」
「マスター」
「乾さん、それ本当?」
「うん、一応、竜術士と魔術師の資質もあったから、不二と手塚に教えてもらったし」
俺も、二人に教えたけどね。
「じゃあさ、俺を乾さんとこの竜にしてよ」
「それはダメ。お前くらいの高位の竜なら、俺よりも手塚のほうが力を引き出せるよ」
それに、薫とお手伝いの妖精たちで手一杯だからね。
「やっぱり、俺は精霊術が一番あってるから」
「マスター」
「チェッ…」
街外れの牧場で精霊族の長(女王)の息子・薫と一緒に暮らしている、精霊術士であり、錬金術師でもある乾。
「手塚に柔軟性を求めたって、無理だよ」
「不二、それはいいすぎだって」
「あいつはあれがいいとこなんだから、我慢しろよリョーマ」
「マスター、それ褒めてないっすよ」
「そうそう、あれでもだいぶマシになったんだよ。初めて君たちを竜王から預かったときなんか…」
「あれは、ひどかったな。しばらくは、俺と不二で手塚の家に泊まりこんで、お前ら育てたからな」
「そうなんすか?」
「そうなの。手塚ってば家のこと何も出来ないからさ。君らを、栄養失調とかで死なせるところだったんだから」
ケラケラと笑う魔術士と精霊術士。
笑い事ではない話すら笑い話しに出来るあたり、この人たちが本当に凄い人だということだけは、リョーマも薫も理解できた。
「リョーマ君」
「リョーマ!!」
「手塚!!」
「お前は…」
「まあまあ、手塚」
「たまには、優しくしてやれよ」
何でも頭ごなしに叱ればいいもんでもないだろう。
幼少の頃から、自分に付き従ってきてくれた友の助言に、手塚は溜息をつく。
「…一応、心にとどめておこう」
「おい、不二。客じゃないか?」
「あ、本当だ。じゃ、ゆっくりしていってよ」
「ここは、お前の家じゃなくて、河村の経営してる酒場だと思うんだが?」
「タカさんのものは、僕のもの。ね、タカさん」
「え?あ、うん」
「河村、甘すぎ」
街の真ん中、酒場の主人の獣人・河村と一緒に暮らしながら、酒場の片隅で占い師をしてる、魔術師、不二。
彼らは、この街になくてはならない存在であった。
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