末っ子の逆襲



注:この話では葉末も女の子で言ってます。それ以外の兄妹ssでは葉末は男の子です。

俺には薫以外にも、もう一人、妹がいる。
名前を葉末という、俺より3つ下の見た目は薫そっくりの妹だ。
勿論、可愛い妹で、薫と違って言葉遣いが常に丁寧で、誰に対しても明るい良い子だ。

「お兄さんvv」
「ん、どうした葉末?」
「今日は私の勉強を見て欲しいんですけど?」

そんな葉末は受験のために現在、日々勉強に勤しんでいる。
だが、これでも一応、学年首席な俺がいるせいか、葉末は塾には行っていない。
だから、葉末の勉強を見るのは必然的に俺の役目で…勿論、そんな役目とか関係なく、可愛い妹である葉末のお願いだ、喜んで勉強を見てやる気は満々だ。

「ああ、構わないよ。じゃあ、葉末の部屋に行こうか?」
「はい」

嬉しそうに笑う葉末は、薫とはまた違った笑顔を見せる。
その姿がなた可愛い。
同じ顔なのに、個性の違いが笑い方やちょっとした表情の違いを見せる。
とても興味深い。

「お兄ちゃん、葉末、私も」
「お姉さん」
「薫?」
「私も勉強する」
「って、まだ試験には早いぞ?」

2人で葉末の部屋に向かおうとしたところで、薫が私も抱きついてくる。
薫、私もと言うのはいいが、いきなり抱きついてくる必要はないだろ?

「いいの、予習も大事でしょ?」
「私は構わないですよ」
「本当に、勉強するんだな?」

薫がこういうのは何も始めてのことではない。
実を言えば、毎回のことだった。
ただ、薫はいつも勉強をすると言うより…どちらかと言えば邪魔をしてくれる。
なのに、葉末の成績は常に優秀で、青学は余裕で合格圏内だというのだから、葉末の優秀さは兄としても誇らしい。

「するよ?」
「約束だぞ」
「うん」

キョトンとする薫は可愛いと思うけど、全然、わかってなかったのだなと思うと哀しくなる。
何を言っても、薫が聞かないのはわかっているので、これ以上、俺も言うのは諦めて、3人で葉末の部屋に向かった。

さて、ここで少し補足をしよう。
薫は基本的に、俺には結構なわがままを言う。
特に、一緒にいることに関しては絶対に引かない。
それに対して、葉末は聞き分けがいい。
ただし、薫が一緒だと、一緒になって困ったことをしてくれる。
そう、それがまさに今のこの状況だ……

「薫、葉末…」
「なぁに?」
「どうかしましたか?」
「あのな、この状況じゃ勉強のしようがないと思うんだが…」

何故か、薫と葉末は俺の膝の上。
それぞれ右膝・左膝にちょこんと座ってくれている。
それはそれで可愛いのだろうけど……

「そんなことないですよ」
「お兄ちゃんは教えるだけだもの、大丈夫よ」

何が大丈夫なのか、少しも離れる気配もなくいそいそと勉強道具を出し始める葉末……

「薫、勉強道具は?」
「自分の部屋」
「取ってきなさい」
「何で?」
「何でって、勉強しにきたんだろ」
「うん」

……うんって……
この子は自分の言ってることがわかってるのだろうか?

「それなら、勉強道具がいるだろ?」
「今日は復習するの」
「復習?」
「葉末の勉強見て、復習」
「薫……」

これが薫のいつもの常套句。
いつもこうやって薫は勉強せずに、俺にくっついている。

「お兄さん、これわからないんですが?」

そして、もう慣れたのか葉末は、少しも気にした風もなく、大人しく勉強をはじめ、わからないことがあると聞いてくる。
ある意味、薫以上のマイペースだよ葉末。

「そろそろ休憩にしたら」

しばらくして、これまたこの状況に疑問感じないのか、母が飲み物とお菓子を持って入ってくる。
テーブルにお盆ごと置いて、何事もなかったように戻る母。
あなたも、少しは何とかしようとしてください。

「お兄ちゃん、アーン」
「……」
「お兄さん、どうぞ」

妹2人は甲斐甲斐しい。
薫はお菓子を俺の口元に持ってきて、葉末は飲み物にストローを指して、俺に向ける。

「有難う、2人とも」

と、それぞれのを受け取ろうとすれども、手渡してはくれず……

「アーン」
「はい、私が持ってますから」

ニコニコと、どうしてかこういうとこだけは同じ笑顔で、ズズイと俺にお菓子と飲み物も差し出してくる。
こうなるともう、兄の威厳もなんのその。
俺に勝ち目はあるはずもなく……

「有難う」

大人しく、薫の手からお菓子を貰い、葉末の手から飲み物を飲むしかできなかった。
こんな感じで、勉強がはかどるわけもなく。

「……お兄さん、有難うございました」
「葉末、いつもキチンと教えてあげれなくてゴメン」
「いいんですよ、私はこういうときでもなければ、お兄さんに甘えられませんから」
「葉末…」

葉末の言葉に、思わず俺はジーンとしてしまった。
だが、それも次の瞬間、全て打ち砕かれてしまう。

「だから、今日は私と一緒にお風呂に入って、一緒に寝てくださいね」
「葉末…」
「ダメ、それは私がするの」
「いっつも、お姉さんがお兄さんとしてるんですから、たまには私と変わってくれてもいいじゃないですか」
「しれだけはダメ」
「お姉さんの意地悪」
「い、いや、そうじゃなくてね……2人とも……?」

俺、泣いていい?
君たち、2人とも女の子だろ?
もう、兄と一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝るような年齢じゃないでしょ?

「今日は絶対に、私がお兄さんと一緒にお風呂は行って寝るんです!!」
「それだけは、絶対に私がするのー」
「少しは、俺の言い分も聞いてくれないかな?」
「そうですね、お兄さんに聞いてみないと」
「そうね、お兄ちゃんに決めてもらおう」

お、ようやく俺の話を聞いてくれる気になったか…・・・

「2人とも、もうね……」
「お兄ちゃん」
「お兄さん」
「「どっちと一緒がいいですか」」
「は?」
「若い方がいいですよね?」
「年上の魅力ってのがあるよね?」
「い、いや…あのな…、俺は一人で入りたいなーって……」
「「それは却下」」
「だよな…」

綺麗にハモる妹たちに、俺はもう好きにしてと匙を投げることにした。
お前たち、若い方がとか年上の魅力とか…どこでそんな言葉覚えてきたんだ?
お兄ちゃんは、そんな風に育てたつもりは毛頭なかったぞ……

「やっぱり、俺、育て方間違えたかなー」

俺の言葉は、虚しくも妹2人の言い争いの声にかき消されていた。

Fin