女子マネ奮闘記 3



乾のデータノートの中には、個人のテニスについてのデータだけでなく、趣味や趣向。好きな食べ物なども書いてある。
そのノートに悪戯(落書き)をしたものが2名。
した後で、バッチリと乾に罰をもらったにもかかわらず、彼らはまた、より強大になった罰を与えられることになった。


その日、海堂は腕に大きな紙袋を持って、乾のマンションに向っていた。
中に入ってるものは、海堂曰く、乾の好物らしい。

「おはようございます」
「おはよう」

眠そうな乾の声に対し、海堂は嬉しそう。
朝から、ちょっと寝ぼけた感じの乾が可愛くて、ホエホエしている。

「どうしたの?」
「昨日、買い物に行ったら、先輩の好きな物があったので持ってきたんです」

どうぞと言われ、素直に家にあがる海堂。
相も変わらず、乾の家には誰もいない。

「俺の好きな物?」
「はい」

スタスタとリビングに向って、そのまま続きのキッチンに向う。
キッチンのテーブルにドンとその袋を置くと、乾がそっと中を窺う。

「…薫…これ…」
「ドリアンです。先輩、好きなんですよね」
「いや…好きってわけじゃ…」

海堂が袋からだしたものは、あの果物の王様と名高い、ドリアンだった。

「そうなんですか?でも、先輩のノートに…」
「ああ、あれは桃と英二が勝手に書いたんだよ」
「そうなんだ、すみません」
「いいよ、気にしなくて。興味はあるし」

目の前にある、ドリアン。
まだ、食べたことはないが、噂だけは聞いているその果物に、乾の好奇心が抑えられるはずはなくいそいそと乾はドリアンをキッチンへと運ぶ。

「匂い、きついと思うから。あれだったら、離れてて」

一緒についてきた海堂に、そう断りを入れて、乾は包丁でドリアンを切る。

「うっ…」
「これは、予想以上かも」

瞬間、襲った匂いに海堂はパタパタと窓を開け、乾も換気扇を動かす。

「スミマセン、私、こんなの買って…」
「味は美味しいかもしれないよ?」

少し切り取って、口にいれる乾。

「先輩?」
「……へぇ……」

モグモグと口を動かして、何事か考える乾。
海堂はハラハラしながらそれを眺める。

「これは…」
「え?」

ブツブツと呟く乾。
海堂はじっと不安そうに見つめる。

「薫、いいものを有難う」
「ええ?」
「そうか、こういうのもありだな…」

楽しそうに呟きながら、乾がドリアンを小刻みに切っていく。
訳が分からない海堂は唖然としながら、それを見つめていた。

「先輩?」
「ああ、ごめん。ほったらかしだったね」
「いえ、それは…」
「部屋行こうか?」

海堂が少し強めに乾を呼ぶ、それにようやく反応した乾が正気に戻る。
海堂をほって、自分の世界に没頭してたことに気付いて、乾はバタバタと慌てて片付ける。

「でも、アレは?」
「アレは、薫が帰ってからでも出来るから」

チュッと頬にキスをして、ちょっとムクレ気味の海堂を宥める。

「今は薫と色々したいな?」
「色々って?」
「取り敢えずは、イチャイチャかな」
「それは私もしたい」

ギュッと抱き締めて、囁くと、海堂が嬉しそうに擦り寄ってくる。

「後、たくさんキスしような」
「うん、キスは好き」

唇を触れ合わせて、嬉しそうに囁く。
そのまま、二人は乾の自室へ。

「で、メインはやっぱりね」

と、最後に乾は心の中だけで呟いていた。


そして、後日…

「ギャー」
「にゃに?にゃにコレ?」
「凄い、匂いだな…」
「乾、これは…」
「何を入れた?」
「先輩、匂いだけで死人でるっす」
「これは、いい匂いだね」

部活の時に出される恒例の汁シリーズ。
本日の汁は少し黄色っぽい、白っぽい飲み物。
見ためてきにはありかと思えど、既に悪臭を放つそれを、若干1名を除いて敬遠している。

「この匂いって…」
「流石、薫。そう、君がくれたドリアンだよ」
「あ、そっか。それで先輩…」

乾の言葉に、あの日、乾が何を考えていたのかわかって、ホッとした海堂。

「そこでホッとしにゃい」
「何てことしてくれたんだよ、この蛇オンナ」
「んだと…」
「薫は、桃と英二の落書き見て、俺の好物だと思って買ってきてくれたんだよ」
「じゃあ、桃と英二にコレに対して、怒る権利はないね」
「英二…」
「桃先輩、何てことをしてくれたんっすか」
「菊丸、桃城、責任を取って、全て飲め」
「「ええ〜!!」」
「あ、その前に、僕にも一口」

ズイっと出された、新しい汁。
先に不二が一口飲む。

「中々…新しい味だね」
「そうだろ。何と言っても、俺と薫の愛の結晶だからな」
「乾、先輩vv」
「そこ、キュンってなるとこちがう」
「乾先輩を暴走させんな」

乾の言葉に、瞳をウルウルさせる海堂に、素早く突っ込む、桃城と菊丸。

「早く飲め」

それすら切り捨てて、このコートに蔓延する匂いを絶とうとする手塚。

「ほら、部長命令だしな」
「美味しいよ」
「骨は拾ってあげますよ」

優しい、他のレギュラーの声の前に、菊丸と桃城は涙を流しながら、ソレを飲んだ。
過去最大の惨劇になったのは、言うまでもないだろう。

「薫、またいいのがあったら持ってきて」
「先輩が、望むなら」
「「「「「「持っていかなくていい」」」」」
「楽しみだな」

と、最後にはバカップルに真剣に突っ込むレギュラーがいた。

Fin