階段  <字書きさんに100のお題 002 for girls>



伸びすぎた身長を喜びこそすれ、恨むようになる時がくるなんて思ってもみなかった。
中学生離れした、身長。
部内どことろか、下手すれば校内の高さを誇る。
そんな俺の彼女は、ごく普通の…普通よりは少し高めくらいの…それでも165には満たない身長の少女。
20cmの身長差は中々、不便なことがある。

「先輩、どうしたんですか?」
「うん、何でもないよ」

その最たるものが、さり気なさを出せない点だ。
薫は俺と話す時は常に上を向いているけど、どちらかと言えば無口な子で、話さずに帰るときは大体が下を向いている。
薫が照れたりした時も、表情を窺おうにもかなり俺が腰を降ろさないといけないために、途中で薫に気付かれて顔を背けられてしまうこともある。
何より、そう何より…

「本当に?私じゃ役に立たないかもしれないけど、私でも出来ることあると思うんで…」

こう可愛い声で、少し首を傾げて、一生懸命に俺のために話す薫を見るとキスをしたくなるんだけど、恨めしいことにこの身長差なだけに、スッとキスが出来ない。
腰を屈めてと…その間に、薫に気付かれて阻止されてばかりだ。
薫は恥ずかしがりやだから、どうしてもこう道端とかでキスするのは嫌らしい。
手を繋いで帰れるようになるまでもかなりかかったくらいだからな。

「何かあるなら、話して下さいね」

一緒に帰りながら、そんな不埒なことを考えている俺に、薫は真剣に悩んでいることがあると思ったのだろう。
さっきから、一生懸命に話てくれる。
そんな優しいとこも、彼女のいいとこで、可愛い。
俺が何を考えているか、知ったらきっと真っ赤になって怒ること間違いなしだろうけど。
勿論、わかってて何を考えているか話すほどバカじゃないからね。

「うん、有難う。薫は優しいね」
「…先輩のほうが優しいです」
「そんなことないよ」

そんなことあるわけないよ。
今、こうして心配してくれてる君を見て、俺の頭は不埒なことで一杯なのだから。

「乾先輩」

あの日から、ずっと自分の身長を何とかする方法なんて下らないことを考えている。
今日も、部活に向かう途中の階段を降りながら考えていたら、上から可愛い彼女の声が降りてきた。

「薫」
「今から、部活ですか?」

俺を見つけて嬉しそうに駆け下りてくる君。
俺と君との段差が後1段の所で、手を伸ばして君の動きを止める俺。

「先輩?」

不思議そうな顔で俺を見る彼女に、微かに笑みを浮かべて

「好きだよ」

少し顔を傾げて、その柔らかい唇にキスを落とした。

Fin