眼精疲労



「頭痛い…」

部活中、ベンチに座ってノートを書いていた乾が呟く。

「何だか、目もまわってきたかも…」

ノートから視線をあげると、頭の中がグルグルした感覚に襲われる。

「…寝てんのか?」

眼鏡を外し、目を押さえる乾に声をかけたのは、海堂で、どことなく不機嫌そうな声と言葉に、乾は苦笑を漏らした。

「…今度は何だ?ゲームかパソコンか?」

苦笑を肯定ととった海堂は、乾の横に座り睨みつける。
乾は、何かにハマると飽きるまで何時間・何日でもそれの集中してしまうという、やっかいな癖がある。
しかも、集中しすぎて、食べるのや寝ることを忘れてしまうこともあるのだ。

「いや、今は本」

言葉とともに、下がる気温。
言ってから、乾はまずいと思った。

「続き物を買うときは、絶対に休みの前にしろって言っただろう」
「ごめんなさい」

きつい視線で睨まれて、乾は素直に謝る。

「大体、一気に読まなくても暇をみつけて読みゃいいんもんだろう」
「…気になるし…」
「それで、自分の体壊してどうすんですか?」
「……」

乾の体を本気で心配して怒ってることを乾は理解しているので、何も言うことが出来ない。

「…で、もう終わったんっすか?」

大人しく、耳の垂れ下がったような大型犬のような乾に、海堂は思わず可愛いとか思って、怒りも消えうせてしまった。

「……」
「後、何冊残ってるんっすか?」
「…10冊かな?」
「読む気じゃないでしょうね?」
「……」

海堂の言葉に黙秘を決め込む乾。
けれど、それがそうするつもりだと答えているようなもので…

「今日、先輩ん家に泊まりますから」
「えっ」
「あんたが寝るまで、見張っててやるからな」
「え〜と…」
「俺がいるのに、本ばっか読んでみろ。速攻で、別れてやる」

海堂の言葉に項垂れる乾。
今日は、続きを読むのを断念せざるをえないようだ。
そうしないと、この恋人は本気で別れる。
身をもって、それを知っている乾だった。

「先輩、頭」

その日の夜、乾の家
ベッドに腰掛けた海堂が、自分の膝を叩いて乾の頭をそこに促す。

「視力弱いくせに、目を酷使しすぎなんだよ」

素直に頭を置いてきた乾から、眼鏡を外し、目をマッサージする。

「気持ちいいな」
「あんたの偏頭痛や、めまいは寝不足や栄養失調に、眼精疲労ってとこが原因だろ」
「…ごめん」
「もう少し、自分を労われよ」
「努力してみます…」
「必要ねぇよ。あんたの場合、するだけ無駄だろうし」
「……」
「あんたがしない分、俺があんたの体を労わってやる」
「海堂」
「俺が無茶なことする度に、あんたが止めてくれるように、俺もあんたが無茶したら止める」
「有難う」
「違う」
「何が?」
「こういうときは、お互い様って言うんだ」
「じゃあ、お互いさまってことで、今日はたっぷりと労わってもらおうかな」
「まかせとけ」

Fin