「何で?何でダメなの?」
「何でって、俺も薫ももう中学生だろ?普通の中学生の兄妹はしないんだよ」
「普通って何?他の人がしてないからってしちゃいけないってことにはならないでしょ」
「薫」
「お兄ちゃんの意地悪!!」
乾 貞治 青春学園中学校2年(♂)と海堂 薫 青春学園中学校1年(♀)は兄妹である。
とはいえ、血が繋がってるというわけではなく、幼い頃に両親の再婚によって兄妹になったわけである。
そんな二人の秘めごととはその事実ではなく…実際、その事実では青学内では公になっていて、皆知っているので、秘めごとにならない。
ではなにかというと……
「お兄さん、お風呂入りましょ」
今は夜。
食後、仲良く遊んでいた兄弟3人、兄の乾に妹の薫と弟の葉末。
乾と血の繋がっている、母にお風呂は入れるから入りなさいと言われ、葉末が乾にお願いしたところである。
「いいよ、入ろうか」
「私も入る」
「薫はダメ」
「何で?」
二人で席を立って、お風呂に行こうとしたところで薫もお風呂に向かおうとして、一番最初の口論になったというわけである。
「意地悪って、問題が違うだろ」
「違わないもん。葉末はよくて私はダメなんでしょ?」
「あのな薫。薫は女の子で、葉末は男の子だろ」
「そんなの関係ないもん」
「大有りだって」
「どうして?」
「あのね、さっきから言ってるけど、俺は男で薫は女の子だろ」
「うん」
「で、血は繋がってない」
「でも、兄妹だもん」
「兄妹でも年頃の兄妹が一緒にお風呂に入ったりしないだろ」
「誰が決めたの?」
「誰って…」
「お兄ちゃんとお風呂に入るのっていけないことなの?」
「う〜ん、いけなくはないと思うけど…」
「じゃあいいじゃない。私はお兄ちゃんと一緒に入りたい」
そう、彼らの秘めごととはコレ。
つい最近…正確には薫が中学校に入学するまで、乾と薫は一緒にお風呂に入っていたのだ。
勿論、葉末も一緒だったりするのだが。
因みに、一緒に寝てたりもする。
それも乾にしてみれば、そろそろ止めたほうがいいのではないかと思っていることだ。
ただ、今一緒に言えば、よりひどい反対に合うだろうから、一つずつ片していた。
「でもね、薫。いつか、薫に好きな人が出来て…」
「薫はお兄ちゃんよりも格好いい人じゃなきゃ、嫌だもん」
「俺より格好いい人なんて沢山いるだろう」
「「いません」」
乾の言葉には、傍観してただけの葉末まで入って否定した。
「……それはともかく、これからのことも考えて……」
「何で?そんなのはその時でいいじゃない」
「その時になって、後悔しても遅いだろ」
「後悔なんてしないもの」
どうしても引かない薫と、どうしても止めようとする乾。
お互い一歩も譲るつもりはなく、この後も延々と口論が続いた。
「………結局、何だかんだと理由つけてるだけで、お兄ちゃんは私と一緒に入るのが嫌になったんでしょ」
「薫」
「お兄ちゃん、私のこと嫌いになったんだ」
「違う。どうして、そこでそんな話になるんだ!!」
「だって、前までは全然、そんなこと言わなかったのに…」
とうとう泣き出してしまった薫。
乾のほうはというと、泣かれて慌てて一杯一杯。
「そうじゃないって、前から考えてたんだよ」
「どうして…」
「本音を言うとね、一緒にお風呂に入ってると、色々と問題があるんだよ」
「問題?」
「うん。俺の個人的な問題なんだけどね」
「何?」
「…ちょっとね。いつか薫もわかるよ」
「……」
「俺はね、薫を大事にしたいんだよ。だから、お風呂は一緒に入れない」
「…わかんないよ…」
「このままじゃ、薫を傷つけかねないんだよ」
「お兄ちゃんならいいよ」
「薫、何にもわかってないだろ」
「いいから。お兄ちゃんだったら何されても嫌いにならないから。一緒にいさせて」
「薫…」
ギュウっと乾にしがみついて訴える薫。
途方にくれたように困り果てた乾。
そんな二人への助け舟は…
「あら、まだいたの。早く入ってね」
「わかってるけどさ」
「あら、薫どうしたの?」
「お兄さんが、お姉さんと一緒にお風呂は入らないっていったら、喧嘩になっちゃって…」
薫が泣いてることに気付いた母の声に、葉末が今までのことを詳しく説明する。
「あらあら。とりあえず、今日はもう遅いから3人で入ってね」
「母さん!!」
「何?」
「何って、普通は止めるとこじゃないのか?」
「どうして?」
「どうしてって、何かあってからじゃ遅いんだけど…」
「大丈夫よ。何のために、アナタの籍を海堂に移さなかったと思ってるの」
「え?」
「薫も貞治も、それでいいって思えるなら好きにしなさい」
「母さん、ある意味、無責任な発言かと…」
「お母さん、有難う」
「大丈夫。私は貞治の理性を信用してるから」
ニッコリと笑って言い切る母に、乾はガックリと項垂れる。
「そういう発言って、凄いズルイと思う」
「私も飛沫さんも子供たちを信用してるの。ズルイといわれても困るわ」
「ね、お兄ちゃん。お母さんも言ってるから」
「…何があったって、俺は知らないからな」
「何があっても、アナタは責任をキチンと取るでしょ」
「いい性格してるよ」
海堂家、やはり最強なのは母のようだ。
こうして、この秘めごとは終ることなく、まだしばらくは続けられるようだ。
新たな秘めごとが出来るのはいつのことだろうか?
|