天然  -It's out  of  the  question-



天然の妹と暮らし続けてきていたことだし、天然には慣れていると思っていた。
今更、一人増えたところでと思っていた。
全てが間違い。
俺は天然を甘く見ていた。
薫、お前はまだまだマシだったよ。
可愛いもんだったよ、笑って許せる範囲だったものな。
でもなでもな、お前に輪をかけて天然に育った、うちの長男はどうしたらいい?
笑って許されない範囲で暴走しているんだぞ?
あれがうちの跡取りだなんて、うちの将来はないのだろうか?


まだ、国光や周が幼稚園に行っている頃のことだった。
子供たちをお風呂に入れてやるのが俺の役目で、上がった後のことを薫に任せていた。

「薫、国光と周上がったから」
「はーい、じゃあくーちゃんもあーちゃんも体拭こうね」

この頃はまだ、子供たちも小さいからか薫も子供にやきもちを妬くという程のものはなかった。
子供に延々と惚気を聞かせてはいたようだが……
はっ!これか、こいつらの問題だろうと思わずにいられないほどのファザコンぶりは……
今更気付いたところで、これでは時既に遅しということなんだろうな…

「母さん、一人で出来ます」
「私も、一人で着替えれるよ」
「本当?くーちゃんもあーちゃんもえらいね」

中々、うちの子供たちは覚えが早いな。
自分で体を拭いて、パジャマに着替えることが可能だなんて。
上がったら、褒めてやらないとな!

「お父さん、見て。自分で着たのー」
「これからは自分で着ますから」

…………前言撤回

「周は、凄いな。ちゃんと着れてるじゃないか、えらいな」

周は完璧だ、周は。
国光…そんな目で見るな。
同じように褒められると期待するな。
頼むから、おかしいと思ってくれ…

「国光、小さいなとか思わないか?」

普通わかるだろ?
お前、ボタン嵌めれてないだろ、小さくて。
袖も無理やりだろ、破けかけてるじゃないか……

「そう言われれば…」
「言われるまで分からなかったのか?」
「成長したんでしょうか?」

…………近くにいい精神科はないだろうか?

「国光、お前の着てるパジャマはリョーコのパジャマだ」

お前のパジャマはコレ。
…こら、ジッと俺が渡したパジャマを凝視するな。
着てるものと、比較するな。
そんなことしなくても、わかるだろ。

「…みたいですね」

みたいじゃない。
そうだから。
どこをどう見て、リョーコのパジャマを自分のだと思ったんだろう?
わからない。
薫でさえ、わざと俺のパジャマを着ることはあっても、本気で自分のだと思って着たことはないぞ。
国光は薫に似たんだろうなとは思ってたけど、まさか薫を超えていたとは。
そう言えば、周は俺を超える俺似の性格だったな。
二人とも、そんなところで親を超えないでくれ。
そこは超えたらいけないところだからな。

「……そんな息子が、何故か部長に生徒会長か」

何を思って、国光にそんな大役を押し付けたんだか……

「表向きは、国光ってば品行方正・成績優秀・文武両道・容姿端麗で威圧感というかカリスマ性があるしで、キリない位に賛辞を貰える人間だもの。性格にとてもつもない欠陥があってもね」

周、お前に人のことを言う資格はないぞ。

「姉さんだって、表向きは美人で優しい、生徒会副会長で通ってるじゃん。天使の微笑みとか言われてさ。実際は悪魔の微笑みなのにね」

姉妹喧嘩を勃発するのは止めてくれないかな、二人とも。

「知ってる父さん、お隣のタカさんなんかさ、姉さんと付き合ってるもんだから、一部の熱狂的な姉さんのファンに恨まれてるんだから」
「可哀相だな、隆君」
「父さん、何か言った?」
「いや、隆君は幸せものだなって」

周、いきなり開眼するのは止めような。
親を恐怖に突き落としてどうしたいんだ、お前は。

「ねぇ、皆。自分の服は持っていってね」
「もう畳んだの、早いね」

流石に薫は、片付けとか掃除とかそういうのは手早いし手際がいい。
俺が出来ない分、徹底して得意になってしまったようだ。
今も、取り込んだばかりの洗濯物を全て綺麗に畳み終えている。
今日は子供たちの部活のジャージとかもあって、結構な量があったのにも係わらずだ。
こういうときは、本当にいい奥さんを貰えたなーと思うんだけどなー

「はい、大事なレギュラージャージなんでしょ。ちゃんと片付けてね」
「ちゃんと自分のを持って行くんだぞ」
「はーい」
「貰っていきます」
「ちょっと国光」

はぁ、言ってる傍から…

「どうした、周」
「そのレギュラージャージは私のよ」
「普通、男子と女子のジャージ間違える?」
「む?そうか…」

そうかじゃないだろ。
柄も色も全然違うじゃないか。
その上…

「国光はスコート履かないでしょう」
「はい」
「スコートも一緒に持ってるわよ」
「……ですね」

頭痛い……
ジャージだけならまだしも、挙句にスコートまで。
サイズも違うならば、色も柄も違う。
その上、男は絶対に履かないスコートまで付いている。
それなのにだ…なのにだ…

「何故、お前は間違うんだ?」
「どうしてでしょう?」

俺が聞いてるんだ!

「わかりません」

わかるようになってくれ。
俺はお前の将来が心配だよ。
頼むから、しっかりした嫁さん貰って、俺を安心させてくれ。

「それなら、父さん。あなたしかいません」

何がだ?

「国光、ダメよ。お兄ちゃんんは私の旦那様なの。国光のお嫁さんにはなれないの」
「父と息子って時点でダメよね」
「男同士って時点で、嫁は不可能だよ」

ああ、もう…何処をどう突っ込んでいいのやら…
突っ込み所が満載過ぎて、どうしていいのかわからないよ。

「国光、俺はなしっかりしていて、まとも神経で可愛いお嫁さんを貰って欲しいと思ってる」
「やはり、父さんしかあう人がいないと思います」
「俺が言ってるのは、血の繋がりのない、可愛い女の子のことだ」
「いません」
「探せ!」
「無駄です!」
「探せば絶対にいる。わかったな」

何を間違ったんだろうか、俺は。
何処で育て間違えたのだろう。
生まれた子供は確かに可愛い人だったはずなのにな…
いつから、うちの子は人じゃなくなったんだろうか?


人の親になりたかったな……
無理ならせめて、会話のキャッチボールが出来る子がよかった。
成績や運動神経など贅沢は言わないから、普通の子供が欲しかったな……
なあ、これって贅沢な悩みか?

Fin