スポーツテスト  <乾・海堂について11のお題・年間行事(学校編) 01>



4月、一番最初の年中行事といえばスポーツテスト。
体育館内での垂直跳びやグラウンドでの50m・100m走などと計らなくてはならないものが沢山ある。
そしてそれを心待ちにしているものが約1名。
青学男子テニス部3年マネージャーの乾だった。

「ねぇ、海堂・桃」
「何っすか、乾先輩」
「っす」
「今日の体育の授業、スポーツテストだったでしょ」
「そうですけど」
「…何か?」
「結果教えて?」

部活前、ジャージ姿の乾が2年レギュラーの桃城・海堂をとっ捕まえる。
嬉しそうにノートを片手にデーターを取ろうとする彼女に桃城も海堂も呆れたような笑みを向けながらも、望み通りに今日のスポーツ測定の結果を答える。

「有難う」
「いえいえ、先輩の言うことなら何でも聞きますよ」
「世話になってるんで」
「よしよし、二人とも。また新しいデーターに基づいたメニューを考えてあげよう」
「お願いします」
「ほどほどにしてくださいね」
「あ、越前」

新しいデーターにホクホクしながら乾は新たなターゲットを見つけて、走り去っていった。
乾のデーター収拾は部活中にまで行われていた。

「不二・英二」
「乾〜、今日はレギュラー陣にくっついてまわってるけどどうしたにゃ?」
「スポーツテストの結果でしょ?」
「さすが、不二。話が早いわ」
「教えるのはいいんだけどね、乾は教えてくれないの?」
「あ、それ俺も聞きたいにゃ」
「私の?私の聞いたって、何の役にも立たないと思うんだけど?」
「そんなことはないと思うよ」
「そう?でも、私のとこは明日だから、まだなの」
「明日か〜そうか、有難う乾」

ニコニコと微笑みを絶やさずに答える不二に何となく嫌な予感を感じる、青学レギュラー。
だが、揃いも揃って明日の乾の体育の授業を楽しみにしているあたり、不二と変わらないと思うのだが……

-次の日-

予告通り、乾のクラスの体育の授業。
運良く、窓際の席をゲットしていた海堂はグラウンドに見覚えのある人を見つけて、授業を無視して視線をグラウンドに向ける。

「た…短パン…」

いつも部活ではジャージを履いてる乾のショートパンツ姿にうっかり目が釘付けになっていた。

同時間3-6

「ほら、英二。乾が出てるよ」
「本当だにゃー、乾ってばショートパンツだよ」
「本当だね、いつもジャージだから新鮮だよね」
「にゃー、ところで不二」
「何?」
「そのカメラどうしたにゃ?」
「これ?これはね今日のこの時のために、一番いいカメラを選んできたんだよ」
「流石、不二。後で焼き増しよろしくにゃ」
「勿論だよ英二」

授業中でありながらも、二人して不二の席に椅子と机にわけて座って、窓に凭れかかってカメラ片手に乾観賞をしていた。
教師も他のクラスメイトも不二が恐くて、何も言えずに、大人しく授業をしていたのは言うまでもないだろう。

「乾…」

同時刻の3-1
窓際ではなく、廊下側のくせにも係わらず、堂々と立ったまま窓から乾も見ているのは、生徒会長でテニス部部長の手塚。

「乾、な、何てはしたない格好をしているんだ」
「おい、手塚?」

ショートパンツ姿の乾に鼻をハンカチで押さえて、教師の自分を呼ぶ声にも気付かずに自分の世界にどっぷり浸かっている手塚。

「何故、お前はそんなに俺のこの心を乱すんだ」
「手塚、お前はどうして乾が絡むと、おかしくなるんだ?」

教師の言うことももっともである。
手塚は完全に入りきった自己の世界で会話しているために、かなり発言もおかしくなる。
手塚が何を妄想しているのかは、ここでは敢えて触れないでいておこうと思う。

「やっぱり、乾先輩ってプロポーションいいよなぁ」

次は元に戻った隣の教室2-8

無理やり、荒井の席を陣取って窓際にやってきた桃城。
乾の素足を見てうっとりしている。

「へぇ、乾先輩、中々、いい体してんじゃん」

そして、下級生1-2の越前は一番、大人な発言をかましていた。

「乾、また手塚君壊れてるよ?」
「手塚は放っておいて」

そして、過半数以上のレギュラーに見つめられている乾はというと、クラスメイトに言われてようやく校舎を振り返り、溜息をついていた。

「あれは、不二に英二?何でカメラ持ってるんだろう?」
「やっほー乾ー」
「ねぇ、どうしてカメラ持ってるの?」
「乾のフォームを取ってあげようと思ってるんだよ」
「本当?有難う不二」
「いえいえ、どういたしまして」

乾が自分たちを見ているのに気付いた菊丸と不二が校舎とグラウンド間で会話をする。
はっきり言って、他の関係のない全生徒の迷惑以外の何物でもない。
それでも、誰も苦情を言ってこないのも、止めさせないのも不二への恐怖によるものと、またかという諦めによるものだろう。
そして、その会話に乱入者一名。

「不二先輩〜、それ焼き増ししてくださーい」

桃城だった。

「桃?私のフォームを焼き増ししてもらってどうするの?」
「どうするのって、乾先輩。そんな恥ずかしいこといえないじゃないっすかー」
「桃、何セクハラ発言かましてるにゃー」
「桃城、グラウンド50周」
「ゲ、部長。仕方ねーな、仕方ねーよ。グラウンド50周行ってきまーす」
「桃、やけに嬉しそうだね?」
「そりゃ、あの乾先輩の脚線美をもっと間近で見れるんですからー。俺、今日は眠れませんよー」
「てめー、乾先輩になんつーセクハラ発言ばっかかましやがるー!!」
「グエッ」

海堂の怒声とともにベキッという音が聞こえ、蛙がひしゃげたような音が聞こえたと思ったら、もうそこには桃城の姿はなかった。

「海堂、そんなもの投げちゃ危ないでしょ」
「すみません」
「でも、私のこと気遣ってくれたんだよね、有難う」
「っす///」
「海堂・桃城、放課後グラウンド100周」
「うわー、手塚。それ嫉妬でしょう。男の嫉妬は醜いよ?」
「不二、貴様も走りたいのか?」
「フフッ、何とでも言えば?今のに関して言えば、桃城以外の罰走はなくなるもの」
「どういう意味だ?」
「手塚、海堂は私を守ろうとしてくれたんだから、酷いよ」
「こういう意味」
「海堂の罰走はなしにして」
「……いいだろう」
「有難う、手塚」

ニコニコとムカつくくらいに笑顔を振りまく不二に苦虫を噛み潰したような手塚。
二人の冷戦に自然と他の見物人はそろそろと退却を始める。

「乾のたっての頼みだ。仕方がない…」
「手塚?」
「だから、俺からも一つ頼みがある」
「何?」
「そんな姿を全校生徒にさらすのは止めて欲しい」
「そんな姿?」
「そんな破廉恥な姿を見せるのは、この俺と二人っきりの時だけにしてくれ」
「……海堂」
「っす」
「さっきのアレ、許すから、そこの大馬鹿者にも投げてくれないかな?」
「ぶ、部長っすか?」
「乾、それなら僕がもっといい物投げてあげるよ」
「本当、不二。じゃあ、お願い」
「任せて」

(手塚(部長)ご愁傷様です)

不二と乾の朗らかな会話の後に行われた手塚への制裁は、全校生徒・教師に思わず手を合わせられるような内容だったらしい。
そして、海堂に制裁を食らった桃城と不二・乾に制裁を食らった手塚の復帰は時間を要したらしいが、二人揃って最期の言葉は

「乾(先輩)の脚線美が見れたんで、本望だ(っす)」

だったらしい。

3-11の体育の授業、それはテニス部レギュラーにとっては至福でスリリングな時間である。

Fin