乾と海堂は親の決めた許婚。
海堂は自分で性別を変えられるという、人には言えない秘密がある。
その体質のために、乾との結婚も問題ないわけだ。
本日の海堂の性別は女性。
服も青のワンピース。
天気もいいので、二人はお弁当を持って、仲良くピクニックに行くことにした。
「いい天気だよな」
「うん」
乾の服は黒のサマーセーターに綿パン。
眼鏡も外して、コンタクト。
手には昼食の入ったバスケットとジャケット、もう片方に恋人の手。
「外で飯食ったら、気持ちよさそうだよな」
ベランダで外を見上げた海堂の一言に、こうしてピクニックに行くことが決定した。
「薫って、外に二人で行く時は絶対に女の子になるよね」
「男んときだと、いらないもんがやってくっから」
乾の出した素朴な疑問に、海堂は答えとしてはいまいちな答えを返す。
「いらないもん?」
「女」
「ああ、なるほど…」
別に海堂本人は男のほうが慣れていていいのだが、男の時に二人で出歩くと、必ずナンパされる。
「それにさ、男同士だと、こういうのは出来ねぇだろ」
ギュッと繋いだ手を見る海堂。
「確かに、男同士じゃデートに見えないな」
「そういうこと」
目的の地についた二人は、大きな木の木陰にレジャーシートを引いて、腰を降ろす。
「気持ちいいな」
「風もいい感じに吹いてる」
座って、柔らかく吹く風を頬に感じて、瞼を閉じる海堂。
「気持ちよさそう」
チュッと瞳を閉じた海堂の唇にキスをする乾。
「いきなり、何すんだよ」
「ん?目を瞑ったから」
「そんなの理由になるか」
「敬遠だよ」
「何が?」
「さっきから、薫のこと見てる奴らがいたからね」
着いた先は大きな運動公園。
家族連れや、カップル、数人の友達のグループと様々な人が周りにいる。
二人がこの公園に入った時から、乾は海堂に向う男性たちの視線に気付いていた。
「だからね、薫は俺のだって、見せ付けとこうと思って」
「…わかった」
「怒らないの」
「怒らねぇよ。おかげで、俺も敬遠できたし」
「え?」
「気付いてないのかよ?アンタもそこらの女の目を引いてるぞ」
そう、海堂が男性たちの視線を集めているように、乾もまた、女性陣の視線を集めていた。
「だから、俺も見せ付けれて丁度よかった」
そう言って、二人はクスッと笑った。
陽気な気候の中、二人は仲良く食事をする。
お互いに相手に作ったお弁当を平らげて、一息つく。
「ご馳走様」
「ご馳走さまでした」
仲良く手を合わせる。
ごろんと横になった乾。
「飯食ったら、眠いな…」
「アンタは万年寝不足だからだろ」
「そうかな」
「こう天気のいい日に、昼寝ってのもいいな」
「確かに」
気持ちよさそうに目を瞑る乾に、海堂も興味を持ったのか、コロンと寝転がる。
「お前ね、スカートの時は止めなさいって」
「でも、俺も眠い」
既にウトウトと乾の胸に懐いている海堂。
乾は苦笑しながら、持ってきていたジャケットを海堂の足元にかける。
「お休み、薫」
額に触れるだけのキスをして、乾も襲い来る睡魔に身を委ねた。
「あ〜、もうこんな時間じゃねぇか」
「すっかり、寝入っちゃったね」
公園が終了を告げる放送で目を覚ました二人。
苦笑しながら歩く乾に、怒りながら歩く海堂。
「何でそう、のんびりしてられるんだ」
「薫が怒りすぎ」
「煩い」
「いいじゃないか、たまにはこういう日があっても」
「ったく、アンタといたら、怒ってる理由も忘れちまう」
溜息を吐いて、乾の手を握る海堂。
「明日も休みだし、ゆっくりと帰ろう」
「はい」
たまの休日、ゆったりと恋人との休日を過ごした二人だった。
「何言ってんだ?これから、二人の休日が始まるんじゃないか」
「おい」
「夜のお楽しみが待ってるだろ」
「ふざけんな」
それは、また別の話し。
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