休日の過ごし方 2



「どこ行ってたの?」

河村の家へと向かう道すがら、不二が親睦会の様子を聞いてみる。

「ボーリングっす」

得意そうに答える桃城に、

「桃先輩、弱いんすよ」

追い討ちをかけるように越前が呟く。

「桃が一番負けて、皆にボーリング代奢ることになったんだよな」
「へえ、桃って金持ちなんだね」

不二が笑顔で言うと、桃城は思いっきり首を横に振った。

「んなわけないでしょう。おかげで、財布ん中スッカラカンすよ」

とほほ…と項垂れる桃城に、一同、苦笑を漏らす。

「じゃあ、誰が一番だったの?」

不二が訊ねると、堀尾が

「それがね、海堂先輩だったんすよ。いやあ、海堂先輩がボーリング出来るなんて思ってもみなっかったすから…」

延々と、いらないことまで説明して、横から加藤・水野の二人に止められていた。

「でも、ほんと海堂先輩上手かったんですよ」
「…テニス以外はからっきしだと思ってたのによ〜」

中々の成績だったらしい海堂に、愚痴るメンバーと褒めるメンバー。
結局、ボーリングでは海堂の一人勝ちだったらしく、1年から尊敬されてたらしい。

(何で海堂ばっかり…)

3年に可愛がられ、1年に尊敬されるんだと、理不尽な怒りに密かに燃えていた2年一般部員。
桃城は純粋に、海堂にボロまけしたことが悔しかったようだ。

(俺らだって、可愛がられたいし、尊敬されたい)

彼らにとって本日の親睦会で1年の信頼を勝ち取るのは、密かな目標だったらしい。
それを海堂に独り占めされて、彼らは拗ねていた。
まだまだ、お子ちゃまな2年生たちだった。

「海堂ね、ボーリングは乾仕込みだから…」

(そりゃ、上手いわけだ…)

不二がふらっと放った言葉に、そこにいた1.2年メンバーが納得する。

「でも、ボーリングはやっぱ手塚がいないと、ねっ、手塚」

ニコッと手塚を見て話す不二に、手塚が眉を顰める。
乾と海堂は苦笑している。

「部長。ボーリング出来るんすか?」

ある意味、とっても失礼な質問をする桃城。

「部長だったら、さぞかしボーリングも上手なんでしょうね」

桃城の言葉に慌てて取り繕う荒井だった。

「手塚は凄いよ。ね、乾」
「そうだな。あれは、見なきゃわからん凄さだな」
「悪かったな」

面白そうに、手塚のボーリングを思い出しながら話す不二と乾に、眉根を寄せて手塚が呟く。

「やっぱ、凄いんだ」
「流石、部長」

乾と不二の言葉を真に受けて、瞳を輝かせて賞賛するメンバーに

(凄いの意味が違うんだけどな…)

知らぬが仏っていうし、部長の面子もあるしな。
と、真実を自分の内に秘めることにした海堂がいた。


「うおっ、大人数だにゃ〜」

河村の家に到着した12人。
中に入った途端、先に来ていた菊丸に笑われる。

「英二先輩も来てたんすか」
「おう、桃。今日はえらいメンバーだにゃ」

ムードメーカーを担当してる二人ががやがやと話しだす。

「河村」

その横で、乾が河村に近づく。
続いて、不二・手塚・大石とやってくる。
海堂は本屋を出てからすっと、乾の横にいる。

「あのな、昼飯の件だけどな…」

言いにくそうに乾が口を開く。

「それなら、気にしなくていいよ」

気のいい河村は、笑いながら答え。

「いや、そういうわけにも」

難しい顔で手塚が話す。

「そうだよ、いくらなんでもこの人数は」

大石も困ったように口を開く。

「せめて、僕らの分は払うよ」

不二がすまなさそうに声を出す。

「いいってことよ。男がそんな細かいこと気にしてちゃ大きくなれないぜ」

会話が聞こえてきたらしい河村の父親が間に入って言う。

「でも…」
「言い出したら聞かないし、言うとおりにしてやってよ」

優しく笑いながら、河村が不二に伝える。

「じゃあ、昼はご馳走になりますんで、帰りにまた寄るんで、寿司5人前包んでてもらえますか?」

言っても無理だということを悟った乾が、打開策として寿司を頼む。
せめて売り上げに貢献しようということだ。
それに気づいた不二・大石・手塚の三人も

「僕のところも3人前、お願いできますか?」
「俺も、家族分握ってもらおうかな」
「俺も、頂きます」

それぞれ、自分の家用の寿司を注文した。
ちなみに海堂はというと、自分も言おうとしたところ

「海堂んとこの分も入ってるから」

と、乾に先に言われてしまい、言い出せなかった。

「…よっしゃ、いいネタ握ってやるからな」

息子の友人の心遣いに胸の熱くなった河村の父は包丁片手に、燃えていた。
その姿は。さながらラケット持った河村そっくりだったとか。


河村、大石、菊丸が入って、総勢15人は、座敷3テーブルに5人ずつ座ることにした。
一番奥の座敷に、堀尾・カチロー・カツオの1年トリオと乾と海堂。
真ん中のテーブルに、林・マサやん・荒井の2年トリオ(?)に河村と不二。
最後、一番手前のテーブルには桃城・越前・手塚に大石・菊丸が座った。
どういう風に決めたのかは聞かないように…

「メニューは…」

昼の定食の試食に来ていたので、メニューは定食5品。
寿司定食に始まり、刺身定食・天麩羅定食と定番メニューから焼き魚定食に、一風変わってフライ定食となっている。

「どれにする?」
「俺、プリプリえびフライvv」
「焼き魚っす」
「不二には、不二限定定食あるけど?」(言わずと知れた、わさび寿司いり寿司定食)
「じゃあ、それで」

各々のテーブルで話を進め、注文を取る。
それぞれ代表が、それを集計して伝える。

「「「各定食、一つずつ」」」

見事に分散された注文だった。


「美味そうvv」

途中、河村、不二、乾・菊丸たちが手伝いに行ったり、皆で料理を運んでと、思ったより早く15人分の定食が座敷のテーブルに並べられた。

「いただきます」

揃って両手を合わせる。

「大石〜、このエビフライプリプリ〜vv」
「よかったな英二。だから、座って食べような」

手前のテーブルでは、エビフライに感激してる菊丸を大石が大人しくさせ、

「やっぱ寿司だよな」

両手に寿司を持って、ガツガツと口に入れていく桃城。

「焼き魚っすよ」

黙々と魚をほぐしながら食べていく越前。

「…桃城…」

額に青筋をたてて、目の前でご飯を飛ばしながら食べる桃城を呼ぶ手塚。

「手塚、ここは穏便に…」
「朝練前、校庭30周!!」

美味しい料理の途中に胃薬を飲む羽目になりそうな大石の前、手塚は桃城に宣告をした。

「「「……」」」
「どうしたの?」

真ん中のテーブルでは、凍りついたように不二を見てる三人に不二が尋ねる。

「あの…、それ…?」

うち、一人が意を決して不二が先ほどから食べているものを指す。

「これ、わさび寿司。おいしいよ」

他の寿司定食と違って、三分の二くらいがわさび寿司な不二の定食に、慣れない三人にとっては野菜汁やペナル茶を飲まされてるくらい苦痛だった。

「荒井君も食べる?」

ニッコリと天使の微笑で、わさび寿司を荒井に差し出す不二。

「不二、荒井が困ってるよ」

横にいる河村がそっと不二の手を戻す。

「美味しいのにね」

河村に止められ、あっさりと手を引っ込めて、わさび寿司を口に放りむ。
そして、奥のテーブルでは、

「お刺身、美味しいよ」
「昼から、こんなん食えて幸せ」
「焼き魚もすっごい美味しい」

と、1年トリオが美味しそうに談笑しながら食事をしていた。
この三人の向かい側、

「この油は…」
「また、データっすか」

フライを食べながらブツブツ言ってる乾に、海堂が呆れたように声をかける。

「ん?」
「結局、美味いんすか?」
「これ?美味いよ。海堂も食べる?」

海堂の質問に答えて、エビフライを適当な大きさに切る。

「はい」

自分の箸でそれを掴んで、海堂の口元に持っていく。
それを海堂は戸惑うことなく口にした。

((((((……嘘っ!!))))))

運が悪いと言うか、偶然にもそれを目撃した向かいに座る1年トリオに真ん中のテーブルの2年3人。
持っていた箸を落として、しばし動くことが出来なかった。

「どう?」

そんな6人に気づくことなく、二人は会話を進めていく。

「美味いっす…」
「天麩羅も美味そうだな」

海堂の食べている天麩羅定食を見て言う乾に、

「魂胆、丸わかりっすよ」

呆れたように返す海堂。

「…仕方ねぇな」

エビのてんぷらを一口つまんで乾の口元に持っていく。

「さんきゅ」

それを口にした乾に、6人はさらなる衝撃を受けたのだった。
そして、今回ばかりは、

「あ〜、乾いいなぁ。大石、俺もあ〜ん」
「えっ…英二…」

6人以外にも目撃者がいた。
その一人、菊丸は大石の横で口を大きく開いて食べさせて貰うのを待っていて、大石が途方に暮れている。

「不二…?」
「今日は諦めてあげるから、今度ね」

もう一人、不二は河村の困ったような呼びかけに、ニッコリと答えた。
そして最後の一人、

「え〜ちぜんvv」
「一人でやっててください」

越前に寄って、おねだりする桃城に、越前はそっけなかった。

((((((うちのレギュラーって…))))))

その様子を見ていた一般部員たちは、レギュラーでなくていいかもと、ほんの少しだけ思ったらしかった。


「桃たちは、これからどこ行くんだ?」

食事も終了し後片付けを始めながら、菊丸が桃城に訊ねる。

「これからっすか…、先輩たちはどっか行くんすか?」

少し考えたものの、どこに行くかはさっぱり考えてなかった桃城はあっさりとやめて、聞き返す。

「俺らはね、水族館にカワウソの赤ちゃん見に行くんだにゃ」
「桃たちも行く?」

不二に聞かれ、

「どうする?」

後ろにいる連中に話しかける。

「水族館か…」
「カワウソの赤ちゃんは見て見たいかも…」
「カラオケとかのが…」

こそこそと集まって相談していると、

「水族館行くんでしょ」

と、会話に入ってなかった越前が言い切る。

「いや、どっちかって〜と…」
「でも、海堂先輩は水族館行く気ですよ」

ほらと越前が視線を向ける。
他のメンバーもそっちを見れば、乾先輩の横、

「薫ちゃんはくるでしょ?」
「海堂、動物好きだもんね」
((それに乾いるし))
「うす」

菊丸と不二に誘われて頷いてる海堂がいた。

「海堂、勝手に決めんな」
「知るか。他に行きたいなら、お前らだけで行け。俺はこっちに行く」

しっかりと乾の服の裾を掴んで海堂が冷たく言い放つ。
乾はただ苦笑するばかり。

「乾先輩も、何か言ってやってくださいよ」

桃城が乾に振ると、乾は海堂を見る。

「……」

この前みたいに言われるかもと海堂が構える。

「まっ、そろそろ返してもらっても問題ないだろ」

フッと笑って、海堂の頭を抱き寄せる。

「それに、お前らがこっちに来れば何の問題もないわけだし」

ニヤッと笑ってみせる乾に、

「そうそう、桃たちも行こうぜ」

桃城に体当たりして誘う菊丸。

「まさか、先輩の誘いを断ったりしないよね」

ニッコリと話す不二。
この三人に言われて断れものなどここにはいなかった。
ただ一人、ある意味、怖いもの知らずの越前は…

「俺、魚好きっすからいいっすよ」

と、結構乗り気だったとか。


ゆらゆらとバスに揺られて、やって来ました水族館。
鮮やかで風変わりな外観の海沿いにあるそこは、デートスポットとしても有名で、
ディナーつきのナイトクルーズや夜景が楽しめる夜の観覧車で、夕方にもなるとカップルで一杯になる場所だった。(どこかすぐわかるって)
入場券を買い、館内に入る。
可哀そうな後輩たちの分のお金も、最上級生たちが払ってあげて…(脅されて来てるんだから、それぐらい当然です)
幻想的な雰囲気の色鮮やかな熱帯魚のアーケードをくぐりぬけ、最上階まで一気にエレベーターで上がる。
その最上階に目的の子はいた。

「うわ〜、可愛いvv」

水の中からチョコンと顔だけだしてるカワウソの赤ちゃんを見つけた菊丸が駆け寄っていく。
後を不二や1.2年生たちが続いていく。

「海堂は行かないのか?」

苦笑しながらそれを見送り、ゆっくりと歩いてくる3年4人の中に海堂も残っていて、乾が声をかける。

「……」

カワウソの赤ちゃんも見たいけど、乾の傍にもいたい…
海堂の中ではかなりの葛藤があるようだ。
カワウソの赤ちゃんのいる水槽の周りには結構な人だかりで、

「俺たち、下のところで待ってるから」

大石が菊丸たちに告げて、下に向かう。

「…俺も行きます」

結局、乾を取ったらしい海堂も彼らについていった。
緩やかな下り坂を、他の日本に生息する魚を見ながらくだっていく。

「へぇ〜」
「うわっ」
「よかったな海堂」

丁度、菊丸たちのいる場所の真下あたりに差し掛かったところで、5人が声をあげる。

「こうなっていたのか」

腕を前で組んだ上体で手塚が呟く。
上の水槽は水深が深く、この場所では水の中の様子が見れるようになっていた。

「特等席だな」

ガランとしたその場所で、5人は水槽の目の前で水の中を眺める。

「一匹じゃなかったんだね」

水の中に隠れている二匹を見つけた河村がそれを指す。

「水の中までは、見えないからな」
「向こうよりも、こっちのほうが面白いな」

岩陰に隠れて遊んでいるカワウソの赤ちゃんを眺めながら、大石が楽しそうに話す。

「あいつら、悔しがるだろうな」

まだ当分、下にはこないだろう連中が悔しがる姿を想像しながら笑う。
その姿が簡単に想像できたのだろう、手塚が口元を歪め、残りの4人が楽しそうに笑う。


それからかれこれ、30分。下手すれば1時間近くたった頃、ようやく上にいたメンバーが降りてきた。
そして、

「うわっ、何これ?」
「ずっりぃ、ずっとコレ見てたんすか?」
「教えてくれればよかったのに」
「むっちゃ、穴場じゃないですか」

予想通りにブーたれる面々に、おかしそうに噴出す。

「何?何だよ?」
「何でもないよ」

笑い出す、下にいたメンバーに菊丸が変な顔をする。
大石が笑いを収めながら、菊丸を宥める。

「で、どうする?」

ここでも見るのか、下に行くかを乾が聞く。

「勿論、ここ…」

勢いよく拳をあげ叫ぼうとする菊丸の横を、

「ペンギンに赤ちゃん生まれたんだって」
「毛がフワフワで可愛いんだって」

女子高生の一団が通っていった。

「…ペンギン〜vv」

手を下げ、目を輝かせて、ペンギンのいる水槽へと走っていく。

「…大石…」

既に姿の見えなくなっら菊丸を見送って、手塚が大石を呼ぶ。

「何だい?」

冷や汗を流しながら、大石が手塚に向く。

「手綱はキチンとしめておけ」

深い溜息を吐かれ、大石は何も言えずに乾いた笑いを漏らすしか出来なかった。

「仕方ないよ。僕たちも行こう」

河村の手を取って歩く不二に、揃って皆ついていく。

「…海堂?」

だが、海堂だけはその場所から動かずにじっとす水槽の中を眺めていた。
そして、乾だけがそのことに気づいて、そっとそこに残る。


「…あれ?」

しばらくして、ようやく目を離した海堂が、乾と自分しかいないことに気づく。

「堪能した?」

キョトンとしてる海堂に、可愛いなと思いながら訊ねる乾。
コクンと頷く海堂に、乾が笑みを零す。

「他の人たちは…?」
「先に行っちゃったよ」

海堂が不思議そうに聞いてくるのに、乾がさらっと答える。

「あっ、俺…スミマセン」

乾が待っていてくれたことに気づいて、慌てて頭を下げる。

「俺としては、二人っきりになれたんでラッキーだったけど」

片目を瞑って見せる乾に、海堂はボケッと見惚れてしまう。

「向こうでペンギンの赤ちゃん見れるらしいから、行こうか」

海堂の目線に顔をおろして近づける。
周りに誰もいないのを確認して、唇をそっと重ねる。
ぱっちりと目を開いたまま、固まっている海堂に苦笑して、乾は手を差し出す。

「じゃ、行こうか」

頬を朱に染め、口元を手で隠した海堂が、躊躇するように差し出された手を見つめる。

「…誰かに見られたらどうするんすか」
「大丈夫、そのへんは抜かりないから」
「バ〜カ」

ボソッと呟いて、そっとその手に自分の手を重ねた。


「遅かったね」

ペンギンのいるゾーンに向かう途中のイルカのゾーンで、不二に迎えられる。

「スンマセン」

頭をさげる海堂に、頭を掻いて笑う乾。

「僕に感謝してよね」

頭をさげる海堂にいいよと笑って返し、乾に頭をさげるように手を上下に振る。
不二の口元に、耳を近づけてきた乾にそっと耳打ちをした。

「晩御飯とマッサージで勘弁してあげるよ」

後、髪の毛も洗ってねvv
と、きっちり報酬を貰う不二に、苦笑いを漏らしながら

「覚えとくよ」

乾もそっと不二に耳打ちした。
その様子に、ちょっと…いや、かなりムッとしてる人物が一人。

「可愛いね」

それに気づいた不二がクスッと笑いながら小声で囁く。

「だろ」

乾も笑ってそれに答えて、不二の傍を離れる。

「河村は妬いてくれないの?」

隣にいる河村に尋ねる不二。

「えっ?」
「今の見てて」

不思議そうに見つめてくる河村に、再度、不二が問い返す。

「今の見て?別に妬いたりはしないよ」

不二の言うことに思い至った河村が答える。

「ちゃんと知ってるから」

好きの違い
不二の手をそっと握って、照れたように河村が笑う。
不二も柔らかな笑みを零した。

「…俺、コソコソされんの嫌い」

隣にやってきた乾に海堂が言う。

「うん。不二に感謝するよう言われてたんだよ」

そっと海堂の耳元で囁く。

「きっちり、報酬は取られたけどね」

海堂が乾を見ると、乾は笑ってて、海堂も自然と笑みが零れそうになった。

「あ〜、乾と薫ちゃんが内緒話してる〜」

が、突如聞こえた菊丸の声に、凍りつく。

「何話してるのかにゃ〜」

楽しそうに間に入って二人の顔を交互に見る菊丸。

「そんなことよりも、ペンギンはいいのか?」

さっと話題を変えて菊丸に振ると、

「そうだ、ペンギン!!大石、ペンギンの赤ちゃん」

思い出した菊丸が、大石の腕を引っ張って走り去っていった。

「ちょ、ちょっと…待てって、英二」

引っ張られ、体勢を崩されながらもついていく大石。

「俺らも行こうぜ」

越前を掴んで、後を走ろうとする桃城に、何か言う暇もなく連れてかれる越前。

「何やってんだよ」

その後を、一般部員6人が笑いながらついていった。

「…騒がしい」

走っていく部員たちを見ながら、明日は全員校庭20周だなと考える手塚。

「休みなんだから、勘弁してやれよ」

気づいた乾が、さりげなく止める。

「走っちゃいけないってのはわかるけどね」

不二も苦笑しながら、止めに入る。

「休みの日くらい、楽しくいこうよ」
「……」

優しい河村の言葉に、頷く海堂。

「…仕方ない」

止められ、渋々と諦める手塚に、全員、手塚に気づかれないように苦笑を漏らした。


この後も、彼らは久しぶりの休日をたっぷり楽しみ、短い一日は過ぎていった。
そして、また明日からいつもの日常が始まる。
テニス漬けになる、いつもの日々が……

Fin