ケーキ  <クリスマス25のお題 04>



青学テニス部レギュラー陣でクリスマスパーティをやることになった。
それぞれ担当もわけて、その日に向けて準備をする必要がある。

「ふむ…」
「何のケーキにするんっすか?」

3年レギュラー乾 貞治及び2年レギュラー海堂 薫の担当はケーキ。
それも、何故か手作りケーキという有難くない前置詞までつけられていた。
仕方ないので、二人は現在、海堂母から借りたケーキの本を覗き込んでいた。

「…海堂はどれがいい?」

若干、甘いものが苦手な乾ははっきりいってケーキ自体にそれほど興味を惹かれない。
作る過程における、隠し味で何処まで美味しくなるかなどのデーターには強く惹かれるらしいが…

「俺は、別に何でも…作りやすそうなのなら…」
「ま、それが大前提だけどね」
「っす」

対して海堂は、見た目に反してそれなりに甘党。
だが、ケーキは母お手製のものを毎年、家族それぞれの誕生日にクリスマスと最低でも年に5回は違う種類のものを食べているので、あまりどれがいいとかいうのがない。
それに、出されたケーキを食べているので、どれが何と言うケーキなのかが全くわかっていなかった。

「仕方ない、他の連中にも聞いてみるか」
「っす」

そういうことで、乾と海堂が残りのレギュラーに希望を聞きに…

「手塚、クリスマスケーキなんだけどな、希望はあるか?」
「…お前の愛がこもっていれば…」
「聞くだけ無駄だったな」
「乾先輩の中に部長への愛なんか、これっぽっちもないっす」
「甘いぞ、海堂。乾は照れているだけで俺への愛で一杯なんだ」
「いや、それは絶対にないから」

まずは部長の手塚。
……話にならない所か、海堂と睨み合いになってしまい少しも役に立たなかった。
やはり、手塚はテニス以外では無能。

「不二、クリスマスのケーキなんだけどな」
「あ、乾。丁度よかったよ。これ、あげる」
「カプサイシン?」
「これで美味しいケーキ作ってね」
「ケーキに入れるんっすか?」
「勿論、じゃあ楽しみにしてるよ」
「……乾先輩?」
「仕方ない。不二のだけ別で小さいホールのケーキ作るか」
「っすね」

次に不二。
……いきなり貰ったプレゼントと開眼付きの笑顔に、乾も海堂も心の中で涙を流していた。
不二に聞くだけ、自分が損するということを身を持って実感した二人だった。

「大石、クリスマスのケーキなんだけど、希望はないか?」
「俺かー、そうだな。うちはいつも生クリームのやつだから、実はチョコデコレージョンにちょっと憧れてたりしてるんだけど」
「そうか、大石はチョコ希望と…」
「あ、でも、別に俺は他のでも平気だから」
「っす」
「ああ、まあ何になるかは当日を楽しみにしててくれ」
「ああ、二人とも無理せずにな」
「どもっす」

今度は大石。
……普通に出された希望と、心優しい気遣いに、前の二人で疲れていた乾と海堂はすっかり癒されていた。
大石はやっぱり青学の母だった。

「菊丸、クリスマスケーキの希望を聞いてるんだけどな」
「俺ねー、ふわふわ生クリームのイチゴが一杯乗ったケーキがいいにゃ」
「定番だな」
「ふわふわクリームだよ、ふっわふわの」
「そんなに言うんなら、自分で作って下さいよ」
「何だよー薫ちゃんの意地悪」
「まあまあ、一応、参考にしとくから」
「ふわふわでイチゴたっぷりねー」
「だから、参考にするって…」

続いて菊丸。
……半端に細かく出された注文に不機嫌になる海堂と、苦笑する乾。
菊丸はやはり擬音が好きなようだ。

「河村、クリスマスケーキの希望を聞いてまわってるんだけどな」
「ケーキかー、俺って普通のしか食べたことなくてさー、前に不二の家でパイとかタルトとか食べさせてもらって、あれが物凄い美味しかったんだよね」
「河村はパイとかタルト希望と…」
「うん。でも、あれはまた不二が食べさせてくれるって言ってたから、別に何でもいいから」
「不二先輩、河村先輩にだけは優しいっすね」
「そんなことないよ。不二は誰にでも優しいよ」
「河村、騙されてるな…」
「っすね」

そして、河村。
……希望の物よりも、それを選んだ理由にいらない言葉をつけてしまった乾と海堂の脳裡に不二の開眼が思い浮かんでいた。
河村はやはりオアシスなのだろう。

「桃城、クリスマスのケーキなんだが…」
「先輩、このバカに聞く必要はねーっす」
「あ?んだよ、マムシ。いきなり喧嘩ふっかけてくるたぁいい度胸じゃねーか」
「まあまあ、二人とも。野菜汁飲むか?」
「「遠慮するっす」」
「よし、じゃあ大人しくな。で、桃城ケーキの希望はあるか」
「俺、チーズケーキがいいっす」
「また、珍しい選択だな」
「俺、今ハマってるんですよー」
「そうか、わかった。桃城はチーズケーキと」
「そんなもん、ぜってー作らねー」
「そんんもんだとー、チーズケーキをバカにすんなよ」
「バカにしてるんじゃなくて、桃城の希望を聞く気がないと言ってるだけなんだろうけど…」

学年を下げて、桃城。
……やっぱり喧嘩に発展する、2年コンビに乾が強力な武器を手に黙らせる。
桃城と海堂を一緒にする時は、河村か大石を付属でつけるべし。

「越前、希望のクリスマスケーキはあるか?」
「ムースのやつがいいっす。ラズベリーの」
「そうか、越前はムースと」
「間違っても、汁はいらないっす」
「その為に、俺もケーキ担当なんだろうが」
「期待してるっすよ、海堂先輩」
「ふん、俺だって嫌だからな」
「本人の目の前で、遠慮がないな」
「「それだけ嫌ってことっす」」

最後に越前。
……生意気王子は、希望がどうよりも絶対に嫌なもののほうが強いらしい。
越前に先輩を敬うという感情は全く持ってなく、また、育たなかったようだ。

「見事にバラバラだな」
「どうするんっすか?」
「不二は、専用のを作る」
「それに異論はないっす」
「後は、残りの面子の分だな…」
「誰のを選んでも、苦情きそうっす」
「来るな。そうなると、全く誰も選択しなかったものか…」
「それじゃ、聞いてまわった意味ないっす」
「はぁ、何でこううちはまとまりがないんだ」
「それ以前の問題の人もいたような気がするっす」

全員の話を聞き終えて戻ってきた乾と海堂。
テーブルの上に置かれたノートに書かれた、バラバラの希望。
それを眺めながら、疲れたような溜息を吐き続ける乾と海堂。

「面倒になってきた。クジにでもして決めるか」
「っす」

考えるのすら放棄したようで、結局、希望のケーキを1枚ずつ紙に書いて引くことにしたようだ。
そして、その結果は……

「それは、まあ」
「当日までのお楽しみ…」
「ってことっす」
「てことで」

な、らしい。

Fin