紅葉遊び W



想いを込めて
紅葉を空へ放ってみた
そしたら、紅葉があなたを
運命の人を導いてくれたから


Next year


春がきて、桜が満開な日に、あの人は旅立っていった。
俺は、最上級生になり、部活のほうでも役職について、去年のようにチームを全国へと連れていくために、自分が少しでも長くテニスをするために、がむしゃらな日々を過ごした。
そして、秋がきた。

「失礼しました」

進路指導室のドアを閉めて、溜息を吐く。
入れ替わりに入って同級生を見送って、海堂は校舎を出て行った。

裏庭へと向かい、紅葉を拾い上げる。

「これが始まりだったんだよな」

3年前の秋
弟と母に言われるままに、紅葉を空に投げた。
翔んでいった紅葉を追いかけて、あの人に出逢った。

「運命なんて非現実なもん、信用してないって言ってたよな」

2年前の秋
彼が投げた紅葉が、俺の元に舞い降りて、それからしばらくして、付き合い始めた。

「で、一人で運命に踊らされて…」

1年前の秋
ココを離れると俺に伝えた人。

「本当に行っちまいやがった」

苦笑混じりに呟いて、紅葉を掴む。

「今ならわかるっすよ。アンタの言いたかったこと」

遠く離れても、紅葉は翔んでいくんだろうか?
不安だったんだな。
アンタは離れることに
俺は追っていくことに

「運命なんて、自分の力で切り拓くものだろ」

自分に言い聞かせるように呟いて、紅葉を空に放り投げる。

「何で…?」

少し浮いて、すぐに舞い落ちた紅葉。

「何で、ココにいんだよ?」
「逢いたかったから」

落ちた紅葉は運命の人の元。
春に海を越えて行った、愛しい人の元。

「攫いにきたよ、薫」
「バーカ」

両手を広げて笑う人の胸に飛び込む。

「1年もたなかったな」
「秋までもったんだ。アンタにしちゃ上出来だろ」
「もちそうになかったけどね。夏に迎えにきても、振られると思ったからね」
「当たり前だ」
「ずっとこうやって触れたかった」
「……俺だって」

強く離れていた時間を戻すように、抱き締めあう。

「親は説得したけど…」

満足するまで抱き合った後、久しぶりに訪れた乾の家で話し合う。

「ん…」
「学校は反対する」
「だろうね。俺の時も反対されたし」
「嘘?」
「嘘じゃないよ。そんなに急ぐことないだろうって」

腕の中のぬくもりを離さないように、乾は海堂を胸に収めて苦笑を見せる。

「でも、学校に負ける気ないだろ?」
「っす。俺は自分で決めた道を行く」
「そういうと思ったよ。はい、コレ」
「コレ?」

渡されたのは書籍大の封筒

「パンフレットと願書」
「え?」
「薫のことだから、学校とかまだ決めてないだろ?」
「っす。どこがいいとか全然、わからないっすし…」
「と思ってね、俺が選んできた」

封筒からパンフレットを取り出し、中を見せる。

「というかね、俺が行ってるとこなんだけどね、結構、テニスも強いんだよ」
「先輩…」
「さっさと願書だして、先生に報告したら、向こうも反対出来ないからね」

教師に相談せずに、手続きをしてから、話したんだよ。
で、受験して受かったら、もう向こうは何もいえないからね。
1年前の、自分の行動を笑いながら教える乾に、海堂も笑みを漏らす。

「だからさ、待ってるから、早くおいで」
「はい」

一枚の紅葉が巡り合わせた運命。
来年も再来年も、その次も………
紅葉が導くのは、たった一人の、誰よりも何よりも愛しい
かけがえのない人

―想い込めて
 紅葉を空に放り投げてご覧
 きっと、紅葉が君を
 唯一人の運命の人の元に導いてくれるから―

Fin