「ふぅっ…んんっ…」
静かな部屋に、濡れた音と、甘くくぐもった声だけが響き渡る。
「もっ…ぅ…」
執拗に口内を蹂躙してくる男の胸を押す。
「いい加減、しつけーんだよ」
ようやく離した男を、潤んだ瞳で睨みつける。
「でも、よかったでしょ?」
が、相手はそんなことお構いなしに、しれっとした顔でとんでもないことを言い出す。
「最悪…」
けっと言い放って、横を向くと、乾の手が伸びてくる。
「かわいくないねぇ」
口元を歪めて笑いながら、海堂の頬を包んで自分のほうに向ける。
「…あんた、上手すぎ」
ムスッとした顔で呟く海堂に。
「へぇ…、誰と比べてるのかな?」
と、嫌な笑みを浮かべて聞いてくる。
「…いるか、バカ」
ムカツクと足をあげて蹴り上げようとするが、難なく捕まえられてしまう。
「ったく、乱暴なんだから」
捕まえた海堂の足を口元にもっていき、足の甲に口付ける。
「なっ、何すんだよ」
乾の行動に驚いて、離せと足をバタつかせる。
「嫌だね」
暴れる海堂の足をしっかり固定して、そのまま足の爪にも口付けていく。
「先輩!!」
足を持ち上げられて、海堂は自然とソファに寝転ぶ形になり、乾のしていることが真正面で見えてしまう。
羞恥に顔を紅く染めながら、抗議するが無視される。
足の爪の一本一本に唇をつけた後、足の甲に舌を這わせる。
「やっ…」
ビクッと海堂は体を震わせる。
「感じた?」
「誰が」
やっと解放された足を降ろして、体を起こすと、今度は腕を乾に捕まえられる。
「本当に?」
腰に腕をまわし、引き寄せる。
耳元で囁き、耳朶を食む。
「っぁ…」
そのまま耳の裏に舌を這わせると、海堂の口から微かな声が吐息と共に漏れる。
「やめっ…」
耳から首へと伝い落ちてくる唇をどけようと、体を捩る。
そのさい、片腕が自由になり、その腕で乾の襟首を掴んで引っ張る。
グッと服に引っ張られ、首に引っかかった状況に、渋々、乾は顔をどける。
「…お前ねぇ…」
首を摩りながら、海堂を見遣る。
「キスだけって言っただろ」
同情の余地なしとばかりに切り捨てる。
「今のもキスだろ」
しれっと言い返すと、海堂の視線がきつくなる。
「…帰りますよ」
乾の腕の中から抜け出して、立ち上がろうとする海堂を、乾は慌てて止める。
「俺が悪かったです」
ゴメンナサイと反省の色を示して大人しくなる乾を見て、海堂は微かに笑みを漏らす。
「仕方ねぇな」
乾の足の間に片足を膝折に置いて、乾の首に腕を回す。
乾の前に膝立ちになって、自分から乾の唇に自分のソレを押し付ける。
舌で乾の唇をなぞって、促す。
積極的な海堂に驚きながらも、乾は素直に口を開く。
海堂の舌が忍び込んでくる前に、海堂の口内に舌を差し入れる。
「うっ、ん…」
侵入してきた舌に口蓋を舐められ、背筋にビリッとした感覚が走り抜ける。
「ふっ…、ぅ…っ」
乾の舌が入ってきた驚きに奥に隠れた海堂の舌を見つけて、乾の舌がツンツンとつつく。
おずおずと差し出された舌を絡めて、味わうと、海堂の口から鼻に抜ける甘い吐息が抜ける。
深く口内を犯されて、次第に海堂の体の力が抜ける。
ズルッとソファから落ちそうになる海堂の体を、海堂の腰に腕を回して支える。
「はぁ…、っ…」
思う様に海堂の口内を味わって、乾の唇が離れて行く。
離れる前、乾の舌が海堂の上唇をスルッと舐め上げて、海堂の体がブルッと震える。
「なあ、本当にキスだけ?」
キスの余韻に酔いしれている、海堂を見上げて問う。
「俺としては、それ以上もしたいんだけど」
腰にまわしている手をスルリと服の中に入れると、パシッとはたかれる。
「キスだけ…」
息を整えて、海堂が答える。
その答えに、乾が不満そうな顔をする。
「その代わり、キスだけでその気にさせれたら、いいっすよ」
それ以上、しても…
乾の目の前で悪戯っぽい笑みを向けて呟いた後、最後の言葉を耳元で、聞き取れるかどうかの音で囁く。
「後悔すんなよ」
海堂の言葉に、ニヤッと笑って乾が海堂の手を取る。
「……?」
不思議そうに顔を上げて見下ろしてくる海堂の前で、乾は海堂の手の平に舌を這わす。
「それは、キスじゃないでしょう」
思わず漏れそうになった声を殺して、不満を零す。
「これもキスの一種です」
どこまでほんとなのかわからないことを呟いて、乾は手の指と指の間にも舌を這わし、丁寧に舐めていく。
見せ付けられるように指を一本一本、丹念に舐められていく様と、それがもたらす奇妙な感覚に、息が上がっていくのを海堂は押さえる。
綺麗に舐めあげた後、乾はもう片方の手も、同じように舌を這わし、丁寧に舐めあげていく。
海堂が視線を逸らすことのないように、視線だけは海堂に向けた状態で。
「…っ先輩…」
乾に見つめられて、そこから目を逸らせない海堂の息が、熱いものへと変化していく。
吐息と共に吐き出された声は、艶を怯えていて、乾は満足そうに目を細める。
チュッと音を立てて、海堂の手の甲に口付ける。
「…跡…つけんな…」
ピリッとした痛みに、顔顰めて海堂が呟く。
「もう遅い」
それに乾が返事を返して、手の甲に散った紅い跡を海堂に見せる。
「どうすんだよ、それ」
手の甲につけられたキスマークに海堂の眉が寄る。
「絆創膏でも貼るしかないだろうね」
「…ぁっ…」
言葉を発したと同時に、その跡の上を乾の舌が辿る。
その感触に、海堂が小さな声を漏らす。
「どう?」
上気して紅く染まる頬。
熱く潤んだ瞳。
艶の混ざった吐息を漏らす唇。
その全てが、乾の問いの答えになっているのは一目瞭然だが、中々、強情な彼の恋人は、
「まだ…」
と、首を横に振る。
「早く、素直になったほうが賢明だと思うけど」
その姿にやれやれと苦笑を浮かべる。
「まだ、全然足りねぇ…」
艶のある笑みを浮かべて、海堂が囁く。
「もっと…」
もっと、たくさんのキスを…
熱く、体が溶けるほどの情熱的な、
最上級のキスを……
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