優しく、柔らかく、真綿で首を絞めるようにゆっくりと
彼は私を殺し
そして、私の全ては彼のためだけに創り直されていった…
「馴れ初め?」
「そうです」
部活終了後の部室。
着替えている途中の海堂に、それを聞いてきたのは一つ年下のスーパールーキー越前だった。
「突然、何?」
「別に…」
海堂と越前は同じ青学女子テニス部のレギュラー同士だが、二人とも無口であまり自らすすんで他人に関るようなタイプではないので、決して仲がいいとはいえなかった。
その越前にいきなり、上記のような質問されたために、海堂は面食らったような表情で越前を見つめる。
「越前はね、男テニの桃に告白されたんだよ」
「「不二先輩」」
理由もわからずに答える気はない海堂と、理由はいいたくないが話は聞きたい越前の無言の睨み合いが続く。
それを破るように、一体、どこでその情報を入手したのか、不二がひょっこり後ろから口を挟む。
「な、何で知ってるんですか?」
「内緒」
「へぇ、おチビちゃん、桃に告白されたのー?」
「き、菊丸先輩!?」
「そうなんだよ、それでね、返事はまだらしいよ」
「さすが、不二。よく知ってるね」
「それで、いきなりあんなこと聞いてきたの?」
途中から話に入ってきた菊丸。
この二人が入った時点で、海堂と越前はほぼ口を挟まなくなる。
まあ、この二人に限らず、不二・菊丸コンビが話し出したら、口を挟めることなど少なくなるのだが。
「で、どうなんですか?」
不二の話しで、突然の越前の質問の意味をようやく理解した海堂。
確認するように越前に声をかけてみるが、越前は恥ずかしいのだろう、顔を微かに赤くしながらぶっきらぼうに聞いてくる。
「どうって言われても…」
理由はわかったからか、海堂は少し考える風に瞳を揺らめかせる。
「付き合ってるんでしょ、乾先輩と?」
訊ねてくる越前に、海堂は困ったように眉を寄せて、目を伏せる。
話し続けていた不二と菊丸の、話を止め、成り行きを見守る。
「…付き合ってない」
ボソッと小さな呟きが、知らない間にこの四人しかいなくなった部室に響き渡る。
「私と乾先輩は、恋人じゃないから」
「でも、一緒に帰るし、泊まったりもしてるんですよね?」
海堂の体に残る、紅の刻印を見ながら越前が問いかける。
海堂自身がそれを隠す気もないから、乾と海堂の仲はテニス部では公認になっていた。
なのにだ、そのれを見ても二人がそういう関係だとわかるのに、海堂は付き合ってないと言う。
越前でなくても、不思議に思っても無理はない。
「私は、乾先輩の所有物だけど、恋人じゃない」
「「「……」」」
パタンとロッカーが閉まる音が響く。
海堂の言葉に、声をなくしたように口を閉ざす三人。
「答えたから。お先、失礼します」
話しながらも着替え、片づけをし終えていた海堂は、言い終えたとばかりに、三人に挨拶をして部室を出ていった。
「…どういう意味ですか?」
「色々あるの」
「人それぞれに、色んな付き合いかたがあるの」
海堂が出ていったドアを見ながら、越前は不思議どうに二人に聞くが、二人とも哀しそうに、切なそうに呟いただけだった。
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