Stage Debut  青学三強編



青春学園では、学校行事の中に、生徒会主催の行事もある。
その生徒会主催の行事はいつも学生たちが欲しがるような物が豪華商品として出されている為、毎年、異様な盛り上がりを見せていた。
今回は、その行事の一つ、舞台発表会が行われる。


舞台発表会の日時や、募集要項・商品が発表された日の昼休み。
騒がしい校内に、校内放送の音が鳴り響く。
次いで、この学校一番の権力者・生徒会長の声が響く。

「3年1組、手塚 国光・3年6組、不二 周助・3年11組 乾 貞治。至急、生徒会室に来るように」

用件を言い終えたと同時に、校内放送の終わりを告げる音が鳴る。
そして、名前を呼ばれた三人は、

「行きたくないな…」

そう呟きながら、教室を後にした。
生徒会室に行く途中、偶然顔を合わした三人は、

「「「…嫌な予感がする」」」

綺麗にハモッて溜息を吐いた。


トントン
「失礼します」

形通りの礼儀を通して、三人が生徒会室に入る。

「で、何のようだ」

生徒会室のソファに手塚を真ん中にして座る三強。
向かいのソファに生徒会長が座る。
用件を切り出した手塚に、彼女はまあまあと余裕の笑みで構える。

「今度の舞台発表会のことだが…」

ゆったりと才女の顔に笑みが浮かぶ。

「生徒会からも劇をすることにした」
「それで…」

一抹の不安を胸に、乾が促す。

「それでだな、お前たちにも出てもらいたいんだが」

スッと書類を三人の前に差し出す。
そこにはテニス部の部費10%upと学食タダ券1ヶ月分プレゼントと書かれていた。

「どうする?」

不二が横の手塚を見る。

「断る」

即決する手塚に、生徒会長は

「もう一つ、あるんだが…」

そういって、三つの封筒を取り出した。
それをそれぞれが貰って、封を開く。

「どうだ?今のにそれも付けたものだ」
「「「……」」」

封筒の中身を見ながら。三人ともしばし逡巡する。

「…部費、20%upだな」

部費の部分を指しながら、乾が呟く。

「15%だ」

乾の言葉に、即座に切り返す会長。
三人顔を見合わせて、

「引き受ければいいんだろう」
「やってもいいよ」
「前取引ということで」

貰った封筒をポケットにしまう。

「商談成立だな」

三人を見て、あでやかに笑った。


数日後、脚本が出来たとのことで、生徒会室に赴く三人。
脚本とともに役柄を教えられる。

「「「…シンデレラ?」」」

渡された脚本に書かれていた題目、三人一様に不思議そうに呟く。

「そうだ。配役は不二にシンデレラを…」

楽しそうに知的な瞳を細めて伝える会長。

「手塚は王子役で、乾は…」
「おい、高階」

順番に配役を教えられ、乾の番になったとき、乾が生徒会長の名前を呼ぶ。

「なんだ?」
「お前、何を企んでるんだ?」

おおよそ自分にくるであろう配役を予想して、問いただす。
どうあっても、普通のシンデレラにはなりそうにない。
三人に劇をさせようとした、高階生徒会長。
彼女が選んだ劇がシンデレラ…
主要人物に選ばれた三人、うち二人まで配役が決まり、最後の一人。
残ってる役の中で重要な役と言えば…

「いい勘してるな、乾。お前は魔法使い役で出てもらうからな」
「やっぱり」
「中味については、読めばわかる」

彼女の言葉に従って、台本を読み始める三人。

「「「……」」」

途中から、段々と表情が変わっていくのを見つめながら、笑う生徒会長。

「…この話、なかったことにしてもらおう」

読み終えた手塚の第一声がこれ。

「こんなの、発表して問題ないのか?」

思わず聞いてしまう乾に、

「いくら何でもこの役は…」

不二も硬い表情で話す。

「もう遅い」

そんな三人に対して、生徒会長は不適な笑みを漏らす。

「既に、ポスターを貼っておいた」

舞台発表会のそれぞれの演目と出る生徒の名前を書いたポスターを目の前に突きつけられる。
その中には、生徒会主催の部分に演目「シンデレラ」出演生徒「手塚・不二・乾」と書かれていた。

「因みに、当日諸先生方は講堂には来られない。全てをこの生徒会に一任してもらっている。今回は、ゆっくりと先生方にも休んで頂こうと思ってな」
「お前、これがしたいだけのために、先生まで買収したのか…」

会長の言葉に乾があきれたような声を出す。

「人聞きの悪い。私は先生方の心労を減らそうと思っただけだ」

言い切る生徒会長に、三人の目は冷たい。

「ということで、頑張って貰うぞ。お前たちの後輩も頑張るみたいだしな」

ポスターの下のほう、演劇部主催と書いた項目のところを指す、会長。
三人の目がそこに集まる。

「題目、親指姫と白雪姫…」

不二が書いてあることを言えば、

「出演、桃城・海堂・越前…」

続きを引き取って乾が声を出す。

「あいつら…」

一体、何で買収されたんだ?
後輩レギュラーの三人の名前に、青学三強は顔を見合わせる。
演劇部部長の性格を思い出し、溜息を吐く。
あいつらも可哀そうに…
この生徒会長に負けず劣らず、いい性格の演劇部部長に捕まれば、いくらあの三人でも逃げるのは困難だろう。

「…配役が予想できるのが怖いね」

二つある姫の名前。
主要メンバーは三人……

「内容如何によっては、桃、殺されるかも」

横にいる乾を見て、クスッと笑う不二。
哀れな後輩に心の中で、、合掌を先にしてあげる。

「勝手に、人のもんに手を出すもんじゃないな…」

ポスターを眺めながら不適な笑みを漏らす乾。

「…ほどほどにな」

乾の様子に手塚が声をかける。
止める気は全然ないらしい。

「さて、諸君。練習を開始したいのだが結構かな?」

不穏な乾の様子に怯えることなく、生徒会長が声を発する。
既に逃げ道を立たれた彼らは、諦めたように頷く。
こうなったら、絶対に優勝してやる。
あまりにもな内容に、これで優勝すら出来なくては自分の恥以外の何物でもない流れに、三人はひっそりと燃えていた。


舞台発表会まで、後一ヶ月
桃城、演劇部部長に命はあるのだろうか……
以下、次号(笑)

Fin