Stage Debut  1.2年トリオ編



青学三強と呼ばれる三人が、生徒会室へと向かっていた頃、
2年・1年のそれぞれの教室でその放送を聞いていた、海堂・桃城・越前の三人は演劇部員たちに拉致されていた。
同級生数人にズルズルと抵抗しながらも連れてこられたのは演劇部部室。
三人揃って差し出された先は、演劇部部長のお膝元。
生徒会長とは正反対の可愛い感じの少女だが、中味は彼女に負けず劣らずいい性格の生徒会長の親友だった。

「…何なんすか?」

不機嫌に呟く越前とは対照的に、桃城は目の前の可愛らしい演劇部部長に

「俺に何か?」

と、かっこつけている。
そして、海堂は

「…傍島先輩、何させる気ですか?」

生徒会長と演劇部部長。
実はこの二人、乾のクラスメートであり、海堂の良く知る人であった。
乾の傍にいるうちに知り合いになったこの先輩が、見た目と違いかなり乾や生徒会長・不二などと並べることの出来る性格であることを海堂はよく知っていた。

「いい勘してるね、海堂君」

おっとりと可愛い声で話す傍島に、海堂は嫌な予感がした。

「あのね、今度の舞台発表会に、三人で出てもらいらいんだけど?」

首を傾げてダメと聞いてくる姿は、おおよそ年上とは思えないくらいに可愛いもので、

「頑張らせていただきます」

俄然張り切る桃城に、越前・海堂は嫌そうな顔。
勿論、それに気づいた演劇部部長様は

「越前君、出てくれたらファンタ1ヶ月分プレゼント」

ニッコリと不二と通ずる笑顔を浮かべた。

「…毎日っすよ」
「勿論よ」

ファンタ1ヶ月分に買収された越前。
残る海堂は

「俺は、遠慮します」

そそくさと逃げようとするところを、傍島に捕まえられる。

「ダーメ。海堂君が出てくれるなら、これあげるんだけど?」

スッと封筒を取り出して、海堂に差し出す。

「何すか?」
「あけて見ればわかるよ」

ニコニコと言われて、恐る恐る封を開く。

「どう?欲しいでしょ」

海堂の表情を読みながら、訊ねてくる傍島。

「欲しいっす」

それを一枚、一枚確認する海堂。

「じゃあ、出てくれるよね」

ギュッとそれを握り締める海堂を見て、楽しそうに笑う。

「…ハイ…」

少し考えて、承諾した。


それからしばらくして、また演劇部から要請のあった三人は部室へと足を運ぶ。

「待ってたよ」

ニパッと三人を出迎えたのは、やはり演劇部部長で、

「台本が出来たのvv」

と、彼女から渡されたそれを見る。

「何スカ?これ?」

思わず零した呟きは、誰のものだったが忘れたが、間違いなく三人同様の気持ちだった。

「海堂君と越前君で、桃城君を取り合うっていうお話vv」

ニコニコと話す傍島に、

「「冗談じゃない!!」」

本気で怒鳴る越前・海堂。

「じゃあ、俺が王子様っすか?」

かたや桃城は嬉しそうだ。

「桃君がお姫様じゃ怖いでしょ?」

ニコニコととんでもなことをいう先輩に、深い溜息をつく三人。

「「やっぱ、この話はなかったことに…」」

姫役にあたった二人は、殊更嫌そうに口を開く。
いくらなんでも、ファンタ一ヶ月分で女装は安すぎるとは、越前談。
そんなのしたら、乾先輩にどう思われるかと、乾を気にするのは海堂。
どう考えても割りに合わないと逃げる二人に、

「越前君、出てくれたらファンタ2ヶ月分」

にこやかに口を開く傍島にしばし逡巡する越前。
そして…

「仕方ないね」

くるっと部室に戻っていった。

「で、海堂君」

ニッコリと笑って近づいてくるさまは、不二先輩を思い出すソレで…

「嫌ですよ。乾先輩が嫌がることはしないんです」

逃げ切るために、乾の名前を出すことにした。
まあ、実際のところ、これが原因で別れるなんてことになったら、哀しいので。

「大丈夫よ。乾君が怒るようなことはしないから」

私だって、彼を本気で怒らせるような真似はしないよ?
と暢気に言ってくる。
言い方から察するに、乾が本気で怒ったのを見たことがあるようだ。

「それから、もし出てくれるなら、前のにコレも追加しちゃう」

新たに出された封筒の中を見る。

「…コレ…」

中を見て驚く海堂に

「限定品よ。しかもレアものなんだからvv」

得意そうに傍島が説明する。

「出てくれるよね?」

海堂の顔色を窺いながら、確信を持って話しかける傍島に

「…本当に、乾先輩怒らせないっすね」
「勿論、私だって命は惜しいもの」

念を押して、演劇部部室へと戻っていった。


「目指すは優勝」
「おーっ」

傍島の声に同意する桃城。
後の二人は、少々うんざり顔。
台本を何度も読み返させられて、台詞を覚えるのに四苦八苦。
まあ、内容はまだましだったし、案外、姫のが美味しいのでいいかと腹を括ったけど。

「あっ、そう言えば、ポスター見た?」

騒ぐ桃城と演劇部部員たちを無視して黙々と台本を読む二人に、傍島が声をかける。

「ライバルは、テニス部三年たちだけど、頑張ろうね」

そう言われて、彼女の出したポスターに目を遣る。
そこには、

「題目:シンデレラ」
「出演:手塚・不二・乾…」

なるほどと、三人は納得する。
いつかの日に、あの三人が生徒会室に呼ばれていたのはこのせいかと。
それにしても、

(((シンデレラ?もしかして、不二先輩……?)))

怖い考えが胸をよぎり、一同沈黙する。

(((深く考えないでおこう)))

波乱含みになりそうな、舞台発表会に三人は溜息をつかずにいれなかった。


何とか、桃城の命は保たれそうだった。

Fin