合同授業?



青学は結構なマンモス学校だろうと言える。
だからこそ、どうあっても違う学年、違うクラスであろうともどっかの授業が重なってしまうのは仕方ないこと。
そんな偶然があの兄妹にもあった。
2年の乾と1年の薫が重なる授業。それは体育だった。

「…………」
<ザワザワ>

本日の乾のクラスはバスケットボールの授業で、薫はバレーボールの授業。
青学の体育館は広いので、2組が半分づつ使っても充分な広さがあるために、たまにこうやって違うクラスと一緒に使用することもあった。
今まではそれぞれ体育館とグラウンドなどという風に同じ場所ではなかったので、一緒にならなかったが、今週からしばらくは同じ場所で授業を受けることになる。

「なぁ?何で誰も突っ込まないんだ?」
「一番、突っ込まないといけない奴が突っ込まないからだろ」
「なあ、あれ幽霊じゃないよな?」
「そんなわけないだろ」
「じゃあ何で手塚は平然とパスを受けてるんだ?」
「あの乾でも流石に青くなってるってのに」
「そりゃ、乾は当事者だからだろ」

現在、乾のクラスはバスケのパスの練習。
手塚は同じクラスで、今、2人1組の練習の乾の相手だった。
同じように練習をしてる乾たちのクラスメイト。
彼が騒いでいるのには理由があった。

「薫…」
「なぁに?」

それは、練習をしている乾の腰に纏わりつく、隣のコートで授業を受けているはずの1学年下の少女。
そう、乾の妹の薫だった。
薫は乾と同じ場所で授業だと気付いてから、ずっと後ろから乾に抱き付いてくっついていた。
そして、それを何とも思わずに黙々と練習をしているもの一名。
そう手塚だ。それも、乾と向かいあっているのだから、誰よりもその状況を分かっているはずなのだ。
だからこそ、クラスメイトは手塚が何も言わないために、突っ込むことも出来ず、もしかしてあれは幻覚か幽霊なのかもと自分がおかしいかのような錯覚に陥っていたのだった。

「薫の授業は隣のコートでしょ?」
「うん」
「なら、早く向こうに戻りなさい」
「でも、あんな練習しなくてもちゃんと出きるから」
「そういう問題じゃないから」
「お兄ちゃん」
「ん?」
「人と話す時はちゃんと相手の目を見なさいって……」

今、乾は手塚との練習をしながら薫と話していた。
なわけだから、勿論、乾は正面を向いていて、後ろの薫のほうは見ていない。
それが薫には不満なのだろうか、ムスッと頬を機嫌悪そうだ。

「無茶を言うなよ…」
「お兄ちゃんが、言ってたんじゃない」
「あのね、俺は今、授業でパス練の最中なの。薫のほうを向いたら受け取れないだろ」
「それなら大丈夫だ、乾。お前の手の中にキッチリと放り込んでやるぞ」
「有難う手塚。でも、問題はそこじゃないから」
「じゃあ、何処なの?」
「それはね薫、お前がココにいるってことだよ」
「何か問題があるか?海堂がいてもお前が失敗をするということはないだろう」
「そうよ」
「手塚、俺がどうこうという問題じゃないから」
「そうか?」
「ああ、俺が言いたいのは、薫の授業は隣でココにいちゃいけないってことだ」
「そうか」
「そう、手塚は黙って、練習しててくれる」
「わかった」

手塚が入れば話しがややこしくなるので、早々に練習に集中してもらうことにした乾。
天然2人を同時に相手するのは、流石の乾でも疲れるのだろう。

「さて、薫」
「ここで練習する」
「一人で練習してないだろ」
「お兄ちゃんと一緒にする」
「俺はバスケの授業」
「ボール二つ使ってパス練出来るよ」
「学年もクラスも違うだろ」
「でも同じ場所だよ」
「薫、先生たちもダメだっていうから」
「じゃあ、先生が良いって言ったらいい?」
「や、そういう問題じゃ…」

乾の最後の言葉は聞き届けられることなく、薫はさっさと自分のクラスと乾のクラスの体育教師の所に行っていた。

「無理だって……、て、手塚!?」

仕方ないなと、無理だと思っていた乾はそう言いたげに溜息を吐いて、正面を向くと、そこに手塚がいないことに気付いて慌てて回りを見渡せば、いつの間にか、薫と一緒に体育教師の元にいた。

「お兄ちゃん、先生が良いって」
「……手塚、話がある……」
「何だ?礼ならいらんぞ」
「何をした」
「先生に助言をしただけだ」
「何でそんなことをするんだ!!」
「お兄ちゃん、私と一緒は嫌?」
「薫、そういう問題じゃないでしょ」
「じゃあどういう問題?」
「俺と薫はクラスが違うんだから、一緒には出来ないの。嫌とかそういう問題じゃないの」
「先生の許可は取ったぞ」
「だから、何で手塚がそれをするんだ?」
「面白そうだったからだ」
「何がだ?」
「パス練とレシーブ練習を同時にするということがだ」
「したいなら授業が終ればいくらでもしてやるから、いらんことをするなよ、頼むから」

手塚の助力により、許可を貰えた薫。
やっぱり天然の親友と妹を同時に同じ場所には置きたくないと、真剣に思う乾。
それぞれ事情は違えど、嬉しそうに場所についてバレーボールとバスケットボールを持って、乾が来るのを待っていた。

Fin