「「「部長を何とかしてください!!」」」
1.2年レギュラー3人が訴えにかかった相手は乾。
唯一、手塚を止められる存在だからだ。
「と言われてもな、手塚のボケは今に始まったことじゃないし…」
「だからって、ちょっと九州に行ってる間に、人の名前をすっかり忘れなくてもいいじゃないですか!!」
困ったように話す乾に、思わず大声を出してしまうのは桃城。
他の2人も後ろでウンウンと頷いている。
「いくら後輩だからって、酷いっす」
「……アレさえ何とかしてもらえれば……」
「あれ?」
「あのワンコとかニャンコとかってやつですよ」
「ああ、あれね…」
3人の一番の悩みは、忘れた名前の変わりに呼ばれるあだ名だった。
よりにもよって、ワンコとニャンコとウサピョンはなかろう。
「あの部長が、言ってるかと思うと……」
「呼ばれることより、呼んでる人間が問題か?」
「呼ばれるのも問題っす」
「でもな……」
「何か、問題でも?」
今、4人がいるのは部室だ。
その部室の開け放たれたドアから見えるコートに視線を向け、乾が困ったように呟く。
「…何も、忘れたのはお前たちの名前だけではないってことだ…」
「「「え?」」」
「ほら…」
おもむろにコートに向かって歩き出す乾。
3人は訳が分からないままに、後についていく。
コートには、残りのレギュラー陣が勢ぞろいしていた。
大石は菊丸と、河村は不二とそれぞれ、これから始めるダブルスの練習のために相談していた。
「手塚、そろそろ時間じゃないか」
「乾。そうだな…ではダブルスの練習試合を始める」
乾が手塚に何事もなく、声をかける。
何故か、嫌な予感がして、ハラハラとそれを見守る後輩たち。
そして、彼らの予感は嫌なことに当たってしまった。
「……さわやかタマゴ、わがまま猫ペア……」
「手塚、さわやかタマゴってもしかして、俺のこと?」
「にゃんだよ、そのわがまま猫ってー!!」
いきなりの手塚の言葉に、ガックリと項垂れる大石と、キーッと憤慨する菊丸。
「それと……寿司屋と悪魔のペア…」
「す、寿司屋……手塚ー、それは家の職業だから…」
「悪魔…ねぇ、手塚、それってもしかして僕のこと言ってる?」
そして、続けられた言葉に、河村は情けなさそうに眉を下げ、不二は…それはもうこの世のものとも思えない、開眼付き微笑みで、手塚を見据えていた。
「……い、乾先輩……」
「なっ」
「なっ、じゃないです。どうするんですか!!」
「う〜ん、とりあえず部活どころじゃないから、安全圏に避難してデーターでも取るか」
「「「そういう問題じゃないです!!」」」
乾を覗く3年レギュラーも見せる、地獄絵図に恐怖を感じる乾以外のテニス部員。
全て知っていた乾は何食わぬ顔でコートを出て安全な場所へと避難して、いそいそとノートを取り出し、データー集めに余念がない。
何で、こんなデーターが必要かはこの際、隅に置いておく。
「何でだ?」
「何でって…」
「先輩…可愛いっす!!」
「海堂先輩、絶対に可笑しいっす」
そんな乾の言動・行動に突っ込む3人は乾は不思議そうに首を傾げる。
それに唖然とする桃城、その乾の姿にうっかり鼻血と吹きそうになって鼻を押さえて真っ赤になる海堂。
そして、そんな海堂に冷静に突っ込む越前だった。
「それより、これでお前たちの悩みも解消されるな」
「は?」
「こうなったら不二が意地でも、名前を思い出させるだろうからさ」
「……こんな方法は遠慮したかったっす」
「もう少し、マシな方法を考えて下さい」
「考えろと言われても、手塚が忘れるのは俺にはどうしようもないからな」
事も無げに言う乾に、後輩レギュラーたちはガックリと肩を落とすしか出来なかった。
どうなる、テニス部!?明日はあるのか??
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