「無茶はするなよ」
口癖のように、心配してることがとてもよくわかる声音で、いつも呟かれる言葉。
いつも「まだいける」そう思い、言われたメニュー以上のことをこなそうとすると、頭に浮かぶ言葉。
そして…響く、声。
「チッ…」
頭を振って、打ち消そうとすればするほど、その声はより強く心を揺さ振って…
結局、いつも俺は、あの人の言う通りにしてしまう。
ずっと一人でいたのに、一人でいいと思っていたのに…
いつのまにか、自分の全てはあの人に向かっていて、体も心も全てを支配されていた。
悔しいのに、あんな奴って思うのに、それでもいいと思っている自分がいる。
本当に自分はどうしてしまったんだろう。
他人を自分のテリトリーに入れたりすることなんて、あるはずがないと思っていたのに、こんな簡単に自分の奥深くまで許してしまうなんて。
これ程、誰かに心を奪われてしまうなんて…
気が付けば、いつでも彼のことばかり考えていて…
傍にいない時まで…
「人を支配してんじゃねェよ」
悔しまぎれに、誰もいない公園ではき捨てるように声をだす。
「何のこと?」
すると、誰もいなかったはずなのに、背後から楽しそうな声が返ってきた。
いつの間に…
聞き覚えがあるどころか、つい先程まで頭に響いていた声に、またかという思いと、苛立ちがつのる。
「気配消して近づくなって言ってんだろ」
先輩である彼に対して、つい敬語が抜けてしまうのもいつものことで、キッと睨んでも、この人は怯むことも、怒ることもなく、ただ笑っているだけ。
そう、それだっていつものことだ。
「別に気配消してるつもりじゃなかったんだけどなぁ」
苦笑を浮かべて呟くそれもいつもと同じで
「足音だってしてないじゃないっスか」
そう口を尖らせて、膨れた声で反論してしまうのも、いつも通りだった。
「そうか?そりゃ悪かった。以後、気を付けるよ」
「いつもそう言って、直ってないじないっスか?」
少しも悪いと思っていない声に、この後の行動を予測して、いつも口にする言葉を返す。
「今度はちゃんと気をつけるって」
苦笑を浮かべて、俺の頬に手を添えて、心持ち上向きにさせられる。
「どうだか…」
いつもと同じように近付いてくる彼に向かって、呆れたように呟いて、この人の意に沿うようにそっと瞳を閉じた。
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