「デートは行った?」
「いえ…」
「何でー?」
「何でって…」
「付き合ってるんだよね?」
「っす」
「じゃあ、どうしてデートしないのさ?」
「…さぁ?」
「仕方ないね、可愛い後輩のためだし」
「あの……」
「俺たちが何とかしてやるにゃ…」
「……(しないで下さい)」
さも楽しそうに部室を出て行くのは、3-6コンビとして有名な不二・菊丸の小悪魔コンビ。
対して、はっきりと断れない体育会系の上下関係の厳しさに自分の運命を呪いたくなっているのは、1学年したの海堂。
海堂は最近、1学年上の乾と付き合い始めたばかり。
恋愛問題には全くを持って…それぞれ違う事情だが…疎い乾と海堂のために…とは建前で面白がっているだけともいう…相談役を買って出てる不二と菊丸…乾に言わせれば、勝手に首を突っ込んでかき回して消えていくだけだということらしい。
「…海堂」
「乾先輩」
不二と菊丸が消えて、しばらくしてようやく正気に返れた海堂が部室を出てくる。
その海堂が最初に目にした、コートで不二と菊丸に何事かを囁かれていた乾が、海堂の存在に気付いて、二人と離れてやってきた。
「あのな…」
「あ、あの…不二先輩と菊丸先輩の…」
「ああ、そういうことじゃなくてさー、今度の日曜日、ここに行かないか?」
「ここって…!!」
海堂がバッと乾を見ると、乾は少し眉根を寄せて困ったように笑っていた。
「別にあいつらに言われたからじゃなくてさ、元々、誘うつもりだったんだよ」
「え?」
「何か母さんが貰ったらしくてさ」
「そうだったんすか」
「海堂、動物好きだろ。だからさ」
「好きっす」
「じゃあ、日曜、迎えに行くよ」
「はい」
海堂に手にあるのはねこたまの優待券だった。
乾の親が知り合いに貰ったものの、行く暇のないので乾に渡し、乾が海堂が無類の動物好きなのを思い出して誘うことにしたというだけだったのだ。
まあ、何はともあれ、乾も初デートに誘えて、煩い二人にわいわい言われずにすんでよかったってとこだろう。
そんなわけで、約束の日曜日
「おはよう、海堂」
「っす」
「お早うございます、乾さん」
「葉末君、おはよう」
「今度、行く時は僕も連れてってくださいねー」
「わかったよ、今度は3枚もらえるように頼んでおくよ」
「わーい」
「葉末!!」
「あら、ずるいわ葉末だけ?」
「私たちも、動物は好きなんだがね」
「あ、じゃあ…」
「父さん、母さん!!」
「冗談よ」
「今度、乾君の分も合わせてサファリパークの優待券でも買っておくから、一緒に行ってもらえるかね」
「喜んで」
海堂の自宅に迎えにいった乾は、海堂家の家族に捕まり困惑気味。
海堂は家族の乾好きに辟易しながらも、乾を守ろうと必死になっていた。
好意的な見送りを受けて、乾と海堂は駅へと向かう。
最寄り駅へ降りて、目的地「ねこたま」へ…
「うわー」
入った瞬間、瞳がキラキラと輝き出す海堂に、乾は苦笑を見せる。
「せ、先輩」
「海堂の好きな所に行ったらいいよ」
「俺、俺、あの猫…あれ…」
「はいはい」
パタパタとお目当ての猫に向かって走っていく海堂を微笑ましそうに見つめながら、乾はゆったりとした足取りで海堂の後を追う。
「先輩、すげー可愛い…」
抱き上げた猫をこちらに見せて、嬉しそうに笑う海堂に、乾は連れてきてよかったなーと思っていた。
「海堂、あっちで子猫が見れるみたいだけど」
「行く!!」
「そういうと思ったよ」
色んな猫を見つけてはじゃれあう海堂の後をのんびりと歩きながら、まわりの様子を見ていた乾が、気付いたその存在を教える。
子猫という言葉に、それはもう嬉しそうに海堂は乾を引っ張って、その場所へと急ごうとするが…
「海堂、逆」
場所を知らない海堂は、全く逆に向かって動き出したために、乾が苦笑交じりに止める。
全く知らないのに行こうとしてたことに気付いた海堂は「あ」と小さな声を出して真っ赤になった。
「こっちだよ」
「っす/////////」
そんな海堂にクスリと笑って、乾は海堂の手を繋ぎなおしてその場所まで案内した。
「うー………」
生まれて数ヶ月の子猫。
新しい飼い主に貰われる暇で、皆が見れるように展示されてるそれを窓にへばりついて奇妙な唸り声をあげて見つめる海堂。
乾は、そんな海堂を見て楽しんでいた。
「可愛い…、やっぱ子猫は可愛いっすね」
「そうだね」
興奮冷めやらぬという感じで話してくる海堂に、乾は楽しそうに相槌をうつが、乾は海堂が子猫に夢中になっている間、その海堂の様子が可愛くて、そっちをじっと見てたので、子猫のほうはほとんど覚えていなかったりする。
「じゃあ、次は…」
「犬!!」
「はいはい、今日は何処までお供するよ」
「じゃあ、その後、たまいたちも」
「フェレットも好きなの?」
「可愛いならどれも好きっす」
はしゃぎまくっている海堂に乾は苦笑を漏らす。
こうなったら閉園時間ギリギリまで帰りそうにない。
「先輩早く!!」
嬉しそうにはしゃぐ海堂を見て、諦めをつけた乾は、どうせならとことん楽しもうと…正確に言うと、こいつらのデーター及び、海堂の小動物に対する時のデーターを完全攻略してやるという楽しみ…乾も海堂の後を追った。
「今日は楽しかったっす」
「こっちも楽しんだよ」
本当に嬉しそうに、幸せそうに話す海堂に、どっから取り出したのかノートを閉じながら満足そうに笑う乾。
全く違う楽しみかたをした二人。
それでも、お互い満足してるようなので、わざわざ突っ込むこともないだろう。
「でも、まだ終らせるには惜しくない?」
「…惜しいっす」
「じゃあ、もう少しだけ」
「はい」
差し出された手を取って、二人はゆったりと歩く。
「こうやって出かけるのも悪くないね」
「っす」
「海堂の、思わぬ一面も除けたし」
「え?」
「今日の海堂見たら、きっと誰も恐がらないだろうなーとかね」
「いやっす」
「え?」
「バカにされるくらいなら、恐がられてるほうがマシっす」
「誰もバカにしないと思うけどなー」
「するっす」
乾の言葉は頑なに否定する海堂。
何故、そこまで思い込んでるのかと乾は不思議そうに海堂を見る。
「俺、見た目こんなんだし…」
「見た目は関係ないでしょ」
「あるっす!!」
外見が恐い感じの海堂が、実は小動物や可愛いものに目がないというのは、ギャップがありすぎて笑いものにされると、海堂は真剣に思っている。
が、乾からしてみれば惚れた欲目もあるのだが…可愛い子が可愛い物に目がないのは別に可笑しくないだろう?と、真剣に思っていた。
「先輩、眼鏡の度あってないっすよ」
それを海堂に伝えたら、見事に否定的な返事が呆れたような声とともに帰ってきた。
「いや、度はきっちりしてるって」
「じゃあ、元からの問題っすかね」
「海堂、そこは真剣に悩むところじゃないだろう」
苦笑交じりに乾が、真剣に考え始める海堂を止める。
「俺は海堂は可愛いと思うよ。確かにこれは主観の問題だから、海堂が納得出来なくても仕方ないのかもしれない」
でもね…
そう続けて、乾は真剣な表情で海堂を見つめる。
「俺が海堂を可愛いと思うことは否定して欲しくない。特に、海堂自身には」
「ス、スミマセン…」
「誰だって好きな子をけなされるのは嫌だろう?ちょっとけなすというのは違うけど…」
「っす」
「それに、自分で自分を卑下したらダメだって、いつも言ってるだろ」
「はい」
乾に諭され、シュンと俯く海堂。
乾はそんな海堂に優しく笑いかける。
「海堂は可愛くないと言っても、俺以外の全員が海堂を可愛くないと言っても、俺は海堂が可愛い」
「先輩…」
「お前は俺の可愛い恋人だよ、ずっとね」
「先輩…俺…」
チュッと額にキスされて、嬉しい言葉を投げかけられて、海堂が幸せそうに微笑む。
「俺も、ずっと先輩だけが恋人っす」
「有難う」
その幸せを乾にも味わって欲しくて海堂は、乾の胸にポスンと飛び込み、それを伝える。
乾も海堂と同じように幸せそうに笑って、お礼にと唇に触れるだけの口吻を落とした。
-後日談-
「ねー、薫ちゃん、デートどうだったー?」
「行ってきたんでしょう?」
「はい、最高でした」
きっちりとデートの成果を聞きに来る小悪魔コンビにそれはもう幸せそうな顔で答える海堂。
「もう、俺もデートするにゃー、大石〜」
「今回は君たちに負けたけど、僕たちだって…タカさん…」
海堂をからかって楽しもうと思った所を、逆に見せ付けられた不二と菊丸は自分たちだってと息巻いて、コートにいるであろう、それぞれの恋人の元に向かっていった。
この勝負、海堂の勝ち(いつから勝負になったというんだ…)
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