「薫、好きだよ」
遅まきながら、ようやく自分の気持ちを自覚した乾。
ずっと傍にいて可愛がっていた妹が、その日、妹から愛しい恋人になった。
自覚するまでの乾は、兄妹としての節度を大事にしていた。
逆に妹の薫は、大好きなお兄ちゃんといたいためだけに、それをことごとく邪魔していた。
そんな二人が恋人になったら……
「薫?どうしてそんなに離れて座るんだ?」
妹から恋人へと昇格したばかりの薫は、乾の部屋に来ていた。
というか、兄妹であった頃から家にいる間のほとんどを乾の部屋で過ごしていて、もう少しで両親に自室を剥奪されそうになったこともあるほどだ。
この場合、剥奪されかかった本人・薫の意思ではなく、兄・乾の意思で部屋の剥奪は免れていたのだが……
今までは、薫は乾が離れなさいと言おうが、無視されようが平気で乾のベッドの上でコロコロしていたり、乾にべったりとそれはもう、どこぞのバカップルのようにベタベタくっついては乾に兄と妹のあり方をこんこんと説かれていたにもかかわらず、恋人になった途端、薫は乾の部屋の片隅にカチンコチンになって座っていた。
「わ、私ね、今ね、隅っこが好きなの」
「何だそれ?」
しかも、緊張のあまり言動もおかしくなっていた。
「じゃあ、俺も隅っこにいこうかな」
乾は可笑しそうにクスッと笑って、薫の傍まで近寄ろうとする。
「わ、私、やっぱり真ん中が好きー」
ズザザザザザザザザザ―――――!
凄い勢いである。
隣に座った乾を見た途端、薫は何かのマンガのように座ったまま、物凄いスピードで部屋の隅から中央へと移動した。
この薫の行動には流石の乾も呆気に取られていた。
「か、薫…」
真っ赤になって、部屋の真ん中で白のワンピースのスカートをギュウッと握って俯いている薫に、乾は戸惑いがちに声をかける。
「薫、どうした?」
「……」
乾の問いかけに、薫は唇をギュっと噛締めて恥ずかしそうに目を伏せる。
「薫?」
緊張しているのか硬く目を瞑って、何かに堪えるように手を握り締める薫に、乾は声をかけるが返事はない。
乾はそっと薫がこっちを見ていないことを確認して、そっと立ち上がり気配を消して薫の隣に座る。
「俺のこと、嫌いになった?」
囁きに近い、微かな声が薫の耳に届く。
「違う!」
認識した言葉に驚いて、咄嗟に乾に振り向いて否定の言葉を吐く。
「じゃあ、どうして俺から逃げるんだ?」
「それは……」
乾の言葉に、薫は戸惑うように視線を彷徨わせる。
そんな薫の様子に、乾はそっと嘆息する。
「……兄妹に戻ろうか?」
告げられた言葉に、薫は信じられないと言う目で、乾を見上げる。
「や…っ…」
お互い、自分の気持ちを自覚して、相手の気持ちも知って…
今更、兄妹に戻れるわけがないことを、薫だって乾だって気付いている。
戻ったところで、昔のように甘えることはできない。
それどころか、ギクシャクとするだけだってこともわかっていた。
「ど…して…」
そんなこと、頭のいい乾がわかってないはずがない。
それなのに、そんなことをいう乾が薫には信じられなかった。
「どうして、そんなこと言うの?」
乾の気遣いか、不安の表れかはわからないが、二人の間にある数センチの隙間。
薫はそれを埋めるように、腕を伸ばす。
「…戻れないよ?」
「そうだね」
「……戻りたくないよ?」
大好きな兄が恋人に代わった。
それで変わったのは、何よりも乾を独占出来るということ。
妹は兄を独占出来ないよ。
いつか、二人とも一緒に歩く誰かを見つけなきゃいけないんだよ。
兄の友人に言われた時に、自覚した感情。
独占したかったのは、兄だからじゃない。
もっと、強く深くこの人を想っていたから。
「…好きだよ?」
そっと乾の服を掴む。
涙が出そうになって、堪えるように体に力を入れると、耐えられないとでもいうように震える体。
震えは指先から、乾に伝わる。
「好きだ」
掴んでいた手をそっと包まれる。
服から指を引き離され、乾の腕が薫を抱き上げ、自分の膝の上に座らせる。
「俺も、戻りたくない」
眦に溜まる涙を唇で吸って、そのまま眦に口吻を落とす。
「お兄ちゃん…ゴメンね…」
「薫?」
優しい口吻に、微かに残る涙をそのままに、手を乾の腕に絡める。
「……どうしていいか…わからなかったの…」
肩に腕を回し、抱き寄せられてドキドキと高鳴る胸を…音を隠すように、視線を下に向ける。
今まで、中学校にあがってから乾は、普通の兄妹らしくいようと、一緒にお風呂に入るのを禁止したり、一緒に寝るのを止めたりと、必要以上のスキンシップをことごとく禁止してきた。
それが恋人になった途端、あっさりと覆されて薫は戸惑っていたのだ。
今までは、いきなり止めるように言われた、スキンシップに反抗していたのだが、それをあっさりと覆され、それも自ら進んでし始めるようになった乾に、兄と妹という関係から恋人になったという戸惑いも揃って、薫の心は突然のことについていけずに、どうしていいのかわからなくて、一緒にいたいけれども傍にいるということが出来なかった。
だから、薫は乾から離れた場所に座っていたのだ。
「…傍にいるだけで、ドキドキして恥ずかしくなって……何がなんだかわかんなくなってきて…」
キュッと乾の服をつかんで、たどたどしく、それでもちゃんと誤解を解こうと乾に一生懸命に声をかける薫。
「もういいよ、ゴメン」
理由を聞いて、ようやく薫の行動に合点が行った乾は、クスリと薫に笑いかけて、そっと額に口吻を落とす。
「お前の気持ちを考えてなかった」
考えて見れば、乾自身が薫をこういう子に育てたわけで、天然故に暴走しがちなところがあっても、本来は純粋無垢な少女なのだ。
誰かを好きになることも、誰かと付き合うことも、何もかもが初めての薫にしてみれば、今の関係で二人でいることに緊張しないはずがないのだ。
「誰よりも、俺がわかってやるべきだったよな」
まだまだ初心な妹が、嫌って離れているんじゃなくて、照れてどうしていいのかわからなくて離れているんだってことを。
「ごめんね、薫」
「ううん、私こそごめんなさい」
ようやく乾の顔を正面から見て、笑いかけることが出来た薫。
それにホッとしたように、乾も優しく笑いかける。
「薫…」
そっと乾の指が薫の頬を擽る。
「お兄ちゃん…」
やっとで力の抜けた薫が、くすぐったそうに目を細める。
「少しずつでいいから」
「うん」
「少しずつ、今の俺たちに慣れていって…」
「うん」
「じゃあ、しばらくはお風呂も寝るのも、バラバラだな」
今までは妹だから、何かするわけにもいかないしと、止めさせようとしていのを、ようやく好きに出来ると思ったというのに……
それでも、妹であり、今はもっと大切な恋人になった薫が嫌な思いをしないようにと、乾は涙を飲んで、それを諦めようとする。
「ど、どうして?」
「へ?」
「どうして、一緒じゃないの?」
乾にしてみれば、薫のためを思っての提案を、思いっきり不満そうに問われ、唖然としてしまう。
「私は、お兄ちゃんと一緒にいたいの」
「薫、今、少しずつって…」
「だって、今まで一緒だったじゃない」
「今までと、状況が違うでしょ」
さっきまで、恥ずかしがって乾から離れるように隅にいた薫の言葉とは思えない。
「あのね、今の俺と一緒にお風呂に入ったり、寝たりしたら、間違いなくそれだけじゃすまないよ?」
「私、いつも言ってるじゃない。お兄ちゃんにだったら何されてもいいって!」
……それが、さっきまで恥ずかしいとか言っていた少女の台詞だろうか?
乾は、思わず頭を抱えたくなっていた。
一緒にお風呂に入るほうが、二人で部屋にいるよりも恥ずかしいことじゃないのかと…
「…じゃあ薫、少し進んでみようか?」
「一緒にお風呂入ってくれる?」
「勿論、薫が平気だったら」
「一緒に寝てくれる?」
「ああ。だから、黙って」
そっと薫の唇に人差し指をかざす。
「薫、好きだよ」
「ん…お兄ちゃん…」
指を一度離し、今度は親指で薫の唇をなぞる。
その感触にフルリと震えたのを見て、乾は優しく薫の唇に口吻を施した。
まずは、触れるだけで離れて、薫が嫌がってないか確認してから、もう少し深く唇を合わせる。
「んん…」
上唇と下唇、それぞれを軽く吸い上げて、薫の固く閉じた唇が開くのを待つ。
「おにい…ちゃ…っん…」
恥ずかしそうに薫の唇が、乾を呼んで開かれる。
乾はそれを見逃すことなく、薫の唇を塞ぎ、そっと舌を差し込む。
「んっ?…んんっ…」
歯列をなぞり、怯えるように奥に隠れている舌を絡める。
「ふ…ん…ぅ…」
顔を少し傾け、深く合わされるようにし、手は腰を撫でる。
「平気?」
「はぁ…あっ…ん…」
充分に唇を堪能した後、耳元で囁く乾。
直接耳に吹き込まれる、乾の低く甘い声に、薫の体がピクンと跳ねる。
「薫、耳弱いんだ」
「や…ん…ぁぁ…」
クスクスと楽しそうに耳元で笑われ、そのまま耳朶に舌を這わされる。
「やぁ…おにい…ちゃぁ…ん…」
唇で耳朶を食まれ、舌を中に差し込まれる。
「そ…そこ…いやぁ…」
乾の言う通り、薫は耳が弱いらしく、ビクビクと体を震わせる。
「薫、可愛い」
「ん…あぁ…」
チュッと耳元に唇を落としてから、首筋に舌を這わし、時折、強めに吸い上げては所有の痕を残す。
「あっ…あ…」
腰を抱き寄せていた手の片方を胸に持ってきて、服の上から優しく揉みしだく。
全てが始めての経験に、薫は恥ずかしそうに瞳を伏せて、乾の手からもたらされる今はまだ微妙な快感に耐える。
「ふぅん……ああっ…」
首筋をなぞっていた乾の唇が、そのまま肩に降り、薫の肩にかかるワンピースの紐をブラジャーの紐ごと口で外す。
両方を口で外し、そっと手で服をずらし、まだ発育途中の小ぶりだが形のいい胸を露にする。
「ぅ…ん……ふぁ…ああ…ん…」
片方の胸を乾の大きな手のひらが包む。
柔らかく揉みながら、指で尖り始めた突起を揉み潰す。
手で愛撫を続けているのとは違うほうの胸を、乾の唇が落ちる。
「ひゃぁぁ……あぁぁっ……」
一度、パクッと食いつくようにして、そっと立ち上がった突起を歯で擦り付ける。
片方を唇で、もう片方を手で愛撫され、薫は与えられる快楽に耐えることが出来ずに、愛らしい唇からひっきりなしに、甘い嬌声を上げ続ける。
「薫は感じやすいね、こっちも…」
「んあっ……はぁああん……だめぇっ……」
唇を胸につけたまま、乾が楽しそうに話す。
胸を弄んでいた手を下ろし、スカートの中に潜り込ませる。
胸と耳への愛撫で既に濡らしている下着の上から、そっと指で擽るようになぞっていく。
初めての刺激に、薫は自分を支えられなくなり、乾の首に腕を絡めて肩に頭を置いて、支える。
「やぁ……っだ……おにい……ちゃ……」
大事な部分を隠している下着を脱がし、溢れる蜜を掬いあげ、中に指を忍ばせる。
まだ誰の手も触れたことのないソコは、固く、乾の指の侵入を拒もうとする。
「まだ、固いね」
「ぁあん……な、なにぃ……」
一度、手を離し、自分の膝の上から降ろし、ベッドに運んで仰向けに寝かせる。
中途半端に着せたままのワンピースも全て綺麗に脱がしていく。
「お兄ちゃん、私、どうかなっちゃうの?」
「大丈夫、どうかなっても俺がいるから」
「うん」
ベッドに寝かされた薫が、これからのことを思って不安そうに、乾を見る。
安心させるように、汗で張り付いた髪を指に絡め、笑いかけてやる。
「感じるままに、声をあげて」
「うん…」
不安に揺れる瞳を閉じさせるように、もう一度、深く唇を重ねる。
安心させるように、何度も口吻を重ね、乾の体が下へとずれる。
時々、止まっては薫の体に紅の刻印を刻み込んでいった。
乾の手が薫の太腿に触れ、優しく足を開かせる。
「やっ…おに……ちゃ……ぁぁぁぁああ…」
足の間に乾が入り込み、溢れる蜜を舐め取るように、ソコを舌で舐め上げていく。
割れ目を指で掻き分け、舌は零れ出す雫を掬いあげながら、奥へと進んでいく。
誰にも見せたことのない、その場所を、舌と指で蹂躙され、薫の体が何度も快楽に波打つ。
「あぁん……あぁ……ふぅ……んん……」
舌で固く閉ざされたそこが解れていき、乾の指がそっと飲み込まれていく。
指で奥を馴らすように抜き差しを繰り返しながら、舌はプツンと存在を主張し始めた花芯を転がす。
男性の先端と同じだと言われる、その芯はプックリと立ち上がり、乾の舌に弄ばれていく。
「ふぁん……あぁぁぁん……も、もぅ……」
花芯を舌でいいように弄られ、徐々に増えていった奥を解す指に内部を掻きまわされ、薫の体は限界を感じる。
「いいよ、イッて」
「ぃやあぁぁん……あ・ぁあああ――――」
花芯を少し強めに歯で噛まれ、指を強く突きたてられて、薫が一際強く啼く。
痙攣した膣内と同じように、全身も震え、放心する。
「薫、大丈夫?」
弛緩した体を投げ出して、荒い息を吐く薫の様子を、乾が心配そうに覗き込む。
「お兄ちゃん……私……」
「ん?」
「私、おかしい?」
「おかしくないよ」
「本当?」
「ああ、こういうことしたら誰だってああなるから」
「そうなの」
「そうだよ、だから薫が不安になることはないよ」
「私のこと、嫌いにならない?」
「バカだな、なるわけないだろ」
「よかった」
乾の手によって初めて教え込まれた快楽に、溺れていった自分の姿が恥ずかしくて、浅ましいような気がした薫は、不安そうに乾に訊ねるが、おかしくないのだと乾に答えてもらい、安心したように笑う。
「頑張ったね、薫」
「お兄ちゃん?」
「今日はここまでにしようか?」
本音を言えば、乾だって健全な青少年だから、最後までシタイが、まだまだ初心な妹にあまり無理強いをするわけにもいかないからと、ここで止めておこうと思った。
「少しずつ慣らしたほうが、いいだろう?」
優しく髪を梳きながら、言い聞かせるような声で話す乾に、薫はフルフルと首を横に振る。
「薫?」
「……私、何されてもいいから……」
目を見て話すのは恥ずかしいのか、顔を隠すようにシーツに擦り付けて、ボソボソと呟く。
「だから……だから…、私をお兄ちゃんのものにして?」
恥ずかしそうに告げられた言葉に、乾は胸がジーンと熱くなって、強く薫を抱き締める。
「薫、好きだよ」
「うん、私も好き」
想いを伝えあうように、深く甘い口吻を交わす。
そして、薫の望み通り、二人は一つになった。
「薫…?」
情事の後、愛しそうに薫の髪に指を絡めて、優しく抱き寄せていた乾は、薫が少しも自分のほうを見ずに、そっぽを向いているので、声をかける。
始めはただ恥ずかしいだけだろうと思って、放っていたのだが、どことなく薫が怒っているように感じて声をかけたのだ。
「……お兄ちゃん…」
「何?」
「…慣れてるよね?」
「え?」
「お兄ちゃん、彼女いなかったって言ったよね?」
「う…うん」
「じゃあ、何でそんなに慣れてるの?」
「な、慣れてないよ」
「嘘だ。慣れてない人としたら、絶対に気持ちよくないって言ってたもん」
「誰が?」
「不二先輩と菊丸先輩!」
「あ、あいつら、余計なことを」
「余計?やっぱり慣れてるのね」
「……」
何でこんな時に限って、薫は勘がよくなるんだ……(汗)
普通なら引っかからないであろうところに引っかかって、引き合いに出してくる薫に、乾は冷や汗が出てくるのを感じる。
「お兄ちゃんの、浮気者!」
「浮気してない!」
「嘘だ」
「嘘じゃない、薫のこと好きだって気付いてからは、一切、してない」
弁解するように口を開く乾に、薫の目がどんどんと据わっていく。
「やっぱり、誰かとしたことあるんじゃない」
「あっ……」
薫の言葉に、自分の失言に気付いた乾はパッと口を押さえるが、今更で……
「お兄ちゃんのバカー」
勢い良く乾は、枕を投げつけられることになってしまった。
「浮気したら許さないんだからね!」
「絶対にしないってば」
そして乾は、薫に浮気しないと約束させられ…約束しなくてもする気はないが…しばらく、一人で何処かにでかけたりすることは許されなかった。
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