クレヨン  <字書きさんに100のお題 001>



青春幼稚園、本日、写生会というなの遠足。
天気は晴れ、絶好の遠足日和だ。

「皆さん、ちゃんと付いて来て下さいね」
「余所見しちゃだめだよ」

年少組も年中組も年長組も全て一緒に行く遠足は大人数のため、先生たちも大変です…

「手塚君、僕と手を繋ぎましょうか?」
「遠慮します」
「じゃあ、不二君」
「タカさん、一緒に手を繋ごうね」
「うん、一緒にいこ」
「じゃあ、乾君」
「はーちゃん…」
「薫、危ないから一緒に行こうね」
「じゃあ、菊丸君」
「しゅうちゃ〜ん」
「うわっ、英二君…」
「越前君…」
「リョーマ、一緒に行ってやろっか?」
「一人がいい。大和先生も桃ちゃんもウザイ」
「…誰も僕とは一緒に行ってくれないんですね…」
「大和、お前は一体何をやってんだい!!」
「園長先生」
「とっとと先頭に立って、園児を引っ張っていかんかい」
「はいはい」

……先生よりも園児のほうが大変そうです。後、園長先生も……
園児大好きの大和先生はこうやって園児たちに構ってもらおうと必死ですが、園児は全く興味なし。
毎回、仕事をほっぽって園児に向う大和先生を止めるのは園長のスミレ先生の仕事です。

「ったく、毎日・毎日懲りないね〜」

何であんな奴やとってるんだろうね〜?
スミレ先生、それを行ったらお終いです。


一回言えば、取りあえずは大和先生も諦めてくれます。
大和先生が先頭に立って、スミレ先生が最後尾に立ちます。
園児が離れないように見守りながら、近くの公園へと無事着きました。

「公園から出るんじゃないよ。お昼になったら呼びに行くからね、なるべく一緒になってるんだよ」
「はーい」
「じゃあ、行っておいで」

園長先生のお話を聞いて、皆、元気のいいお返事をします。

「どこ行こうか?」

年長組の周助君が尋ねます。

「遊ぼうよ〜」

年長組の英二君はいつも元気で、遊ぶのが大好きです。

「絵を描いたらね」

英二君の面倒を見ている年長組の秀一郎君が英二君に言い聞かせます。

「お腹減った〜」

年中組の桃城君も元気一杯でここに来るまでも既にはしゃいでいたので、もうお腹がすいています。

「食うしか脳がねぇのか」
「んだと〜」

同じ年中組の薫君とは仲が余りよくないので、すぐにこうやって喧嘩になっちゃいます。

「また桃ちゃんと、かおちゃんが喧嘩しようとしてる」

年少組のリョーマ君はおませさんなので年中組の二人よりもよっぽどしっかりしています。
呆れたように年長組さんに告げ口します。

「薫はどこがいい?」

薫君が唯一懐いてるのは年長組の貞治君。
この二人の喧嘩を止めるには、年長組の国光君か周助君・貞治君の誰かが止めるのが一番早く楽なんです。
幼稚園でも、この二人が喧嘩したら年中組みの他の園児が年長さんまで助けを求めにくるんです。

「あまり遠くないほうがいいんじゃないかな?」

貞治君が声をかけたおかげで、薫君は貞治君の横に行って、貞治君に手を繋いでもらって嬉しそうです。
ホッとした年長組の隆君が提案します。

「そうだな、ではあそこの噴水の所にしよう」

それを受けて国光君が決定を下して、9人の園児は噴水に移動します。

「先生も一緒に行っていいですか?」
「大和、お前は園児の場所を把握しに公園をまわらんかい」

移動途中で大和先生が付いてきそうになりましたが、スミレ先生に言われて大和先生は他の園児たちの様子を見に行きました。大和先生、ちゃんと仕事してください。


園児たちは今日はクレヨンを持って絵を描きます。
クレヨンにクレパスとそれぞれ数は柄が違うので、皆、他の人のクレヨンに興味津々です。
特に国光君や周助君・秀一郎君・薫君などはクレヨンの色が豊富です。

「ねぇ、秀ちゃん」
「英二君も使っていいよ?」
「タカさんもよかったら使って」
「有難う」
「はーちゃん、一緒」
「有難う、薫」
「汚したり折ったりしたら、走らせるぞ」
「うっす」
「っす」

皆、彼らのクレヨンを使いたくて必死です。
いえ、必死なのは数人のようですが。

「はーちゃん、上手だね」

薫君と貞治君は噴水に座って、目の前のお花畑を描いています。
横に座って、貞治君の絵を見た薫君がうっとりと呟きます。

「薫も上手だよ」

貞治君は手を止めて、薫君の頭を撫でてあげます。
薫君は貞治君に触られるのは大好きなので嬉しそうにはにかみます。
他の子たちも噴水に座って周りの風景を描いています。
ちょうど背中を向けた反対側に秀一郎君と英二君。
右隣に国光君が桃君とリョーマ君を見張ってます。
左隣では周助君と隆君が和やかに話しながら絵を描いています。

「出来た!!」
「英二君、もっとちゃんと描かないと」
「いいの〜それより遊ぼ〜」
「まだ描けてないから、待って」
「じゃあ、桃〜」

英二君は遊びたくて仕方ないので、秀一郎君から離れて桃君を誘います。

「いいっすよ〜」

桃君もいい加減絵を描くことに飽きていたようで。英二君の誘いにすぐ乗ります。

「桃、鬼ごっこしようぜ、桃が鬼ね」

そう言って、英二君は元気よく走り出して行きました。

「待て〜」

桃君も急いで英二君を追いかけます。

「あいつら…」

二人の姿を眉間に皺を寄せて見つめている人がいます。

「国光君、落ち着いて」

それは国光君で、秀一郎君が隣にきて宥めます。

「タカさん、他のとこで描かない?」
「いいけど、どうしたの突然?」

周助君は英二君たちの行動をしばらく見つめた後、立ち上がり隆君に他の場所に変えるように提案しました。

「薫、ここは危ないから向こうに行こうか?」

周助君と同じように英二君たちを観察していた貞治君も立ち上がり場所の移動をしようとしました。
だけど、二人とも決断が少し遅かったようです。
隆はよくわからなくて、ついグズグズしてしまい、薫君は不器用なので焦って片付けようとして、余計バラバラにしてしまいと二人が考えていた移動時間が大幅に遅れてしまったのです。

「うわ〜桃、しつこ〜い」
「よっしゃ〜…」

ようやく隆君と薫君が動けるようになった時、英二君と桃君の声がとても近くで聞こえました。

「危ない」
「うわっ」
「「うわ〜っ!!」」
「……お前ら……」
「英二、桃……」
「冷たい」
「…………」
「二人とも覚悟はいいな……」

皆が危ない!!
そう思った時には、二人は既に噴水の中にダイビングしていました。
そして勿論、噴水に座っていた残りの園児たちも二人の上げた水しぶきによって濡れてしましました。
頑張って描いた絵も、クレヨンも洋服も顔も、全てビショビショです。

「折角、頑張って描いたのに…」
「もう、髪の毛が張り付いて気持ち悪い」
「クレヨンもビショビショ」
「ふぇ…ぇっ…え〜ん」

噴水に落ちた園児も、濡らされてしまった園児も一斉に泣き出しました。

「落ち着け」
「タカさん、大丈夫?」
「薫、泣かないで」

泣いていないのは国光君と周助君と貞治君の3人だけです。

「どうしました……これは凄惨ですね〜」
「あちゃ〜、何やってんだい」

水飛沫の音と数人の園児の泣き声に気付いた先生が駆けつけてきました。

「英二と桃が噴水に飛び込んだんです」
「それで皆、水被って」
「絵もクレヨンもカバンも服も全部濡れてしまって」
「仕方ないね〜」
「先生がタオル持ってますから、皆さん服脱いで体拭きましょうね」
「絵は描き直しも出来ないしね、そのままでいいさ。ほら、もう昼だしね戻っておいで」
「はーい」
「ただし、桃と英二はわかってるね」
「「ごめんなさーい」」

先生たちと一緒にお弁当を食べる芝生に向った園児たち。

「はい、服脱ぎましょうね、着替えもあるから安心して下さいね」

やたらと嬉しそうな大和先生。

「着替え用意してますので」
「僕、着替えあるから」
「俺も薫の分と一緒に持ってきてるんで」

一部の特に着替えさせたかった子供たちに断られ項垂れるものの、他の園児は着替えの用意がないので嬉々として嫌がる園児たちの服を着替えさせていた。

「薫、ほらこれに着替えて」
「うん」

貞治君はまだ涙の残る薫君の顔をタオルで拭いてあげて、服を着替えさせてあげます。

「隆君はこれ着て下さいね〜」
「タカさん、これきっと似合うよ」
「あ、あの…」

周助君は大和先生と二人して隆君の着替えを強要していました。

「はー君ご飯」
「はいはい。手塚も食べよう」
「ああ」

着替えさせ終えた貞治君は国光君と薫君を誘って、大きな木の下にシートを引いてお昼タイムです。
無理やり着替えさせられた園児もそれぞれお昼を食べ始めました。
皆のシートの横、お日様があたる場所にはそれぞれ頑張った絵とその絵を描くのに使ったクレヨン。
帰る頃にはかわくといいね

「ハーイ」

Fin